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04 現実は奇なり

 ルード様への無謀凸をした結果、どうにも悪目立ちしてしまった。

 元々平民から貴族になった上、予知の力を持っているということですごく目立っていたのに、さらにはマナーのなっていない無謀女のレッテルを貼られてしまった。いやまあ自業自得ですけど。


 そして今、私は乙女ゲーム定番イベントである『お呼び出し』を受けていた。いやー、モテる女って辛いね!……調子に乗りました。誰ともフラグが立ってない時点で呼び出しイベントとかなかったと思うんだけど、これって大丈夫なんだろうか。私、大怪我したりしないかしら。不安。


「貴方、殿下にお声掛けするなんて礼儀がなっていないんじゃなくって?」


 そういって私を見下ろしてくるドリルロールのキツ目美人なご令嬢、とても見覚えがございます。彼女、PoWLの悪役令嬢だわ。侯爵家のご令嬢で、イケメンにちやほやされる成り上がりのヒロインが気に食わなくて虐めてくる。その虐めの結果、ヒロインと攻略キャラの距離が縮むんだから頭が足りないというかなんというか。定番イベントなんだろうけど。


 さてどうしたものかなぁ。彼女の言っていることは事実だから反論し難い。私もそう思ったもん。不敬罪って言わないルード様優しすぎて笑ったもん。

 私の目標はルドアリを幸せにすることだから、イケメンとのフラグとかどうでもよかったし特に関わりを持ってないけど、それでも呼び出しを受けるんだなぁ、とは思う。それかルード様とフラグが立ってしまったということ?ご令嬢、ルード様の名前だしてるし……。

 あれからルード様とお話しする機会は今のところないわけだが、彼女は何を見ているのだろうか。というか、ルード様のことで文句つけてくるとか、ご令嬢はルード様狙いなの?婚約者のアリス様がいらっしゃいますが?

 というかまだアリス様とお話できてないんですけど。どういうことなの。


「なんとか仰ったら?」


 何も言わない私にしびれを切らしたのか、ご令嬢は睨みを利かせてくる。今にも手をあげそうな表情に、きっと彼女は短気なんだろうなとぼんやりと思った。現実逃避である。いや本当どうしようね。


「あら、何をなさっているの?」


 いっそため息でも吐きたい気分だった時、第三者の声が聞こえてきた。ご令嬢の後ろには二人ほど取り巻きが立っていたけどその方達でもない。この声、聞き覚えあるな。


「あ、アリス様!?」


 目の前のご令嬢が悲鳴のような声を上げる。その言葉にハッとして、私もご令嬢の視線の先へと顔を向けた。


 嘘〜〜!?アリス様〜〜!?


 そこには腕を組んで扉に寄りかかるアリス様がいた。扉は閉まっていたと思うんだけど、いつの間に入ってきたんだろうか。扉が開いた音がしたら誰かしら気がつくと思うんだけど。


「で、バネッサ様。アイリスさんを囲んで何をされているのかしら?」


 ニッコリと笑うアリス様はどこから見ていたのだろう。美人の笑顔は迫力がある。というかご令嬢、バネッサ様とおっしゃるんだな。悪役令嬢の名前とかすっかり忘れてた。

 バネッサ様は口をパクパクさせながらアリス様を見ている。どう見ても言葉が出ない様子に、アリス様は艶のあるため息を吐いた。


「寄って集って虐めだなんて見苦しいですわ。学園内では皆平等。私も殿下も気にしておりませんのに、部外者の方にとやかく言われる謂れはございませんの」


 だからこの場から去れとアリス様の目が言っている。アリス様、私を助けてくれたんですか?えっアリス様攻略ルートとかあったっけ?


「〜〜ッ!行きますわよ!」


 バネッサ様は旗色が悪いと思ったのか、取り巻きを引き連れて足早に去っていった。目に見えた危機がさって思わず息を吐く。


「アイリスさん、大丈夫かしら?」


 は、はわわ〜〜!アリス様に声をかけられてしまった!?

 はわわじゃないわ、アリス様が目の前にいるとかどうしよう?!焦りながら言葉を選ぶ。


「だ、大丈夫です!助けていただき有難うございました。バネッサ様の仰ることがもっともで言葉が出なくて……」

「あら、本当に気にしていないのよ?だいたい、校風として皆平等を掲げているのだから、殿下だろうが高位貴族だろうか声をかけられたって邪険にしないわ。むしろね、私は嬉しかったの。貴方にも興味あったし」


 バネッサ様に向けたものとは違う、柔らかな笑みを向けられてドギマギする。いやほんとにアリス様の攻略ルートとかあったりした?

 興味あったとか言われちゃったんですけど!えー!やばーい!自分のテンションと語彙力もやばーい!


「興味、ですか?」

「ええ。貴方、予知が使えるのでしょう?」


 ははーん、なるほど。面白い女じゃねーの的なアレね。アリス様そういうところある。知ってる知ってる。そういうところも好き。推し。


「予知……は自由に使えるわけじゃないですし、必ず当たるというわけでもありません。あまり便利な力じゃありませんよ?」

「良く当たると城下では話題だったわよ?まあ、だからと言って何がしたいというわけでもないし気にしないで」

「お詳しいのですね」


 ほんとに詳しいな?そんな簡単に城下の話とか入ってくるものなの?いや入ってくるか……公爵家だもんな。


「アリス様はどうしてこちらに?」

「通りがかっただけなのだけど、なんだか甲高い声が聞こえたものだから気になったの」


 アリス様はカラカラと笑う。甲高い声とかアリス様ったらいうなぁ。私も思ったけど。


「ねえ、アイリスさん同じクラスでしょう?折角なのだから、これから仲良くしてね」


 ひぇぇ望んでたけどアリス様から仲良くしてねって言われちゃった!やったぜ!


「私なんかがよろしいのですか?」

「身分のことを言っているの?そんなの気にしなくていいのよ。それに私、お友達が少ないの。気楽にお話ししてくれるのなんて殿下とジャックくらいだわ」


 アリス様はつまらなそうな顔をすると、だからねと私の手を取った。すべすべする!キメの細かい綺麗なお肌!


「周りを気にせず仲良くしてね。困った人に絡まれたら私が助けてあげるし」


 ね、と語りかけるアリス様に、操られるように頷いた。えっ格好いいが過ぎない?やっぱりアリス様って攻略対象だったのでは?ヒーローでは?

 私の混乱を知らないアリス様は、嬉しそうに目を細めるとまた明日と去っていった。廊下に消えていったアリス様を見送って、はっと我に返った時にはすでに下校時刻をとうに超えていた。


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