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もう会えない人〜ズルイヒト〜

作者: ゆき

あなたは今…どこにいるのでしょうね


何を見てますか?


笑っていますか?


年齢を重ねたあなたも…見てみたかったな……



あなたと出会ったのは、えーっと…

もうかれこれ…随分前になりますね


時間は経ってしまいました




私が地方の専門学校を卒業して

暫くその仕事をしてたのですが、

精神的に続けられなくなって実家に帰って来た頃…


仕事しないとお金が無い!だったから

取り敢えず近くの所を見つけて


面接に行った時、あなたもいましたね

なかなか目を合わせてくれないから

あー、ここでの就職…ダメかもって思いましたよ


そしたら、なんと明日から来てくださいって

あなたから電話がありましたね


後から聞きましたけど、面接の時から私のこと、可愛いなって思ったって聞いて

えっ?そうだったの?って…浮かれてました

バカですね、私



部署もあなたの所で、付きっきりで

教えていただいて

何の感情もなかったのに

近くにいればいるほど

あなたのことを知りたくなりました


もう朝だーって時間に仕事が終わるから

きっと気分も高まってたのかも知れないけど

あなたは私を抱きしめてくれましたね


いつかこんな日が来るかなって

勝手に考えてましたが、まさか本当になるとは…


仕事が終わって、2人で海の防波堤に行ったこと、覚えてますか?


私はあなたの隣にちょこんと座って脚をブラブラさせてたら、あなたは私の顔を自分の方に向けて…初めて…キス…しましたね

灯台の光がこちらを照らすから、誰かに見られてないかってドキドキしました


キスしながら胸も触れてきたから、私、息があがっちゃって


その後、いけないこと……しました

上司と部下なのに




あなたの口唇は、とても優しかった

優しく 優しく 私のことを…


触れてるのか触れてないのかわからないくらい…頰も…首も…胸も…

今もあの感触は覚えてます


本当に優しかった……





私、知っててあなたのそばにいました

あなたは白血病だったこと


入退院も繰り返してたし

薬も大量に持ち歩いてたし


でも、あなたから はっきりと病名を言われたことは…無かったですね


悟られたくなかった…のかな

この関係が壊れるのが怖かったのかな


今となっては…もうわかりません





ちゃんとお付き合いしてるわけでもないし

周りにも言えない関係のまま

あなたとは体だけの関係になってしまった


あなたは私の体だけ…求めてきた


あなたの心は…私には向いてなかった


わかってた

わかってました


だって…「夜だけ俺と付き合って」って

そう言われて


それでもいい、この人のそばにいれるなら

それでもいいって

あの頃の私は本気で思ってた…

あなたが離れていかないように

私を見ていて欲しかったから

望むように…してた


でも、あなたと体を重ねても

淋しくて……辛くて……



そんなに時間が経たないうちに

私から「さよなら」しました


仕事も辞めました





その後、あなたとは一度も会わないまま

3年が経った春

あなたが亡くなったと…



本気でお付き合いする人もなく

結婚もせず

自分を納得させてたの?

病気だったから?


そんなの…理由になんて…ならないよ



ずっと ずーーっと

私の中で

あなたのことが引っかかったまま

生きてきました


今日、ようやく 本当の「さよなら」が言えそうですよ


あなたが生きていたら

こんなふうに思わなかったんだろうな


ずっと私の心に住みついてた「ズルイヒト」



ありがとう

あなたに会えて 良かった…


どこかで また 会える日まで

バイバイ

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