表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かげふみ  作者: あしゅ
39/63

かげふみ 39

3日間の休暇も終わりの時がきた。

グリスはアスターを見送りに、クリスタルシティの駅へと行き

大人3人は館へ向かう車中にいた。

 

 

グリスとアスターは食事時以外は、ずっとふたりで語り合い

より、友情を深めたようである。

 

「私的には、ラヴを深めてほしかったでーす・・・。」

リオンのちょっと不満気なつぶやきを、主がうっとうしがる。

「養子がホモだったら、あらぬ噂をたてられるんじゃないですかー?

 保身第一のおめえらしくないなあー。」

 

「ふっふっふ」

リオンがほくそ笑んだ。

「“マイノリティーの保護” というのは、知的階級人の義務なんでーす。

 それに、そういう噂を立てるヤカラは

 “差別主義者” として攻撃してくれ

 と、私に言ってるようなもんでーすよ。」

 

「おめえ・・・、想像以上に腹の中は黒々だよなー・・・。」

主が少し青ざめてドン引いた。

 

 

「なあ、あんたらこの前から何の話をしとるんじゃ?」

ジジイが訝しげにコソッと主に訊く。

 

「リオンもストレスが溜まっているらしく

 現実逃避に妙な妄想をしているようなんですよー。」

主が表面だけ気の毒ぶって耳打ちする。

 

「ううむ、いつ見ても何か食っとるし

 彼もあれで何かと大変なんじゃろうなあ。」

「議員先生とか、陰で変態やってるの多そうですしねー。」

「あんた、それ、公言せんようにな・・・。」

ジジイが主の偏見をさりげなく注意した。

 

 

「お帰りなさいませ。

 休暇はいかがでしたか?」

リリーが興味なさそうに、それでも一応訊く。

 

「地獄でしたー。」

主のそのひとことで、すべてを察するリリーも有能な秘書である。

 

不在中に溜まっていた書類を、うっとうしそうに片付ける主。

それとは対照的に、リフレッシュしたのか活き活きと茶を飲むジジイ。

より爽やかになって、笑顔を振りまくグリス。

 

休暇は良い気分転換だったようね

まあ、主様はどこにいても主様なのだから、しょうがないとして。

リリーは、心の中でほっほっほっと笑った。

 

 

別荘から帰ってきた翌日、主は微熱を出して寝込んだ。

「すいませんー、疲れが溜まったようでー。」

布団の中から詫びる主。

 

「休暇に行って疲れを溜めるとは何事じゃ!」

「まったく、日本人は休むと具合が悪くなるようでーすねえ。」

布団の横のコタツに座って、駄菓子を食うジジイとゲームをするリオン。

 

 

「あんたら、病人が寝てる横でやめてくれませんかねー。」

主がイライラさせられて訴えているところに、グリスがやってきた。

「主様、すみません、ぼくの我がままのせいで・・・。」

グリスの今にも泣き出しそうな様子に、主は更にウンザリさせられた。

 

「グリスや、おまえのせいじゃないぞ。」

「そうでーす。 主がヘンなんでーす。」

ふたりのグリスびいきも、主様の病気の前では威力を発揮しない。

 

「おふたりとも、主様のお具合が悪いというのに

 何をなさっていらっしゃるんです!

 さあ、早く主様を安静にして差し上げなければ。」

 

グリスはゲームのリセットボタンを、容赦なくブチッと押し

セーブしていないのに、と泡を吹いて失神しかけているリオンを抱え

意地汚く菓子袋を握り締めるジジイの手を引き、部屋を出て行った。

 

 

はあ・・・、やれやれ と安堵する主。

うつらうつらとまどろみながら、いくつもの夢を見た。

 

こういう時の夢は、何故かいつも物悲しい。

そして懐かしい。

 

 

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ