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今世は運任せ  作者: サイコロ
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第14話 魔力操作の訓練をしました

俺はシャルと2人で外に居る。

屋敷の外では無く、街の外だ。

正確には邪霊を阻む結界の内側付近に居る。

遠巻きに街の衛兵が居るらしいが木々で隠れて見えない。


俺は今、シャルの魔力操作の訓練に付き合っている。

と言っても俺が何かをする訳では無い。


邪霊の核を加工して作られた魔力貯蔵石、略して魔石という物がある。


これは外部から魔力を流す事で魔力が蓄えられ魔道具の燃料として使われているらしい。


例えるならば懐中電灯やリモコンの充電できる電池のような物、だと俺は認識している。


前方から甲高い金属音が響く。


「あぁっもう、上手くいかない!」


「…頑張れ」


どうやらまた失敗したらしい。


俺は魔石を拾いに行って皮の袋に入れる。


魔力操作の訓練で魔石に魔力を流して蓄える作業をしているのだが、魔石には容量限界という物がある。


それ以上魔力を入れたら魔石が壊れてしまうのだ。

その際、流し込まれ過ぎた過剰魔力が暴発する。

本来ならば軽い衝撃程度なのだが…

目の前の光景は既に何度も行なったせいか地面は抉れ、地震と土砂崩れが起きたような森だった場所となっていた。

随分と遠くが見える森になったな。


街の衛兵もシャルの安全の為に見守りをしているのだろうがこの威力では邪霊も近づかないと思うのだが。


外に居る理由はこれだ。


シャルの中では、ほんの少しの魔力を魔石に込めているらしいのだが、結果は魔石の暴発が災害レベルなのだ。


館の者も魔力に詳しい者はおらずシャルが知っている魔力操作の訓練方法がこれなのだ。


魔石を電池と例えたが蓄えられる魔力は本来ならば1人が何日もかけて漸く満タンになる容量があるらしい。


それを災害レベルの暴発を引き起こしているシャルはそれだけ過剰に魔力を流している訳だ。


その為、誰にも被害が及ばない街の外で訓練をしている。

練習用の魔石を邪霊を阻む結界の外側に置いてその間にシャルの魔法で結界を張った上で行なっている。

本来、魔石に魔力を流す場合は直に触れていないといけないようだ。

離れれば離れるほど魔力が空気中に流れて無駄になるらしい。

シャルの膨大な魔力では少し離れていても入れる事ができるらしい。


そもそもの話。

なぜ、この訓練を行なっているかと言うとシャルが膨大にある魔力を制御できていないからだ。


この世界では電気の代わりに魔力に頼って生活している。

動かす為の魔力は魔石に込められてはいるがそのスイッチを押す為にも魔力が必要なのだ。


スイッチを入れる際に魔力を流して初めて動き出す。


しかし、シャルがスイッチを押すと途端に壊れてしまうのだ。


既に照明器具やトイレの排水などを壊してしまっている。

生活に支障をきたしているのだ。


…俺はその道具を一切使えないが。

そもそも、俺にはスイッチを押す時に必要な魔力さえ無いのだから動く訳がないのだ。


その為の訓練。

だが、結果があまり良くない。

目指すは魔石を持って魔力を流しても暴発しない程度にしたいらしいが、それも遠い道のりだ。


ただ、悪い結果だけでは無い。

暴発をしても魔石は容量限界まで魔力が貯まった状態になるらしい。


その魔力が貯まった魔石を館の滞在料として渡しているのだ。


最初は俺たち2人よりも大きい魔石を使わせて貰った。

聞くとそれは街の電灯や水道などインフラに使われている魔石だそうでそれが5個、空であった為、それに魔力を流したのだ。


魔石は大きければ大きいほど魔力を蓄える容量が増えるらしい。

その為、その5個の時は軽い暴発に留まり自信を持っシャルが通常の魔石で訓練を開始したのだ。


その際の周囲の者はシャルを化け物でも見るような目で見ていたがシャルはそれに気が付かず意気揚々と通常の空の魔石を集めるように伝えていたが。


後で聞いた話、その巨大魔石は数万人が数年かけて貯まる容量だったらしい。


シャルが街の中で訓練をしようとするのを止めて街の外でやるように頼んだ者は先見の目がある。

実に英断だ。

こんな威力の暴発が街中であれば目も当てられないからな。


それを軽くではあるが暴発させるほどの魔力を流したシャルが幼い俺達の手のひらに収まる魔石に魔力を流せばこうもなるかと目の前の現実に納得してしまう。


シャルは最後の空の魔石を邪霊を阻む結界の外に投げて魔力を流し始めた。


しばらくすると甲高い金属音が森に鳴り響いた。


いつか成功するといいな、シャル。


館に帰れば勉強だ。

俺は侍女としての勉強。

シャルは貴族としての勉強だ。


あぁ、俺はシャル専属の侍女になった。

シャルの強い希望と俺の意思で決まった。


とは言え、侍女素人で幼い俺にできることは無い。

ただ、シャルと共に過ごしながら身の回りの世話をする為に必要な技術を学ぶのだ。


…ローガン卿は残念ながら子供に恵まれず、貴族の子供に対する世話など未経験の者ばかりだったが、母親経験がある人材は豊富だった為、その人達に教えてもらっている。


俺も自分で髪を結えるようになったぞ。

自分の事が出来ずに相手の世話をする事はできないと言われて俺は頑張った。


ポニーテールはできる。

不恰好だがな。

結局はシャルと同じ髪型にセットされ直されてしまうのだが。


今日は何の勉強だったか。

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