全裸で水浴びって原始人かよ!?
ただいま、地蔵です。
おかえりなさい皆様。
エルフの国ダオランが魔王軍の将ブルトローヌにより侵攻される。魔王軍の目当てはダオランに湧く魔力の宿る水マナだ。エルフ達は精鋭達で迎え撃つも、異常気象による灼熱のような気候により本来の力を発揮できずダオランで一番大きいマナ湖を占領されてしまう。
エルフ達は人間たちの国であるイーツに勇者と魔法使いと呼ばれる2人の噂を耳にする。藁にも縋る想いでエルフ達は2人に接触、応援を依頼する。
勇者の力は凄まじく、魔王軍の将を次々と倒す活躍を見せる。魔法使いは戦闘には出ないが、軍の士気をうまく調整する。
しかし魔法使いが連れてきていた人間の冒険者が一人殺されると勇者の様子が急変する。勇者は単独で行動するようになり、城からも行方をくらます。
ダオランの城、フランカンネ城の地下からドワーフの機械が侵攻しようとしていると聞いた魔法使い達は綿密な軍議を重ね、それに対応しようと準備する。
だが、突如敵軍の大将ブルトローヌが討ち取られたと報告が入る。討ち取ったのは勿論、勇者であった。ダオランは歓喜に湧き、勇者を讃える祭りが催されるが、勇者はフランカンネ城へ凱旋することはなかった。そして悲劇が起こる。
勇者が元々ダオランに住む友好的な魔物を皆殺しにしたのだ。それに対してエルフ軍は制止を求めるもその者たちも皆殺しにされる。勇者は気が触れたようだ。
「貴方は何故私たちを殺そうとするのですか?」
祭壇を背にどっしりと座禅する巫女のような姿をしたエルフの少女が物怖じせず尋ねる。目の前には身体中返り血に染まった勇者が煙草を燻らせながら立っている。右手に持った伝説の勇者の剣はエルフや魔物の臓物が元の豪奢な装飾を埋め尽くす。
「人間やないからや」
勇者は当然といった様子で返事をするとゆっくりと少女の方へ歩み寄り右手を掲げる。
「人間とはそんな偉大な存在なのですか?」
少女は怯えることなくまっすぐ勇者の目を見つめる。勇者の目に輝きはなく、ただただ鉛色の異様な瞳に少女の顔が反射する。
「…」
「答えは分からないようですね。そんな状態で沢山の命を奪ったのですね。貴方は勇者なんて崇高な存在ではありません。ただの殺人鬼です」
「魔物は人間を殺すやんけ。だから俺が終わらしたるねん」
「それは人間が魔物に挑むからでは?魔物達と対話したことは?」
「話なんかできるかい。アイツらは動物や」
「貴方は何も分かっていらっしゃらない」
少女の首が飛ぶ。勇者の容赦ないひと振りにより会話が終わる。勇者はその光景に表情一つ変えず首のなくなった少女の身体を足でどかし、祭壇に祭られてある宝物などをカバンに入れていく。
一通り物色した後、勇者が振り返ると、祭壇までの轍のように死体が転がっている。それを見て一瞬勇者の動きが固まる。そして身震いする。勇者は笑っている。
勇者は少女の死体から衣服を乱暴に剥ぎ取り、それで剣に付着した血や臓物を拭き取る。首のない少女の露わになった乳房を数回揉む。勇者は小さく「へへ」と笑みを零す。
勇者は立ち上がると地面に転がる死体を足でどかしながら進む。誰かから奪ったであろう葉巻を懐から取り出す。吸い方が分からないのか煙草のように肺に入れてしまい豪快に咽る。涙目になりながら無理して葉巻を嗜みながら勇者はその地を後にする。
勇者の腹の虫が鳴る。狂いに狂った勇者であったが、エルフの肉を食すといった行為はしないようだ。勇者は周辺に村や街がないか散策する。30分程歩いた後、大きな湖に出る。ダオランで一番大きなマナ湖、また今回の戦の元凶ともなったアセル湖である。勇者は湖に近付き、装備や衣服を脱ぎすて飛び込む。その音に周囲を警備していた兵士達が気付く。
「何者だ!!」
エルフ軍のカトレア部隊と称される精鋭部隊のリーダー、キュロスが紅葉のような赤い毛を振りかざして湖の方を睨みつける。
「!?…貴様は…」
水面にゆっくりと現れた男の姿を見てキュロスが歯ぎしりする。すぐさま弓を手に取り矢を放つ。驚くほどの速度、甲高い風切り音と共に勇者に向かって走る。直後、勇者の手に掴まれる。
「化け物が…!」
勇者はキュロス達を確認すると湖から飛び上がり、素早く剣を手に取る。そして周辺に生えている木々を切り倒し、幾本の即席の槍を作る。そしてそれをエルフ達が構える方向へ放り投げる。
キュロスの回りで弓を構えていた兵士が4人ほど串刺しになる。キュロスの鼓動が早くなる。側近の兵士に身を隠すように怒鳴られる。キュロスは、構うな!と振り返り様に怒鳴り返す。しかし側近の男からは返答はない。顔面を槍が貫く。キュロスのこめかみに青筋が走る。獣のような咆哮と共に無数の矢を放つ。それと共にエルフの魔法使い達がその矢に魔力を付与する。数本が勇者の身体を貫く。勇者は咄嗟に身を隠す。エルフ達は勇者の逃げた方向に同じように魔力の矢を放つ。血しぶきが上がる。しかし藪から力なく現れたのは魔法使いの一人だった。
「!?」
「レアアイテム、ワープ瓶じゃボケェ!!」
キュロスは槍で貫かれる。周りの兵士は仇を討とうと勇者に向かう。勇者は身を翻し、右の兵士に裏拳を、前から来る3人は剣を薙いで切り伏せ、左で魔法を唱えようとしている数人にはキュロスの死体をぶつける。
「よっしゃー!!耐えたー!切り抜けたでー!!」