<29>お人形
ルシア達の看病により過去のルシアもセリーも回復した。だが、問題は山積みである。
「今のままでは、」
「勝てませんわね。」
過去のルシアもセリーも深いため息をはいた。
学園は数日で復興した。だが、死亡した生徒は戻っては来ない。学園は深い悲しみに包まれていた。
「魔王の進軍は止まりませんわね。」
ルシアはどうするべきか考えたが良い案が浮かばない。そんな三人の前にフリフリのふわりとしたドレスが通った。
「ごきげんよう。」
「「ごきげんよう。」」
「?リルム・クリム??」
「あの、貴方。」
リルムはそっとルシアの前に立つ。
「私?」
「お人形にならない?」
「はい?」
次の瞬間、ルシアは人形へと姿を変えてしまった。
「ルシア様?!」「テレス?!」
リルムはその人形を持ち去っていく。
「「待ちなさいっ!」」
二人が後を追うが見失ってしまった。
★★★★
人形を片手にリルムは中庭のベンチに腰かける。
「ルシアさん、ルシアさん、貴方は私に命令をしてほしいの。」
「……」
人形は答えない。
「もう一度お礼を言われたい。」
リルムはルシアの額に口付けをした。次の瞬間、ルシアは元の体に戻る。
「リルム様!これは、一体……」
「貴方に命令してほしいのです。さぁ、私に命令を。」
「何を言って……。」
「貴方にお礼を言われたいのです。貴方のあの言葉は動く事のなかった私の心を動かしました。」
「……命令なんて……?!」
リルムは強引にルシアの頬に口付けた。
「何を?!」
「お礼をください。」
「このような事をされてお礼など?!」
「?宰相は、女性はキスされると喜ぶと言っておりました。」
あ、あの宰相め……!!
「リルム様、口付けはそう気安くするものではありませんわっ!」
「?そうなの?……?わからないわ。」
リルムは不思議そうな顔をするばかりである。
「命令、して?」
リルムはルシアの瞳を真っ直ぐに見つめた。ルシアは困惑した。
「命令、ではなく、お願いなら、……。」
「何?キスすればいい?」
「それはけっこうです。」
いい笑顔でルシアは答える。
「これからも傷付いた人がいたら助けてほしいのです。」
「!」
リルムはその言葉に息を呑んだ。
ルシアの苦難は続く……。




