<30>私はお人形さんなんかじゃないっ!
連れ去られたルシアを、過去のルシアとセリーは必死に探していた。
「どう?見つかった?」
「いいえ!あとは…」
そして、中庭へと二人で向かう。そこにはルシアとリルムがいた。
「ルシア様!」「テレス!」
「二人共……。」
「お怪我は?!」
「貴方っ!」
怪我の心配をするセリー、対して、過去のルシアはリルムを睨みつける。
「待って!二人共!リルム様は何もしてないわっ!」
「でも、人形に…」
怒りに震える過去のルシアをルシアが引き留める。
「リルム様はこれからも負傷した生徒の回復を行ってくれるそうなの!」
「まあ、それは、大変助かりますけど…」
セリーは何処か納得いかない様子だった。
その時、地響きがなる。
「まさかっ!」
「魔王の?!」
「?!」
ルシアと過去のルシア、セリーは急いで地響きの方へと駆けていく。そこは火の海だった。
「ひどいっ!」
セリーは怒り、雨を降らせて火を消す。過去のルシアは魔族達を蹴散らしていた。そこに、一層強い魔力を持つ魔族が現れる。
「魔王軍幹部、デルメス。魔王様の命により、ルシア!貴様を捕らえに来た!」
デルメスはルシアを魔法で焼く。だが、ルシアはバリアーでそれを防いだ。
「このっ!」
過去のルシアがデルメスに光りの矢を浴びせる。デルメスはそれを避けるが、セリーの光の魔法がデルメスを呑み込んだ。
「ぐっ!」
だが、デルメスは光りを剣で切り裂く。デルメスは勢い良く過去のルシアの方へと飛んでゆく。そして、デルメスの手が過去のルシアの腹部を突き刺した。
「がはっ!」
過去のルシアは吐血するが、デルメスの腕をルシアが蹴り飛ばす。
セリーは過去のルシアを回復させる。
「ありがとう。テレス、セリー。」
「いいえ」
そんな三人を黒い光りが呑み込んだ。次の瞬間大爆発を起こす。バリアーを張るが砕け散る。
「「「がはっ!!!」」」
三人はボロボロになり地面に転がっていた。そこに、何を思ったのか、リルムも付いて来ていた。
「リルム様!ここは危険です!どうか、お逃げください!!」
ルシアの叫び声でリルムは逃げろと命令されたと思った。だが、だがである。
「……」
リルムは動こうとしなかった。そこに偶然宰相が逃げ戸惑っていた。
「リルム様!お逃げください!!ひぃ!」
「宰相、私はっ…」
「それでいいの?」
セリーがリルムに問う。宰相はリルムを放ってそそくさと逃げ出した。
「人形のように従うだけでいいの?!」
セリーは再びリルムに問うた。
「……や、だ。」
「あ?」
デルメスはそんなセリーを蹴り飛ばした。
「ぎゃっ!?」
「いやだ!!」
そう叫ぶリルムはデルメスの方へと歩みを進める。
「私はお人形さんなんかじゃないっ!」
「リルム様!?」
ルシアの声はリルムには届かないようだった。
「んだ?女?」
デルメスはリルムへ手を向けると魔法を放った。リルムは跡形もなく消え去った。粉塵が枚散る。
「なっ?!」
「うそっ…」
「まあ」
ルシアも過去のルシアも、セリーも驚きの声を上げる。粉塵の中からリルムが現れた。吹き飛んだのはデルメスの腕の方だったのだ。
「何っ?!」
リルムの魔法がデルメスへと炸裂する。蒼い光がデルメスを包んだ。光りがデルメスを射ぬく。デルメスの体は徐々に吹き飛んでいく。
「はぁああああっ!!」
リルムの魔法でデルメスはほとんど吹き飛んでしまったが、デルメスは何とか光りから逃れるとそのまま逃げて行ってしまった。
「リルム、さま…」
ルシアはまさか、人形王子のリルムがここまでの魔力を秘めているとは思わなかったので呆気に取られていた。
「ルシアさん。」
リルムがルシアに手を伸ばす。そして、自分の方へと抱き寄せた。
「へ?!あ、あの?!」
そして、ルシアの唇を奪ってしまったのだ。
「「?!?!」」
これには過去のルシアも、セリーも驚き、憤慨した。
ルシアは眼を丸くして驚きのあまり固まっていた。しかし、唇が離れるとルシアの傷は全て回復していたのである。
「あ、えと?」
「ルシアさん、好きです。」
「え?」
一拍の空白後、
「ええええええええええええええええええ?!」
瓦礫の山にはルシアの声が響いたのだった。
ルシアの苦難は続く……




