<31>ルビー色の君
町は度重なる魔王幹部の襲撃により、重い空気が漂っていた。医務室にて、
「レディー、お加減の方はどうですか?」
医務室のルシアのベッドには第一王子のルチア・シフォンが訪れていた。
「大丈夫ですわ。」
戦いで大きなダメージを受けたルシアだが、リルムの回復でほぼ回復していた。だが、念の為に医務室へと運ばれていたのだ。そんなルシアの頭はリルムとの事でいっぱいだった。初めての口付けと、告白にルシアはどうすれば良いのかと頭を悩ませていた。だが、きっと、リルムは自分を回復するためにキスしたのであって、別にきっと他意はない筈……と、ぐるぐるとそんな事ばかりが頭を駆け巡っていた。
「レディー、よろしければこれを……」
「え?あ、はい?」
ルチアはフルーツ籠を差し出してきた。
「剥いて差し上げて。」
側付きの少年が林檎を手に取り、ナイフで剥き始めた。
「はい……」
「私は他の生徒の治療があるので、何かあったら彼に言ってください。では、また。」
そう言って、ルチアは少年を残し、去ってしまった。少年は急いで林檎を剥いたので指を切ってしまった。
「っ。」
「大丈夫?」
ルシアは少年の手を取り、指の傷を見る。そして、治癒魔法をかけた。
「ありがとう、ございます。」
少年は美しい赤色の瞳をしていた。ルシアはその瞳に吸い込まれそうになる。
「貴方、名前は?」
「オレ、には、…」
たどたどしく話す少年の声をしっかりとルシアは聞く。
「?」
「ない!名前……」
「…そう。」
名無しの少年は林檎を剥き終えるとルシアに差し出した。
「ルビー」
「?」
「貴方の名よ?どう?ダメかしら?」
「る、るびー?」
「ええ、貴方の瞳の色を名にしたの!」
ルビーはうれしそうに微笑んだ。するとルビーのお腹が鳴る。ルシアは微笑んで一切れの林檎をフォークで刺し、差し出した。
「林檎、貴方も食べる?」
「主の!」
ブンブンと首を振るルビー、だが、ルシアは無理やり口に突っ込んだ。
「私の林檎を私があげたの!問題ないわ!」
林檎を頬張りながらルビーはうれしそうに頬を緩める。
「あり、が、とう。」
「いえ、もっとどうぞ。」
優しくそう言うルシアの言葉に、少年はうれしそうにしながら林檎を次々と手で掴み、口に頬張っていく。ルシアはそうして林檎を食べ終えたルビーはルシアにお礼を言うとルチアの方へと向かっていった。
ルシアは、医務室に運ばれた過去のルシアやセリーの様子を見に行く事にした。皆の回復で、過去のルシアやセリーはすっかり良くなっていた。その後は逃げたデルメスや、魔王達への対策を話しあったのである。そうして次第に校舎には夜の帳が下ろされていく。暗闇に染まる校舎は何処かこれから先の行く末を表すようだった。
ルシアの苦難は続く……




