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ジェネレーションギャップのような何か

作者: 冬月佐韋

 

 近頃のじぇーけーに流行るもの――

 と言えば、「ぴーびー」こと、ペットバルーンだろう。

 名の通り犬や猫を模した、愛玩用の風船である。令和の少女達は、それこそ猫も杓子もその風船を連れている。


 しかし。

 この風船、ペットだけあって――とでも言うべきか――生きている、らしい。


 例えば。

 何らかの事故――ちょっとした接触で割れてぺらぺらのビニール片になってしまった、血塗れの愛犬あるいは愛猫を抱えて号泣する制服の少女を、誰しも一度や二度は目撃したことがあるだろう。

 ……あまり目にしたい光景とは言えないが。

 本来空気しか入っていないはずの風船なのに、あの中には本物の動物よろしく血と内蔵が詰まっている。尤も内蔵も小さな風船らしいのだが――それだけなら単に「不気味なおもちゃ」の一言で済むのだが――どういうわけだか、血はやたらとリアルなのだ。

 一度穴が開けば鉄臭い、真っ赤な液体が後から後から溢れ出てくる。いくら作り物だと思っていても、心臓に悪い。

 大破した日には目も当てられない。

 風船が割れると同時、そこに詰まっていた赤い液体が周囲に飛び散るのだから。

 更に持ち主である少女にとっては、愛するペットの死だ。自分のものではない、作り物の血で制服を真っ赤に汚し、その場で泣き崩れる少女――輪をかけて精神的にきついものがある。

 そして本気で心配して、貰い泣きすらする、彼女の友人達。

 何だろう、この光景。

 傍から見れば、「たかが風船」でしかないのだが。


 何でこんな物が流行っているのだろう――

 流行に乗らない世代にとっては、理解に苦しむ。

 加えて割れた時の視覚のインパクトも考えると、販売中止にした方がいいのではないか。事実、すでに人混みでの迷惑を考え、持ち込みを禁止する施設は急速に増えているのだし。

 しかし。

 販売中止どころか、製造元はよりリアルさを追求するとか言い出している。

 オーナー以外には「ただの風船」でしかないからこそ、無理解な周囲の不注意によって多数の犠牲が生まれているのだ、と言う、責任転嫁な理由で。

 ゆえに現在は、外見も限りなく生身の生物に似せた商品を開発中なのだと言う。

 ……そこまで似せたら、逆に公共の施設で止められそうなのだが。

 それに。

 流行と言うものには、いずれ終わりが来る。

 猫も杓子も――とは言え、これだけ周囲から渋い顔をされている今、自ら理由に納得して使わなくなっている少女も、少しずつ増えているのだし。

 限りなくリアルな疑似ペットが完成した頃には、もう誰も見向きもしなくなっているのではなかろうか。まあ古い文化の再流行と言う可能性も、否定は出来ないが。


 何にしても。

 “彼等”の行く末は製造元の企業が考えることであって、我等世間の与り知ることではないだろう。

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