05 つまりチート
アリス様とフラグを立ててからというものエブリデイ幸せで溢れていた。いやフラグとか調子に乗りました。お友達になってからです。
バネッサ様に呼び出されてからというもの、アリス様と武術や魔法の実技でペアを組んだり、昼食をご一緒したりとても充実した日々を過ごしている。昼食については、今までルード様とご一緒されていた時間を割いてもらっているようなので、ルード様からの視線が痛い。
ゲーム中に出てこなかったため知らなかったのだが、アリス様って女生徒にすごく慕われているみたいでファンクラブがあるらしい。ファンクラブというか親衛隊?
アリス様を見守られていたり、ローテーションを組んでアリス様をお茶会にお誘いしたりするのがメイン活動だ。アリス様って口調はとても丁寧だし、外見も女神というか天使というかそういう美しさがあるんだけど、言動がすごく男前なんだよね。宝塚の男役みたいな。
だからアリス様の女性人気はべらぼうに高い。学園内の人気をルード様と二分割しているようで、ルード様派とアリス様派で派閥争いがあるらしい。お二人は婚約者なんだから仲良くしたらいいと思うんだけど、ルード様派はあわよくばアリス様を追い落として後釜に座りたい人たちが多いらしいので和解は難しいみたい。
アリス様派には私のようにルドアリ応援派が多いみたいで仲良くなりたいなと思うんだけど、私がアリス様に贔屓されているから心証が悪い。直接文句を言ってきたりする人はいないけど、羨ましいからお前は仲間はずれな!って感じ。
その分アリス様とご一緒できるからいいけどね!一番近くだもんねー!悔しくなんかないぞ!
「アイリスさん大丈夫?」
今日も今日とて、アリス様と魔法学でペアを組んでいる。
基礎的な内容だから独学で勉強した魔法でなんとかなるっちゃなるんだけど、基礎は完璧なアリス様から見るとガタガタらしい。ゲーム知識をベースに魔法を使ってたけど、実は魔法に詠唱はいらないし、もっと効率的に強くなれるみたいだ。アリス様は教師が教えてくれないようなことまで手取り足取り丁寧に教えてくれる。
他の攻略キャラと勉強するより絶対に上達早いね。めちゃくちゃ上達してしまった。さすがチートサポーター。
ただ、その分魔力の減りが早くて、授業中に倒れそうになることが何度かあった。とても心配してくれるんだけど、それよりも魔力をあげなきゃという気持ちが強くて首を振る。魔力は使えば使うだけ上がるので、弱音を吐いている場合ではないのだ。アリス様の命がかかっているので。
「大丈夫です!まだまだいけます!」
「そう?あまり無理しちゃダメよ?」
心配そうなアリス様を横目に、回復した魔力でまた魔法を打つ。魔力不足で倒れそうになるのは私くらいなんだけど、そもそも打ってる魔法の数が違うので白い目で見るのをやめてほしい。魔法学を始めたばかりのゲームアイリスは最初の時点じゃ魔法を打つことすら出来なかったんだから私の方がマシである。そこのところよろしく。
ふと、離れた位置にいるルード様とジャック様に目を向ける。ルード様はルード様派の女の子に声をかけられていた。一言二言会話して、ルード様はすげなく魔法の練習に戻っている。ジャック様はそれを虫を見るような目で見ているけど、従者ってそういうものだっけ?
「ジャックと殿下は幼馴染なのよ。だから二人はだいぶ気安いのよね。まあ、まだ正式に従者になったわけでもないから」
私の視線に気がついたのか、アリス様はそう言って笑った。ふむ、ゲームでのジャック様はルード様大事!守る!って感じのことばっかり言っていたけど、実際はそんな感じなのか。普段は気安いけど大事しにしてるんだろうな。
「仲がいいのはいいことだと思います」
「そうね、私もそう思うわ」
アリス様は歌うようにそう言って、火の魔法を放った。先にある的が轟音を立てて壊れる。
基礎魔法のはずなのにどう考えても威力がおかしいのがアリス様クオリティだ。私もこれくらい出来るようにならなきゃな。
「アイリスさんならすぐに出来るわ」
びっっっっっっっくりした。ナチュラルに心を読まないでほしい。
「……そうでしょうか」
「ええ。アイリスさんは魔法適性が高いから。基礎がしっかり身につけばすぐよ」
頑張ってねと朗らかに笑うアリス様に頷いた。心が読めることは置いておいて、アリス様に出来るって言われると出来る気がするよね。推しに応援されたので頑張ります。
「魔法は理論よ」
ゲームでもアリス様はそう言ってた気がするけど、全然ファンタジーっぽくないよなぁ。いいけどね。理論の勉強とか嫌いじゃないし。
「今度うちにある本を貸してあげるわね」
「ほんとですか!有難うございます!」
至れり尽くせりじゃん。アリス様を助けるためにはアリス様と同じくらい強くならなきゃいけないのに、張本人の手を借りるってどうなのかなと思わないでもないけど。
まあ強くなれるなら手段は問わないってのも鉄則だしね。いいよね!
うんうんと一人納得して、アリス様の壊した的の隣に、私も魔法を放つことにした。
目指せ、チート越え!