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今世は運任せ  作者: サイコロ
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第17話 王城に住みました

王城に来て早一ヶ月。

ここでの生活も慣れてきた。


そう、王都に行くとは聞いて居たが俺とシャルは王城に住む事になった。

ふん、使えるコマは手元に置いておきたいのだろう。

それが病んでしまった少女であっても。

俺だって貴重で希少な道具があれば手元に常に置いておくからな。

道具ならばな。


幸いにも今はここでも俺とシャルは2人でセットとして扱われている。


最初は引き離す気であったのだろう。

俺を置いてシャルのみを転移と似た力で王都へと連れて行ったからな。


俺もすぐさま飛んだのだが…いや、あれはいつ思い出しても愉快だ。

いや、面白がってはいけないとは分かっているのだが…どうも思い出すと声に出して笑ってしまいそうになる。


惨状、その言葉がピッタリ当てはまる程に酷く滑稽な光景だった。


俺がシャルの側に飛んだ直後の光景は…シャルが高熱を出したあの時を更に悪化させたような状況であった。


シャルは魔力暴走とパニックを引き起こしたのだ。


つまり、膨大な魔力を撒き散らしつつ、結界を無造作に無計画に周囲に張り巡らしたのだ。


結果は…失神した者は非常に汚い状態で素晴らしく滑稽な姿勢で固まっていた。


例えるならば…ボットン便所に落ちた操り人形を周囲一面に適当に干しているような状況だ。

それをシャルを中心に何十人もの地味なローブの男女がまるで新進気鋭で奇抜な芸術家が整えたような状態で、だぞ?


シャルだけを連れて王都に飛んだ男は特に酷かった。

張り巡らされた結界で空中に押し止められていたのだから。

ポタポタと何がしかの液体が垂れるその姿にはシャルだけを強引に連れ去られた怒りやらがすっと消える思いだった。


…まぁ、必要なのはシャルのみでオマケの俺なぞ必要無い事は分かっていた。

何処の誰とも知らない幼女、それも肩書きは侍女見習いでしかない俺。

置いていかれる事も想定内ではあった。


しかし、嫌がる幼女の腕を強引に掴み、無理矢理に王都へ飛ぶのは良くないだろう。

そもそも、シャルが嫌がったのは俺を置いて王都に向かうようにしたからだろうし。


…それと、時期も悪かったな。

通常のシャルであれば魔力暴走もパニックも引き起こさず俺を待っていたとは思う。


なんせ、俺が転移して何処にでも飛べる事はシャルも良く分かっていたからだ。


しかし、狩りを行った日の影響と新しく手に入れた魅了の効果でシャルも情緒不安定な状態だった。


俺が夜中に離れたあの日からシャルは一睡もできていない。

もう少し詳しく説明すると眠れはするが明らかに浅いのだ。

それこそ、数分の睡眠で覚醒してしまう状態であった。

俺が添い寝をしてようやく眠れはするが数分後には起きて俺が居るか確認するように抱き締めて、匂いを嗅いで安心したように寝る。


流石にこんな状態のシャルを置いて狩りに行くのは、気不味いというか、はばかられて行くのを辞めたのだ。


…多分、ストレス性の不眠だ。

どうやら、あの日、俺が居ない夜を過ごした事がトラウマとなってしまったのか、満足に眠れなくなってしまっていたのだ。


それと、新たに得た能力、魅了。

これが厄介極まりないチカラだった。


狩りから戻った際にシャルに抱きしめられたがその時にシャルが俺から甘い香りがすると言ったのだ。


転移で飛んで帰った為、匂いすら付かない事は分かっていた。

狩りから帰って変わった事と言えば新しく得た魅了しかなく、すぐに原因として思い至った。


…俺には甘い匂いなんて分からないのだが。

自身の体臭をあまり認識できないのと同じ原理だろうか。

俺には何の変化も感じられなかったのだが、シャルを筆頭に周囲からの反応も変わった。


皆、良い香りがすると言うのだ。

それも俺に近ければ近いほど香るらしい。

まるで香水でも掛けたかのような反応であったがすぐに異変は現れた。


この魅了の香り、中毒性があるらしい。

もっと嗅ぎたい、ずっと嗅ぎたい。

そんな欲求に駆られるらしい。


匂いが届かない範囲まで離れれば治るらしいが、シャルは俺と四六時中ずっと一緒に行動していた。

つまり、この甘い香りを常に嗅いでいたのだ。


初日はまだ平気そうだった。

寝不足で辛そうではあったがいつものシャルだった。


しかし、次の日では俺から離れる事を極度に嫌がり、王都から迎えが来る直前には俺に触れて居ないと魔力が不安定になり小さな刺激で暴走してしまうほど危うい状態だった。


…確かにシャルからは依存や執着を感じてはいたがここまで酷い物ではなかった。

魅了がシャルの俺に対する感情を膨らませたのかと思う。


元より俺に依存や執着をしていたシャルだからここまで状態が悪化したのかもしれないが、誰にでもシャルの様に変えてしまうのではと俺は考えている。


魅了はまるでアルコールやクスリのような効果でシャルの俺に対する依存度を深めたのかもしれない。


ここでのシャルの評価は両親を失った事と賊に襲われた事が重なり、俺という年下の幼女に依存しきった壊れた少女、という事になっている。


それも俺という蓋が無ければ周囲に魔力暴走という脅威が溢れる不安定な物のような扱いである。


不快な視線もシャルや俺に対しても向ける者も居る。


あまり過ごしやすいとは言えない環境だがシャルの不眠は回復傾向にある。

ようやく、1、2時間は眠れるようにまで回復したからな。


この調子で元気になって欲しい。


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