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03 陽キャよりは陰キャ

 やったー!入学しました!剣魔貴族学園!

 いやほんとその名前どうなの?平民が通える学校に剣魔学園があるから、その貴族版ということなんだろうけれども。


 魔物がいる世界なので、実は冒険者家業というものがありまして。すぐに死なない冒険者を育成するために、平民が通える学校として存在するのが剣魔学園なんですね。武術と魔法を教えてくれる学校で、教養知識とかそういうのを教えてくれるような学校ではないんだけどやっぱり人気はあるよね。教養も教えればいいのにと思うけど、人手も予算も足りないらしい。世知辛いね。


 さて、バルバッサ家に引き取られてから一年。私は貴族としても知恵者としても成長したと思う。書斎にあった本は全部読み終えて、平民の時には知り得なかったこの国の知識や魔物についても色々と知ることができた。

 人が住む土地以外には魔物が溢れていて、そのために必要な国の運営だとかを考えるのが貴族の仕事らしい。魔物が起こす摩訶不思議の問題――厄災を解決するにも力がないことと何もできないから男女関係なく武術も魔法も学ぶ、と。


 えっそんな感じだったの???確かに厄災とかほとんど魔物関連のストーリーだったし、めちゃくちゃバトルした記憶あるけど厄災についての言及ってなかったはず。

 魔物が引き起こす摩訶不思議な問題……この摩訶不思議っていうのがポイントなんだろうなぁ。魔物は人を襲うけど、そういう直接的な被害は冒険者が解決してくれる。

 それ以外の不可思議な、それこそ赤薔薇の呪いのような問題を解決するのが貴族の責務。なるほどね、ちょっと理解してきた。


 それにしてはゲーム中に出てくるモブ貴族ってバカっぽい感じがしたけどどうなんだろう。乙女ゲームだからか?


 そんなことを考えながら、職員室に向かう。どうも予知についての話を聞きたいということらしく、学園についたら来るようにと事前にお父様へ知らせが届いていたらしい。そういう話し合いは入学前にするものじゃないのか?頭足りてないのでは?


 なんて考えていたら学内で迷子になりました。頭足りてないのは私ですわ……。

 しかしこのシーン、見覚えがあるな。入学式前、職員室に行く途中に迷子になって――……そうだ、ここでルード様に出会うんだ。これはアリス様と知り会うためのフラグ!

 はっあの透き通るようなプラチナの髪はルード様では!?


 うろうろしていたら講堂の近くまで来ていたらしい。入学式前の打ち合わせをしていたらしいルード様は、教師と別れてこちらに来るところだった。

 ここぞとばかりに声をかけて、迷子になったことをそれとなく伝える。ルード様の名前を聞くのは別のシーンだったから、多分ここで名乗ってはいけない。アイリスはどうあがいてもルード様ルートはないから多分大丈夫だと思うけど、変なフラグを立てるわけにはいかないので。


 ルード様に職員室への行き方を聞いてさっと別れる。ほんの数分、とりあえず顔を知っているくらいの関わりが出来た。これで、多分、アリス様がいる時に声をかければいいんだと思う。


 話しかけるってどうすればいいのかなー。何を言えばいいんだろー。


 教師との話は当たり障りのない会話で終わって安心した。入学式をこなせば、そのままクラスへと移る。入学前に配られていたピンバッチの模様でクラスが決まるらしい。ハート、スペード、ダイヤ、クラブ、トランプの四柄。

 私はハートだ。多分、アリス様もハートだと思う。ゲーム中ほぼアリス様と一緒にいたし。あとは……ルード様とジャック・スペードもハートだったはず。

 ルドアリが間近で見れるの楽しみが過ぎるな。


 今日は入学式と説明だけなのですぐに帰宅だ。本番は明日だなと独り言ちて、にやける顔を必死で抑えて教室に向かった。






 ルード様に突撃する機会は存外すぐにやってきた。

 後ろにジャック様、隣にアリス様を連れたルード様を見つけて駆け出した。駆け出したはいいが、なんて声をかければいいんだ?アイリスはなんといっていただろうか。全然覚えてないわ。

 前世は陽キャというよりは陰キャだったし、オタクだったし。知らない人に突撃することとか今世でもほぼなかったしどうしていいかわからんわ。でももう目の前だし。ええい、ままよ!とにかく認識してもらわないと困るので、私は勢いで口を開いた。


「あ!あの時の!」


 いや、あの時のってお前……。これ不敬罪適応されないかな?大丈夫?

 ルード様は驚いたように振り向いた。普通こんなノリで王太子に声かけてくる人いないよね。ちょっと意味わからないね。

 アイリスは天然で明るく、分け隔てない優しいヒロインって感じだったから、なんかそんな感じをイメージして言葉を選ぶ。お礼と名前は忘れちゃいけない。


「この前は有難うございました!私、アイリス・バルバッサと言います!」


 うーん、いいのか?こんな感じで。ちょっと疑問だが、ルード様はしっかり私を認識したし、まあ結果オーライである。ついでに周囲の視線もかっさらってしまったが。


「いや、無事につけたならよかった」

「はい!……あの、お名前を聞いてもいいですか?」


 元が平民だからって王太子の名前を知らないわけがないんだけど、そういうツッコミはスルーの方向で。ちらっと隣や後ろにも視線を送れば全員のお名前を知りたいなー的な意図に気づいてくれるのじゃないかと期待。ルード様はその意図を組んでくれたのか、二人も合わせて紹介してくれた。


「ルード・ヴィクトリアスという。彼女はアリス・ベルラーシ。私の婚約者だ。後ろにいるのは従者のジャック・スペード」


 へー!そうなんだ!知ってたけどね!


「ルード様とアリス様、それからジャック様ですね!よろしくお願いします!」

「ええ、アイリスさん。よろしくね」


 名前を復唱すれば、アリス様は綺麗な笑顔を見せてくれた。ハニーブロンドの髪が窓から差し込む光でキラキラと輝いている。コバルトブルーの瞳は聡明さの中に慈愛を称えていて、その姿はまさに女神。え、こんな令嬢が死ぬとか世界の損失が過ぎない?絶対助ける。


「それでは。アリス、行こうか」


 さっさと話を切り上げてしまうルード様を残念に思うが仕方ない。今は昼休み、アリス様と昼食に向かう途中だったに違いなく。二人で一緒にいる時間を邪魔されたくないんですね、わかります。邪魔して本当にすみません。


 PoWLの二作目を見る限り、ルード様は潜在的ヤンデレキャラだった。アリス様が拘束されるのが好きじゃないから自由にさせてたら死んでしまって、その結果二作目ヒロインを病的なまでに拘束して溺愛する……。うーん、ヤンデレルドアリも美味しくない?なんでアリス様を殺した?おい公式、お前に聞いているんだぞ。


 運営への呪詛を唱えながら、アリス様とエンカウントできたことに安心した。アリス様は「お前面白い女だな」タイプなので、初めは向こう見ずで貴族にはいないタイプのヒロインに興味を持って話しかけていたはず。だから、多分気にしてくれると思う。少なくともさっきの言動は貴族にはあるまじきだったと思うし。

 仮にダメだったとしても名前を聞いたからこっちのものだよね!アリス様が来てくれなくても私から声かけるから問題なし!ゲームでアリス様、高嶺の花扱いされすぎててあんまり声かけてもらえないって言ってたしね!!!


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