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今世は運任せ  作者: サイコロ
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第2話 元気にはなりました

俺が目覚めて長い時間が経った。

数分、数時間、あるいは数日。

窓さえ無いこの暗い部屋では時間感覚が狂って仕方がない。


あれから部屋の様子は変化が無い。

他の奴は静かなものだ。

声も出さないし、身動きもしない。

ただ呼吸して排泄するだけ。

生きた屍とはこいつらの事だな。


…まぁ、こんな暗い部屋に家畜以下の扱いじゃ希望を持てと言う方が酷か。

しかし、不思議な事に俺は元気になりつつある。


扉の近くで座り込んですぐに疲れが癒えたと思えば身体の節々の痛みも感じなくなった。

何も食べず飲まずでいるのに手足の肉付きも心なしか良くなってるような気がする。

二の腕の肉が付いて柔らかくなったな。


これが遊戯神の言っていたチカラか?

…頭の中では【再生】と聞こえたがこの部屋から出るのに活かせられないな。


何度かチカラの言葉を唱えたが左手に何かが乗る事はなかった。

言う度に喉の調子も良くなったのか、鈴のような可愛らしい声が出るようになった。


…これが俺本来の声なのか

いつかは慣れるだろうが、正直、違和感しかないな。

女は声変わりがあるのだったか?

男は低くなるが…女も変わる、よな?


喉仏の部分を触ろうとして無骨な首輪に手が当たる。

これも不思議と言えば不思議だ。

硬い何かだとは思うのだが、どこを触っても繋ぎ目が分からない。


どんな首輪か、どうやって付けたのか見当もつかない。

そして何の為に付けてるのかも。

普通、鎖や紐が付いて逃げないようにするものじゃないか?


首輪単体で何になると言うのか。

奴隷の証と言われればそれまでだが。


ん?

何か…音が聞こえるぞ?

部屋の奴が動いた様子は無い。

外か?


扉に耳を近付けると、カタンコトンという音が段々と大きくなってきた。

それと…聴き取りにくいが男の話し声か?


1人の男がやけに早口で同じ言葉を良く繰り返している。

誰かに話しているようだ。


…内容は聞き取れなかったが、男がこの部屋に近づいて来てるのが分かった。

俺達をここに閉じ込めた奴隷の主人か?

なら、扉を開けたスキに逃げ出せれば…


扉から離れて隅の方に移動した。

身を屈めていつでも走れるように片足を前に出して体重を乗せて待つ。


足音が大きくなり、話し声もくぐもって一部だけだが聞こえ始めた。


「……へん……たい…で

……いけ……しに……」


キーキーと甲高い男の声だ。

やはり誰かに話しているようだが、1人の声しか聞こえないな。

まさか携帯で話しているのか?


ギギー、ガゴンと錆びついた音と共に扉の部分が動いた。

く、暗い部屋に突然、外の明かりを見て眩しくて目が眩む。

数回瞬きをすると光になれて見えるようになった。


「どれも魔法を使えないクズばかり。

ええ、クズばかりですとも!

それに餌を与えておりませんので適度に弱っております。

ええ、抵抗さえできないほどに弱っております。」


早口でまくし立てる男と扉を塞ぐ程膨れた太った男が黙って男の話を聞いている。


服装は…話している男は顔にターバンのような物で目元以外を巻いて赤が目立つ足元まで隠す派手な服を着ている。

服から覗く手首は異様に細く、皮と骨だけじゃないかと思う。


太った男は顔の口から上を隠す化け物のような仮面を被り、こげ茶色のマントと灰色のピチピチなズボンを履いていた。

仮面を無理矢理付けているせいか仮面から肉がはみ出して見え、ズボンは今にもはち切れそうなほど、パンパンに膨らんでいる。


…逃げようにもあの太った男が邪魔で逃げられない!

空いている所が頭上のみとはどう逃げれば良いのか。


太った男の頭上を見て考えていると仮面越しに太った男と目が合った。


「…あれだ。

あれが良い」


そして太った男は口を歪ませ黒く染まった歯を露わにし早口で話す男の前で俺の方に手を向け一言伝えた。


…目を付けられたか?

早口で話していた男は少し口を閉じて俺の方に近付きながらこれかと他の奴の頭を触りながら確認し太った男が否定する。

否定されれば頭を触れていた者を蹴っ飛ばして奴の頭を触れ太った男に確認する。


だんだんと俺に近づいて来た早口で話していた男が太った男が選んだ奴が俺だと気が付いたのだろう。

他の奴を蹴っ飛ばしながら部屋の隅に居た俺に近づいて頭に触れようとした。


俺は咄嗟に立ち上がりながら男の急所を狙って頭突きをした。

頭に何かが当たる衝撃と男の声にならない悲鳴。

男に覆い被されないように左に逃げるが右手をガシッと掴まれ首が熱くなり身体が動かなくなる。


握られた右手を引き摺られながら太った男の方へと近付く。

右手に俺の体重が乗ったせいか手首や肩が痛い。

引き摺られる為、足が痛い。

しかし、それは今はどうでも良い。


何が起こった。

何で身体が動かない。

首が燃えているように熱い。

いや、首輪が熱を発している。

火傷をするのではないかと思うほど熱くなっているのだ。


この首輪は何だ?

ただの奴隷の証ではなかったのか?

触れられて身体の自由を奪うなんてそんなの…刷り込みや思い込みか?


それとも…俺が遊戯神から与えられたチカラと同じような、この早口男が言った魔法という奴か!?


どうすれば良い!?

どうすれば逃げられる!?

どうすれば身体が俺の意思で動くなるようになる!?


俺は太った男の前に引き摺り出され…

部屋を出た。


暗い部屋の前は階段だったようで太った男が見た目とは違い軽々と登って行く。

俺は早口男に引き摺られて階段を登ってる為、身体のいたる所を打つ。

痛いが、それよりもこの状況どうにかしないと何をされるか分かったものじゃない!


しかし、身体の自由は奪われた状態では考える事しか…嫌な想像ばかり思い浮かぶ。

家畜以下の奴隷に生まれ変わった後はあの太った男のオモチャか。


男共がやけに大きく見える。

それだけ今の俺が幼いのだろう。

幼女を買うとか犯罪の未来しか考えられないぞ?


口さえも動かぬ今の状況では遊戯神からのチカラも使えないか。

言えても使えはしないだろうが。


俺はどうなるのだろうか。

逃げる機会を見逃さないように警戒するしかないか。

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