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今世は運任せ  作者: サイコロ
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第13話 シャルの回復

あれから数日後、俺は高熱を出したシャルの看病をしていた。


長旅からの疲れで熱を出して寝込んでしまったのだ。

館の者がシャルの看病に付いてくれているが訳あって俺も同席する事になった。


シャルが高熱のせいで魔力のコントロールができなくなり、膨大な魔力広範囲に放出しているらしい。


子供や病人にはよくある事なのだそうだが、シャルの魔力量は桁が違う為、大惨事になってしまった。


俺は何も感じないのだが、あの時は館のほぼ全員がそれこそ拷問でも受けているのではないかと思うほど顔色は悪く脂汗が止まらず生気の無い苦悶の表情を浮かべていた。


動ける者は俺の視界には居らず、殆どの者が倒れていた。

唯一、アドルフが床に座り込んでいたのは見えたが動く事はおろか、喋れるほどの余裕は無さそうに見えた。


シャルが貴族の証だと言ってローガーの門付近でやった事に状況が似ていた。

貴族の証とは魔力放出という事なのか。


この状態ではシャルの命も周囲の命も危険…だったんらしいが、それもすぐに解決した。


倒れた人を横目にシャルが居る部屋へと向かうと熱にうなされて俺を呼ぶシャルの側へ行った。

すると状況が変わった。


俺がシャルとの距離が近ければ近いほど魔力は弱まり、触れ合う距離であれば魔力の放出が無くなる事が分かったからだ。


俺はそれからシャルの精神安定剤ならぬ、魔力安定剤としてシャルの側に居る事が決まった。


魔法で熱を下げる事も可能らしいがシャルの膨大な魔力が防いでしまって効果が無いらしい。

その為、解熱剤を飲ませてゆっくりと寝かせて熱を下げる事にした。


館の者達は懸命にシャルの看病をしてくれた。

俺もシャルの手を繋いだり、頭を撫でたりと接触を多めにしながら見守った。

歌を歌った時は皆、ギョッとした表情でこちらを見たが気にせずに続けた。


俺が歌ったのは子守唄や童謡だ。

そんなに大きな声で歌っていないし、シャルを寝かせる為に歌ったのだが…この世界では子守唄が無いのだろうか?


ただ…ずっと側に付く事はできなかった。


俺は食事や排泄が必要無いからシャルの側を離れて生理的現象を解決するという事は無かったのだが…転移で離れてしまったのだ。


旅の途中でもシャルと話している時や前世の事を思い出した時にイメージした場所に飛んでしまいシャルと離れてしまう事はあった。


転移で離れてもすぐにシャルの事を思い飛んで戻った為、旅の途中は問題にならなかったが今は問題だ。


一瞬、そう一瞬だけ、俺が離れるとシャルの魔力放出が再開し館の者達は全滅、シャルの熱も上昇。

つまり踏んだり蹴ったりなのだ。


俺も考えないようにはしているのだが、人間何かを意識しないようにすると逆に意識してしまうもの。


ついついイメージして飛んでしまう。

その為、シャルの熱が長引いてしまった。

だが、それももうすぐ終わりだろう。


シャルも熱が下がり、今は微熱ほどだ。

意識も明白となり魔力のコントロールも良くなってきている。

俺が転移で数秒離れた程度では暴走はしなくなった。


これも館の者達が懸命にシャルを看病してくれたおかげだろう。


常に数人がシャルに付いて容態を確認し、薬や身の回りの世話をしてくれたから回復も早かったのだろう。


未だにローガンとやらには会って無いがアドルフや館の者には礼を言った。

シャルを看てくれて助かった。

俺だけではどうにもできなかったからな。


熱を出す前にシャルが話していた結界に付いてそれとなく聞いた。


…もし、病み上がりのシャルをどこかに連れて行くつもりならば此処を投げ出すつもりだったが代わりの者が現場に向かっているらしい。

なるほど、携帯のような物で連絡したのだろう。

化学とは別のチカラなれど、魔法もまた便利なチカラだな。


シャルが起きたらこの事を話してやろう。

これで少しは気が楽になるだろうからな。

今はシャルに休んでもらいたい。

今後の事も話さないといけないしな。




△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽




思わずため息が出てしまいます。

主人が居ない今、私がしっかりとしなければなりません。


革命軍。

話には聞いていました。

馬鹿な輩が集い、愚かな主張を掲げ、王国の破滅を望む集団。


まさか王族の分家、オータム家を襲うとは正気とは思えません。

結界は王城に連絡した為、他の分家か王族が向かうでしょう。


それでは次の課題を解決しましょうか。


シャルロット様の容態は回復傾向にあると薬師から報告はありました。


革命軍に襲われたオータム家の生き残り。


結界魔法の継承を成した国の盾となる者の1人。


そして、邪霊を食べてしまった呪われた者。


全てを知った上で主人はシャルロット様を見捨てないでしょう。

国の要人である限り、主人はシャルロット様を支え続けるでしょう。


しかし、シャルロット様と共に来られたキョーカはどうでしょうか?


今のシャルロット様の様子から心の支えになっているシャルロット様よりも幼い女児。


魔力を持たず故に魔法を使えない筈の者。


しかし、私は見てしまった。

彼女が消える瞬間を。


1度目はシャルロット様が結界の事を話した後、2度目以降はシャルロット様の看病の間に見てしまいました。


1度目は全身の色を変える、ギタイ。

シャルロット様に似た後は服を残して消えた為、魔法で視ましたが、キョーカ本人を見る事は出来ませんでした。

人が着ているように見える服の膨らみや体を預けているシャルロット様が居なければそこに居ると思えなかったでしょう。

いやはや、恐ろしい能力です。


私の魔法は魔法を見破る事に特化したもの。

魔法で姿を隠した訳ではありませんから私の魔法では視る事が出来なかったのでしょう。


探すだけならば探知系の魔法で見つける事も可能かとは思います。

主人ならば気配で察知するかもしれません。


2度目以降は思った場所へ飛ぶ、テンイ。

衣服だけがその場に落ち、キョーカ本人は消えてしまいます。

その時は…シャルロット様の魔力暴走で動けなくなってしまいましたがすぐにキョーカがシャルロット様の側に行き魔力暴走を止めてくれました。


ただ、裸で動き回るのはいけないと思っているのか首から下を消した状態で動き回るのは困りました。


いえ、裸で動き回るのも困りはしますが、生首だけが浮かんでいるようで心臓に悪いのです。


何名かその姿を見て失神してしまった者も居ると聞いています。

私も実際に見た時は咄嗟に懐の魔道具を投げてしまいそうでヒヤリとしました。


どちらも魔力を感じ取る事が出来ませんでした。


本人とシャルロット様の話を信じるならば遊戯神という神から加護を得た存在。


偶然にも火災に遭われたシャルロット様を救い、このローガーまで共に向かった方。


まるで御伽噺かのように思ってしまいます。


シャルロット様へ向けて詠唱をしたり、さらに彼女は食事や睡眠、排泄などをしている所を誰も見ていないという点は気になります。

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