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なんやねんコイツ…。

 「なんだ?お前、勇者なのか?」

 「まぁ、せやな」

 「確かにその剣はホワイトサムだ。間違いない。へぇ、お前が引っこ抜いたの?」

 「うん」

 「住職様!天啓を得てない者が剣を引き抜いたりできるものなの?」

 

 住職と呼ばれた男はハーベストを手のひらで制す。

 

 「お前、その剣引き抜いた時、なんか聞こえたりした?」

 「いや、もう忘れたわ」

 「あ、そう。お前、世界を救おうと思ってんの?」

 「思ってるよ。僕にしかでけへんことやし」

 「自信家だねぇ。それって元から?」

 「何が?」

 「元からそういう性格なの?」

 

 住職はガラス瓶の蓋を開け、緑の乾燥した植物を数片取り出す。


 「え、あぁ、うん。多分。あかんの?」

 「いや、いいんだけど。たまにさ、一般人が興味本位で魔剣の類に手を出して、頭おかしくなっちゃうこともあるから。ない?そういうの?エルフの国とかで?あったでしょ?」

 「何が言いたいねん?」


 住職は険しい表情の勇者を鼻で笑うと、しばらく何も語らず乾燥した草を指ですりつぶすように砕いていく。


 「エルフ、惨殺、あれはだめでしょ?何やってんの?」

 「お前まで。うるさいねんどいつもこいつも。人間だけがこの世界に住めればそれでええやんけ」

 「いやいや、君がそういうことやっちゃうことで戦争になるんだって。やめなさいよ」

 「そうよ!勇者である前にあなたは道徳というのを理解した方がいいわ!」

 「おい、ハーベスト、お前は出て行っときなさい」

 

 「僕と二人になっても大丈夫なんけ?殺ってまうぞ?」

 「なんでよ。俺は人間なんだけど?」

 「…」

 「結局君のポリシーってなんなの?魔物を殲滅したいんでしょ?それはなんでなの?なんかあったの?私怨?天啓も得てない一般人の君が、まぁ実力は凄いのか知らないけどさ、邪魔だなぁ。君。邪魔だわ~」


 住職は粉砕した草を巻紙で巻き上げ、それを口に咥える。


 「僕が世界を救うねん。僕が魔王を倒すねん。僕にしかでけへんねん」

 「ハーベストにその剣を渡してくれたら彼女が代わりに魔王を倒してくれるよ。彼女は立派なハクトゥの後継者だ。多分、その剣も、彼女に使役されることを望んでる。お前じゃねぇんだよ」


 住職は言い終えると火を点ける。酸味がかった独特な匂いがたゆたう。


 「あいつより僕の方が強いから」

 「強さじゃねぇんだよ馬鹿ガキ。正義はどこにあるんだって話なんだよ」

 「僕が魔王を倒す。人間を救う。それが正義や」

 「違う。そうだとしてもやり方が間違ってるよ」

 「まちごとらんわ!魔物と人間が共存できるはずないやろが!」

 「なんでよ?」

 「なんでって…」

 「やっぱお前ェ…あてられてるよ」

 「あ?」

 「素人が魔剣なんかに手出すから。馬鹿垂れが」


 住職は勢いよく煙を吐き出す。勇者のもとまで届いて散る。


 「お前じゃ役不足だ。勇者の任から降りろ。ハーベストが受け継ぐ」

 「あんなガキにできるかい!」

 「俺には、おめぇの方がガキに見えるがな」


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