<3>過去の自分と会いました?!
運命は再び動き出す。それはルシア・テレス7歳の事である。15歳になると魔力保持者が魔法学園への入学を始める年齢なのだ。そう、過去の自分も15歳に魔法学園に通い、彼女(主人公)とであったのだ。
この世界は乙女ゲームと呼ばれるモノの世界だとルシアが知ったのは前世の魔法使いの時であった。
ルシア・ルミナス、公爵家令嬢にして主人公セリーを虐める悪役令嬢、王国の第一王子ルチア・シフォンの婚約者である。
偶然にして彼も光の意味の名前を持つ。その日、家業のパン屋を手伝いながら町娘ルシアは考えていた。このまま過去の自分が第一王子と婚約すれば、過去の自分は死刑になってDEAD ENDを迎えるのでは?と、そして今日はルシアが第一王子と婚約する日なのだが、ただの町娘の自分にはどうする事も出来ないし、厄介事に巻き込まれて死にたくはない。
だが、このまま過去の自分がただ死ぬのを放って置くのも胸が痛む。そしてあルシアはある事を思い出した。過去の自分は今日、わがままを言って王城まで連れて行ってもらい、偶然第一王子と出会うのだ。ちょっと見たらすぐに帰るように言われていたのにもかかわらずそんな事はお構い無しに王城をのしのしと歩いて行き庭園で王子と出会う。同じ光の意味を持った名前のもの同士と言う事に王子から興味を持たれて婚約者となるのだが……。
もうすぐ馬車が通るであろう場所へ行けば間に合うのではないだろうか?そう、咄嗟に思ったルシアは母にお外で遊んで来ますと言って家から飛び出してしまった。手伝いありがとう、気を付けて行って来なさいよぉと、いつものように見送られたルシアは走っての行く。道すがらしがない町の靴屋の幼馴染み、ルキ・シューマッハが声をかけてきた。
「おいっ!ルシア!」
「何よ?」
「そんなに急いで何処に行くんだ?」
「貴女には関係な、……」
関係ないと言おうとした時、元悪役令嬢は良い事を思い付いてしまった。前々世の悪慈恵は治らないらしい。
「ルキ!良い事教えてあげるっ!」
「は?」
「これから大通りを馬車が通るからその前に置き石しておくと良いわっ!」
「何で俺がそんな事……」
「馬車が通れないとお貴族様が困る筈よ!そこに貴方が出て行って石を退かすのを手伝えば褒美を貰えるんじゃないかしら?」
「なるほど?でも何で貴族の馬車が通るなんて知ってるんだ?」
「町のパン屋の情報網を舐めるんじゃないわよっ!ふんっ!」
ルシアは胸を張って両手を腰に当て威張った態度で自慢した。お城に付く時間を遅らせれば王子と会う事もないだろと、思っていたのだ。
そして作戦は成功してしまう。ルキは町の悪ガキ達と協力し、出来だけ大きな石をたくさん馬車が通る道に置き、置いた置き石は見事に馬車を止めてしまったのだ。
「やるじゃないっ!見直したわっ!」
「へへっ!」
素直にルシアに誉められルキは頬を赤く染めながら鼻の下を人差し指で擦って満面の笑みを浮かべた。そして馬車の使用人が困っているとルキ達が現れ、作戦通りに使用人と交渉し、石を退かし始めたのだ。馬車の中身はきいきいと言っている。仕舞いには馬車から降りて来て
「さっさと石を片付けなさいよっ!平民!!」
なんて言うもんだから、我ながら頭が痛いにもほどがあるとルシアは飽きれかえっていた。ルキ達ばかりに任せるのも悪いので私は魔法を使って石を退かす事にした。この選択がまさかあんな事になるとは露知らず。
魔法を使って石を退かし始める。それを見て周りの人達は驚き始めた。そう、軽率な行動だった。この世界では魔法は貴族しか使えないのだ。それを難なく使うルシアを見て道行く人皆が驚きの声を上げる。何事かと馬車から顔を覗かせたのは前世の父、バルト・ルミナス公爵だった。バルトはそれを見て大変驚き、馬車から降りて、ルシア・テレスの方へと歩いて来た。いきなりルシアの両肩を掴んだ。
「君、魔法学園に通いたくはないかい?」
「はい?」
ルシアの苦難は続く……
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