<5>DEAD END、回避させてやるわよっ!!
ここまで過去の自分がDEAD ENDを迎えない為に試行錯誤したが、どれもこれも失敗している。このままでは過去の自分は処刑されてしまうだろう。何としても回避させたいルシア。でなければルシアは自分の処刑を見る羽目になるかもしれないのだ。
「DEAD END、回避させてやるわよ!!」
そう言いながらルシアは、家業のパン屋を手伝い、パンをこねる。こねこね。だが、なかなかいい作戦が思い付かない。
「ルシア、クリームパン焼き上がってるから!表に出しといて。」
「はぁい」
母に適当に返事を返したルシアは台の上からクリームパンの入った鉄板を持ち、クリームパンの鉄板片手に店頭へと急ぐ。クリームパンを並べ終えると豪華な馬車が店の前まで来て急に止まった。誰だろうとルシアが思うと同時に馬車から人が降りてくる。それは…
「あら、平民の食べ物にしては美味しそうじゃない?一つ寄越しなさいよ!」
あ、ははっ……。私である。
過去のルシアが店を訪れたのだ。
「お嬢様、どうしてこちらに?」
勝手にクリームパンを一つ引っ付かみ過去のルシアはもぐもぐと食べている。我ながら頭が痛い。過去のルシアはパンをあっという間に平らげた。
「……ただの町娘の分際でお父様に取り入るなんて、何様のつもりかしら?気に入らないわっ!」
そして、クリームパンの入った籠をわざと落として母の作ったクリームパンを地面にぶちまけた。
「ふんっ!ざまぁないわね!!」
これにはルシアの堪忍袋の尾が切れた。
「……ない、……で」
「は?」
「ふざけないで!!」
ルシアはルシアである。いくら転生して、長生きして、多少性格が丸くなってはいるものの元々の性分は治らないものである。公爵令嬢を怒鳴りつけるなんて命知らずにも程があった。母は異変を察知して店頭へと行き、娘の頭を押さえて下げさせる。
「申し訳ありません!この子が無礼なことを…」
「全くだわっ!」
ルシアはそんな母の手をはね除けた。堂々といい放つ。
「いい加減にして!そんな性格だから貴方はDEAD ENDするのよっ!!」
「は?!どういう事よ?!何言ってるの?!」
その言葉に過去のルシアは苛立った。だが、ルシア・テレスはついに名乗り出てしまう。
「私はルシア!元ルシア・ルミナス!!転生した未来の貴方です!!」
その言葉にルシア・ルミナスは笑い出した。
「あら?変な事言うのね?貴方、頭がおかしいのではなくって?」
ルシア・テレスはその挑発に乗る。
「フッ、じゃあ、貴方が隠れて毎日付けてる日記帳の内容でも言いましょうか?」
「は?!な、なんでそんなこと…」
「そうね、お母様が大事にしていたルビーを、貴方が盗んだ事の方がいいかしら?」
「は、はぁ!?何、なんでそれを?!」
「お父様の自慢の万年筆を折ってしまったのが貴方だと言う事でもよくってよ?」
「まっ、待って!!」
「あら?それより」
「待ってっ!!」
ルシア・ルミナスは堪らずルシア・テレスの口を押さえ付けた。そして小さな声で耳元でこそこそと話す。
「わかった!信じるわっ!だから、もう止めて!!お願いよ!!」
「はい、では、少し二人で奥の部屋でお話いたしませんこと?」
秘密をバラされて焦る過去のルシアに対して、ルシア・テレスは冷静そのものである。ルシア・ルミナスを奥の部屋へと招いた。
「お母さん、奥使うわねー!」
「え、あ、ちょっと…」
母は突然の事に慌てていた。奥の部屋へと招かれた過去のルシアはルシア・テレスに言われた通り二人だけで部屋に入った。
「ねぇ、どうして私の秘密を知っているのよっ!!」
「そんなの私が貴方だからに他なりませんわ!」
「そ、そんな事…」
「信じると言ったじゃない!」
ルシア・ルミナスはこくこくと頷きながらも、そんなとんでもない話しに理解が及ばないようであった。
「いいこと?私が貴方をDEAD ENDから救って上げる!」
「ほ、本当に私死ぬの?」
「ええ!そうよ!だから傲慢な態度は改めて!」
「……ぅぅ、」
煮え切らないルシア・ルミナスにルシア・テレスはこう宣言した。
「私が貴方のDEAD END、回避させてやるわよっ!!」
ルシアの苦難は続く……
次回は本日の夕方頃に投稿します。お楽しみに。