<35>真実の心
「何故ここに?」
「偶然、通りかかっただけだ。」
そして、リトの息は上がっていた。先ほどの戦いで魔力を使い果たしたのだろう。
「助かりました。」
「いや、俺はなにも……。」
「ルシア・テレス。」
「はい。」
「俺は……。」
リトが何かを伝えようとしたその時、ルシアは突然倒れ込んでしまった。
「?!」
「ルシア様?!」「テレス?!」
★★★★★★★★★★★★
ルシアは医務室で眼を覚ました。デルメス討伐によるダメージは相当のものだったらしい。ルシアがベッドから起き上がろうとしても起き上がれない。
「ルシア様。」
そこに現れたのはマリアだった。
「ルシア様、大丈夫ですか?」
「ええ、平気よ。私、一体……」
「突然倒れられたルシア様をリト様がここまで運んでくださったのです。」
「まあ、そうなのね。」
ぐぅと、ルシアのお腹がなる。倒れていた間食事は取らず点滴だったから空腹なのだ。マリアはくすりと笑うとお見舞いのフルーツをカットした。
「ルシア様、ゆっくりお召し上がりくださいね。それでは私は他の生徒や町の人達の看病がありますので、失礼します。」
「あ、う、うん!」
とは、言ったもののルシアはベッドから腕すらまともに上げられそうになかった。
「うぅー!」
なんとか上げようとする腕は全く上がる気配すらない。よほどの重傷である。
そこにリトが現れた。
「リト様!」
「間抜けだな。特例で入学したくせにずっとベッドに寝たきりなんてな。」
「はい、私の力及ばす町を戦火に巻き込んでしまっているのは忍びない事ですわ。」
「ふんっ!」
「それより、ここまで運んでくださったとか、ありがとうございます。」
「重かったがな。」
リトは嫌みばかりを言って全く素直に話せなかった。
「あの、あの時何を私に伝えようと?」
「……」
リトは不機嫌そうにうつむいた。
「俺は……。」
リトは今度こそ、素直に真実の心で己の気持ちを伝えようとする。
「お前の事が…」
だが、そこに別の客が現れた。
「ルシア」
リルム・クリムが医務室へと駆け込んできた。そして、ルシアの方へ向かってくる。
「ルシア!大丈夫ですか?」
「ええ、平気です。」
「……こんな所で時間を無駄にしている暇など俺にはないからな。俺はそろそろ行く。」
「あ、はい。では、ごきげんよう。」
そうして本当の気持ちを伝えられたないまま医務室を出ていってしまった。
「ルシア。」
「きゃっ?!」
リルムはリトが出ていくとルシアへと抱きついてきた。
「リルム様お止めください!このような…」
ぐぅーーーーっ!
腹の虫がなく。ルシアは恥ずかしさから赤面した。
「お腹が空いているのですか?」
そう言ってリルムは皿の上のフルーツをフォークで突き刺した。
「どうぞ?」
リルムはルシアに林檎を食べさせようとしてくる。ルシアは赤面して拒否するが、
「?口移しの方がいいですか?」
「なっ?!」
「宰相が恋人同士はするものだと言っておりました。」(いい笑顔)
赤面したルシアはまたあの宰相~!!と、怒りと羞恥に震えていた。
「口移しはけっこうです。食べさせてください。」
「はい。」
リルムは笑顔で了承すると、ルシアの口に林檎を運ぶ。
林檎を食べるルシアは気恥ずかしそうにリルムを見た。
リルムは本当にルシアを心から愛していた。医務室には二人の甘い時間が漂っていた。
ルシアの苦難は続く……。




