ぴょん太の探しもの
雪がしんしんと降り積もる北国の町に一軒の赤いレンガの家がありました。
その家には、お洒落をすることが大好きなユキウサギのぴょん太が住んでいました。
今日は生まれて始めて出来たともだち、キタキツネくんと一緒にぴょん太の家でご飯を食べる約束をしているのです。
ピンポーン!
「ぴょん太くん、遊びに来たよ!」
フサフサとした黒い毛並みが美しいキツネくんがやって来ました。
「はーい!ちょっと待って!あれ。」
ぴょん太は、鏡に映った自分がマフラーをしていないことに気が付きました。
「冬なのにマフラーしていない僕って何てかっこ悪いんだろう。」
机を移動させたり棚を開けて見たり、キツネくんを置いて探し始めたのです。
「緑色の毛糸のマフラーなのだけど、どこに直したかな。」
一生懸命探しますがなかなか見つかりません。
「ぴょん太くん、まだかい?」
外では、キツネくんが待っています。
ぴょん太は、最後にマフラーをどこにしまったのかじっくり考えていました。
すると、ふと思い出したのです。
「あ!洗濯機の中に入れっぱなしだ!」
ぴょん太は、急いで洗面所に走りました。
「後どのくらい?」
その時、外ではカチカチとキツネくんの歯がぶつかる音が辺りに響いていました。
キツネくんが吐く息は、真っ白です。
「どこにもないなあ。」
ぴょん太は、洗濯機の中に入っていた、くたびれた靴下やしわくちゃなシャツを放り投げていました。
すると、1本の千切れた緑色の毛糸が見えたのです。
「見つけたぞ!」
マフラーは、他の洗濯物の下敷きになっていました。
ぴょん太は、鏡を見ながらマフラーをゆっくり首に巻きつけています。
その時、外は雪あらしになっていました。
キツネくんの頭にはたくさんの雪が覆い被さっています。
彼は、体を丸くして言いました。
「ぴょん太くんを絶対に待つんだ。」
キツネくんを支えているものは、ぴょん太と一緒にご飯を食べることでした。
ぴょん太は、外の様子など知らずにマフラーをつけた自分の姿を鏡で見ながら、うっとりしていました。
「きっとキツネくんに褒めて貰える!」
口笛を吹きながらぴょん太は、おもいっきりドアを開きました。
「見てくれよ!今日の僕はすっごく格好いいだろう?」
その時、ぴょん太が見た世界は想像を絶するものでした。
辺りの木々は、今にも折れてしまいそうなぐらい揺れています。
容赦のない吹雪が全身を襲って来ました。
「キツネくん!どこにいるの!」
大きな声で話しかけますが、返事はありません。
どうしたものかと少しずつ足を進めた時、横に倒れている雪だるまを見つけたのです。
雪だるまにはしっぽが生えていました。
「大変だ……」
ぴょん太は、キツネくんに覆い被さっている雪をどかし始めました。
「返事をして!」
キツネくんがだんだんと見えてきましたが、目を開けてはくれませんでした。
ぴょん太は急いでキツネくんを抱えて家の中に入りました。
その時、マフラーが首から落ちてしまったのです。
ぴょん太はそのことに気が付きませんでした。
頭の中はキツネくんのことでいっぱいだったのです。
家に入るとすぐに、キツネくんを暖炉の前に寝かせて、自分が着ていた上着を被せてあげました。
「お願いだ……目を開けてくれ。」
ぴょん太は、泣いてしまいました。
すると、その声が聞こえたのかキツネくんが目を開けたのです。
「ここはどこ?」
「僕の家だよ。君は雪だるまになって外に倒れていたんだ。」
「俺がかい? 」
キツネくんは、ケラケラ笑っています。
「あれ、ぴょん太くん。どうして泣いているの?」
「全部僕のせいだ。マフラーなんか探さなければ君は寒い思いをしなくて良かったのに。」
「それは違うよ。」
キツネくんは、言いました。
「君とご飯を食べることを考えていたら朝ごはんを食べるのを忘れてしまったんだ。だから、俺は空腹の時間を忘れるために眠ることにしたのさ。」
「じゃあ、君は寒さにやられていたわけではないんだね?」
「俺の自慢のフサフサの毛が吹雪なんかに負けるもんか。」
「僕、安心したよ。」
キツネくんの元気な姿を見て、ぴょん太は、その場に座り込んでまた泣いてしまいました。
「おいおい泣くなよ。それで、マフラーは見つかったの?」
キツネくんに言われて、ぴょん太は首もとを触りました。
ですがそこには何もありません。
「君を抱えた時に落としてしまったのかもしれない。」
「大変だ!俺が取りに行くよ!」
「もう、どこかに飛ばされているよ。」
「探せばきっと見つかるさ。」
ぴょん太は、あのマフラーが本当に自分が大切だと思っていたのか分からなくなっていました。
はっきりしないぴょん太にキツネくんは、怒ってしまいました。
「たくさんの時間を使って探したんだ!それは大切なものだよ!」
バタンッ!
吹雪の中、キツネくんは家を飛び出しました。
ぴょん太は、ソワソワしていました。
いくらキツネくんの体が丈夫でも、あの吹雪の中ずっと進み続けるのは危ないと思ってしまったのです。
ですが、キツネくんが帰って来ることをぴょん太は信じようと決めました。
それから、生まれて始めてともだちを待つ時間を過ごしたのです。
何かをしている時間よりとても長く感じました。
キツネくんは待っている時間は寝ていたと話していましたがそういった気持ちもあったのではないかと、胸が痛くなりました。
ぴょん太は、キツネくんのために出来ることはないか考えました。
そして、空腹なキツネくんが帰って来てすぐにご飯を食べられるように料理を温めることを思いついたのです。
ですがそんな時間は、すぐに終わってしまいました。
キーッ……
すると、ドアが開いた音が聞こえたのです。
玄関に向かうと、全身雪まみれになったキツネくんが緑の毛糸のマフラーを口にくわえて立っていたのです。
「家の近くの木に引っ掛かっていたんだ。見つかって良かったよ。」
キツネくんはマフラーをぴょん太に渡し、体をブルブルさせて雪をはらっています。
ぴょん太は、マフラーを鼻にあてて匂いを嗅ぎました。
すると、キツネくんの匂いがしたのです。
自然と笑顔になりました。
「キツネくん、ありがとう。」
「へへ、どういたしまして。」
「一緒にご飯を食べようよ。」
「それはいいね。」
キツネくんは、ご飯の匂いのする方に進んで行きました。
そこには、ご馳走がたくさん並んでいました。
オムライス、ハンバーグ、クリームシチュー。
どれもとても美味しそうです。
「俺の好きな食べ物ばかりじゃないか!」
「君の口にあうといいな。」
キツネくんは、それぞれ一口ずつ食べ始めました。
すると、突然クルッと一回転したのです。
「こんなに美味しいご飯始めて食べたよ!」
「喜んでくれて僕も嬉しいよ。」
二人は、夜が明けるまで一緒に過ごしました。
その時間、ぴょん太はキツネくんが探してくれたマフラーをずっとつけていました。




