表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かげふみ  作者: あしゅ
14/63

かげふみ 14

「私とした事が、グリスの私に対する予想外の崇拝に動揺して

 ついつい使命を忘れていましたー。

 どうも申し訳ありませんでしたー。

 まったく、これだからガキは厄介だわー。」

反省しているのかしていないのか、疑わしい主の態度である。

 

「私がこれから大学に行って、グリスを連れ戻してきますー。

 私としても、せっかくの次期主候補を潰したくないですからねー。」

 

 

その言葉に、リリーが口を挟んだ。

「今から行きますと、首都に着くのは夜の8時過ぎになりますけど。」

 

「ええっ、首都そんなに遠いのー?」

驚く主に、メンバーが突っ込む。

「首都まで列車で5時間は掛かるぞ。」

ヘタリ込む主。

「ええーーー、じゃあこの計画ダメじゃんー。」

 

メンバーのひとりが、疑問を口にした。

「きみ、跡継ぎ探しの際に

 国際線に乗るため首都に行ったんじゃなかったんかね?」

「あの時は軍がヘリで送ってくれてー・・・。」

 

全員の目が一斉に将軍に向く。

「お、おいおい、あの時は私も首都に公務があったんで・・・。」

慌てて断ろうとする将軍に、主が事もなげに言う。

「じゃ、明日5分で終わる “公務” を作ってくださいー。」

 

 

「あああ・・・、また私か・・・。」

ガックリと肩を落とす将軍に、気の毒そうにメンバーが詫びる。

「すみませんが、今回は次期主の一大事ですし。」

「我々で他に役に立てる事があったら協力しますよ。」

 

「んじゃ、これで決定ですねー。

 私は帰りますよー。 将軍、明日迎えに来てくださいねー。

 あー、あと軍から大学までの車の手配もよろー。

 リムジン必須ー。」

主は要求をするだけしたら、さっさと帰って行った。

 

 

翌日の首都へと飛ぶ軍用機の中では、主がムッツリした顔で座っていた。

 

「ご機嫌斜めそうじゃのお。」

ジジイの声掛けに、不機嫌そうに主が答える。

「・・・軍用機って、何でこんなに寒いんですかー。

 凍え死なすつもりですかー?」

 

将軍がキリッと弁明する。

「物資を運ぶのに冷暖房がいると思うかね?」

「この前はこんな寒くなかったですよー。」

「この前のは上官専用で、今日はそれが空いてなかったんだよ。」

 

「こら、そんな調子でグリスの説得が上手くいくのか?」

「それはわかりませんー。」

その言葉に、飛び上がるジジイと将軍。

「「 何じゃ「」何だとーーーーーーーー? 」」

 

「これで帰って来なかったら、私に打つ手はないですねー。」

その頼りない言葉に、ジジイと将軍は焦った。

 

 

軍空港から大学に向かう公用車の中で、主はぶしつけに訊いた。

「ところで、何であんたらまでついて来るんですかー?」

主の質問に、ふたりは答えるのを控えた。

 

実は昨日、主が帰った後に長老会メンバーで話し合ったのだ。

どう考えても、あの主だけに任せておいて穏便に済むわけがない。

暴力沙汰を起こして通報されないよう、“見張り” が必要だ、と。

 

そして今日の結果は、明日の極秘臨時長老会で報告せねばならない。

どうか上手くいきますように・・・

ふたりは心の中で必死に神頼みをしていた。

 

 

ふたりを見て、どうせ野次馬だろ、と判断した主は地図を見ながら呟く。

「グリスは今日は何時頃に寮に戻るんでしょうかねー。」

「何じゃ、あんたそんな事も知らんと来とるんかい!」

ジジイの驚愕に、主はサラリと言ってのける。

「寮付近で待ち伏せしようと思ってたんですよー。」

 

「はあ・・・、無計画ここに極まれり、じゃな・・・。」

呆れたジジイは、手帳を出して説明し始めた。

「んとなあ・・・、この時間じゃとグリスは受講中じゃ。

 今日は11時までで終わって、12時から17時までバイトじゃな。

 道端で捕まえるなら、この公園横を11時20分ぐらいに通るはずじゃ。」

 

その細かい指示に、今度は主がドン引きした。

「・・・あんた、大学に間者でも潜ませとるんですかいー。」

「失礼な! わしゃそこまでストーキングしとらんわい!

 以前にグリスに、日々の予定を教えてくれ、と頼んだだけじゃ。」

「うわあ・・・、グリスもよくこんなに細かく教えたなあー・・・。」

 

ジジイは嬉しそうに話す。

「いつも時計を見てな、ああ、今頃グリスはあれをしとるな

 おお、今は橋の上を歩いておるな、とか想像するんじゃ。

 この気持ちがわからんから、あんたはグリスを傷付けるんじゃよ!」

 

 

ジジイの溺愛ぶりにゾッとした主だが

最後の行が逆らう術もない正論なので、黙っていた。

 

ソワソワしてあたりを見回していたジジイが叫んだ。

「あっ、来たぞ! グリスじゃ!!!」

 

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ