表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かげふみ  作者: あしゅ
2/63

かげふみ 2

マリーはグリス付きのメイドである。

母親のように愛し、世話を焼いてくれる。

 

長老会から派遣されているのは

語学の教師、基本教育の教師、礼儀作法の教師である。

専属護衛のリーダーはタリスであった。

 

「まだお小さいのに、勉強など・・・。」

という意見は、主の

「普通の子供と同じに考えてもらったら困りますー。」

というひとことで、かき消えた。

 

この館で主に逆らえる者など、いや結構いるんだが

主の “館第一” という気持ちに逆らう者はいない。

主がそういう生き方をしてきて、現実に結果を出しているからである。

グリスには、遊びの時間も教育の一環となった。

 

 

そんな、子供にしては多忙なグリスだが

一番楽しみにしているのが、運動の時間だった。

その理由は、担当がラムズだったからである。

 

彼は館に来た頃の主と、実際に接触した人物のひとりで

運動の合間合間に、あれこれと話してくれるのだ。 

グリスは、主のその “武勇伝” を聞くのが大好きだった。

 

「主様はな、そりゃ勇ましかったんだぜ

 警棒をシュッと出して、こう構えてな。」

身振り手振りで、当時の事を語ってくれるラムズ。

 

「・・・ただな、ヌケたところもあって、出した警棒をしまえないんだよ。

 あれには笑ったね。」

 

ラムズの話から、当時の館が戦場であった事をうかがい知る。

その喧騒のさなか、主が勇ましく進む。

旗を持って軍を先導するジャンヌ・ダルクの絵画のように。

 

 

グリスがそこまで主を美化していたのには理由があった。

ほとんど主の姿を間近に見られないのだ。

 

「お忙しいお方ですから・・・。」

それが周囲の常套句だったが、自分が避けられている気分であった。

その証拠に、長老会のリオンはしょっちゅう主の部屋に来ている。

 

だけどスネるわけにはいかない。

屋根がある居場所と温かい食べ物を与えてもらっているのだから

それだけでグリスにとっては、感謝して余りある事で

その上に我がままなど言えるわけがない。

 

 

「一生懸命お勉強なさっていれば

 その内に主様の右腕として、一緒にお仕事ができますよ。」

その言葉を支えに、グリスは勉強に励んだ。

 

グリスは子供だったが、自分の立場をわきまえていて

そこは確かに “普通” の子供とは違っていた。

 

 

「主様にはいつ会えるの?」

何度となく言ったこの言葉は、グリスの胸の奥にしまいこまれた。

 

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ