異世界で好きな能力をやろうと神様が言った。
「死んだら時間が巻き戻ってやり直せるスキルが欲しい」
「私も」
「死んでもやり直せるなら異世界だって無敵だよな?」
「いえー、無敵ー」
「じゃ、それで」
神様が伸ばした指先から光がほとばしる。
満足そうな顔をしたクラスメイトが消えていった。
+++
修学旅行の帰りのバスが崖から転落して、気がついたら不思議な空間に居た。
周りが白くて、骸骨が浮かんでいる。
喋るたびにカタカタ音を立てている。
正直、怖かった。
俺は皆から離れて、震えながら見ていた。
だけど、皆は物怖じしないでソレと話している。
俺は怖かった。
俺が何か失敗する度に、ベルトで殴ってくる母さんと同じくらい。
怖かった。
「今から君たちには異世界に行ってもらう。剣と魔法の世界だ。エルフも居るし、獣人もいる。好きな能力をやろう」
骸骨の言葉に、何故か皆は歓声を上げる。
嬉しいのか。
俺は、世界なんてどこも同じだと思う。
だけども同時に、あの母さんから逃げられるのかと思う。
まだ、小学生の俺は半端に大きくて、半端に小さい。
皆、次々と流行りのライトノベルみたいに『魔法』とか『死に戻り』『金』とかの能力や物を望んで消えていった。
残りは俺一人とクラスメイトの女子が一人だった。
いつも俺と同じように俯いて本を読んでるやつだ。
残ったもの同士、どちらともなく寄る。
「お前たちも死に戻りスキルが欲しいか?」
骸骨がカタカタ言いながら、聞いてくる。
俺は震えながら首を振った。
せっかく死んでも、戻るなら世界は変わらない。
死ぬような絶望的な世界には戻りたくない。
そうだ。
「俺を大事にしてくれる父親と母親の元で平和に暮らしたい」
「私も」
クラスメイトの女子が、俺に賛同した。
思わず見ると、小さく「ごめんなさい」と謝ってくる。
骸骨がカタカタと笑った。
「長い間の中で、そんな要望初めてだよ。確かに持って生まれた環境も能力だな。さっきの奴らはそんな環境に恵まれていた。余談だが、死に戻りスキルは早々に心が壊れて心からもう死んだままで居たいと思うだろう。流行りなんだがな」
俺と女子は、骸骨の言葉に何も言えなかった。
「さあ、おまけで赤ん坊の時まで時間を戻してやる。気のいい父親と母親の元で二人楽しく暮らせ」
最期に、骸骨の指から光がほとばしるのを見た。




