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昨日と同じ今日が来る  作者: 恵梨奈孝彦
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二日目

二日目

二場

アキラとゆりえが向かい合って座っている。


アキラ 今日、さとみの教室に行ったんだ。

ゆりえ 何しに?

アキラ 女子二人が出てくる台本を用意しろって言ってきた。

ゆりえ さとみはもう部員じゃ…。

アキラ あれだけ迷惑かけてやめたんだから、演劇部にそれぐらい協力しても当たり前でしょ!

ゆりえ そうだね。

アキラ それであんたは、台本書いてきたの?

ゆりえ 一応…。

アキラ きのうあれだけ大口叩いたんだから、当然あたしのよりいいはずだよね!

ゆりえ もし、さとみが持ってきた台本の方が良かったら、そっちを採用してちょうだい。

アキラ 当たり前でしょ。もう時間がないんだよ! 今週には決めなきゃだからね!


照明が消えて、アキラとゆりえにのみスポットライトが当たる。

    ゆりえ、座ったまま。アキラ、立ちあがって下手に移動。立ったままA4用紙を音読する。


アキラ 小学校四年生の悠太は、母親の部屋に入って、箪笥の前にやってきた。


    ゆりえ、立ち上がって部室のチェストの引き出しを開ける。


アキラ 箪笥の引き出しは、悠太が軽く力を入れただけで、するすると開いた。

木でできた箱ひとつだけが入っていた。

ゆりえ、箪笥の引き出しから、箱を取り出す。


アキラ 悠汰は学校でケンカばかりしている。 

昨日も宗平とケンカをして、額に四針ぬうケガをした。

その夜母親はこう言った。



アキラ どうしてもまたケンカをしたくなったら、この引き出しを開けなさい。この中の物を見ても心が静まらなかったら、好きにしなさい。


    間。


アキラ 箱を引き出しから出すと、物置を出て座敷を通り、縁側に出た。


    ゆりえ、舞台の奥から前の方に出る。


アキラ さわやかな初夏の風がほほをなでる。


ゆりえ、箱を開ける動作。


アキラ そして木箱の中には一枚の紙が入っていた。「この下にある物を傷つけたら、たとえ悠太でも許さない」と母親の字で書かれていた。


    ゆりえ、紙を箱から取り出す。


アキラ 午後のまぶしい日差しの中にあらわれたものは……、あー、やめやめ!


    照明がパッと点く。ベタ明かり。


アキラ このまえあんた、あたしに「ナレーターが全部説明したら演劇じゃない」って言ってたけど、あたしが書いたの以上に、ナレーションが説明してるでしょ!

ゆりえ それは…、わたしの演技力不足をカバーするために…。

アキラ 自分の力不足をカバーするのに、力をつける以外の方法を考えてどうするの!

ゆりえ このまえ、アキラがそう言ってたから…。

アキラ 自分でやってどうするよ。あたしがやるから「あんたをかわいそうだと思ってやった」ってことになるでしょ。

ゆりえ かわいそう、って…。

アキラ あんたのこういうところが、甘ったれてるっていうんだよ。それに、役者の動きが少なすぎる! っていうか、動けない!

ゆりえ それは…、わたしもやっていてそう思った。

アキラ それにあんた、あたしの台本を「短い」って言ってたけど、これ、もっと短いじゃん!

ゆりえ それは…、これから膨らませれば…。


   アキラ、A4用紙をゆりえに叩きつける。A4用紙が床に散らばる。


アキラ 時間がないんだ! だったら膨らませた奴をもってこい!

ゆりえ それこそ時間がなかったし…。

アキラ まったく、どいつもこいつも、言い訳ばっかりしやがって!


   アキラ、ドスドス下手に退場。

   ゆりえ、床に散らばったA4用紙を拾って椅子に座り、見直し始める。時々ペン入れをしている。

暗転。


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