g003;幻想郷へ。美鈴
暗黒のスキマ空間をくぐった。
そこは霧の広がる湿地帯だった。
……はるか向こう、彼方に何か建物が見える。
スキマ空間(空間の裂け目)から紫が顔を出して言う。
紫「
ここが幻想郷よ。
」
ノロ「
最寄りの観光地として、オススメ、ある?
」
とノロが聞くと、ニヤリと笑いつつ紫が答える。
紫「
この先に『紅魔館』という大屋敷があるわ。
かわいい吸血鬼が見られる観光スポットよ。
そこまで、丸一日はかかるけどね。
」
ノロ「
ああ、あの建物が。
」
視界不明瞭だが、何とか、見える。
紫「
いったいどんな目をしているの……?
(事前情報通りの化け物ね……)
」
ノロ「
視力0.01の目をしているのさ。
んじゃあ、あのコマ館? とか巡り見て、
記念撮影でもしきましょ。んじゃあ、どうも。
」
ノロは異空間からポラロイドカメラを取り出しながら、
湿地の景色を眺めて、歩を進めた。
紫「
ええ、お達者で~
」
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
おや……、何やら、もめ事が起きているぞ。
向こうの方に、二人の少女? が見える。
一人は、白と黒で彩られた、まさに魔女という風貌。なおかつホウキまで備えている。
もう一人は、日傘を持っている。こちらは白と赤の服。髪が緑なのが特徴か。そして気のせいか、その人の回りにだけ、花が舞っているような気がする。
その二人は、まるで殺し合うかのように、猛々しいバトルを繰り広げている。
ノロは、争い事に、極力、関わらないようにしている。
そのため、その戦闘地帯を迂回するように歩を進めていた。
――そのとき!
魔理沙「
いい加減にしろっ! もういいっ! やられろ! 【マスタースパーク】!!!
」
幽香「
あなたこそ、地獄で反省するといいわ。……【マスタースパーク】!
」
二人が、何か、極太ビーム状のエネルギーを放った。
キレイだな、と思っていたら!
ノロ「
あっ。
」
この極太ビームがぶつかり合うも、交ざり、軌道がおかしな方向へうねり、最後にはコチラに突っ込んできた。
もはや極太どころではない。言ってみりゃ、大津波ビームだ。
ノロ「
まあああああああぁぁぁ!!
」
ノロは、その大津波ビームに飲まれて、紅魔館の方まで流され、そして、激突!
あまりの衝撃に、建物が半壊してしまう。
ノロ「
おおうっ!!
」
ノロはガレキの中から、立ち上がる。
自らの服、作業着に付いているホコリを払う。
ノロ「
いやはや。ひどいモーニングコールを浴びせられた気分だ。この特別にあつらえた頑強作業着じゃなかったら、今頃、服が焼けて、素っ裸になってたよ、もうっ。
」
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
ノロは、崩れ落ちた紅魔館の壁を眺めていた。
ノロは、廃墟というものに、情味を感じる人間だ。
ノロ「
よし、撮影しよう。
」
と、ポラロイドカメラに手をかけたとき。
美鈴「
何者っ!?
」
と、そこに現れるは、緑を基調としたチャイナ服ドレスの少女。赤い長髪も特徴か。
(少女、少女、と、よく少女ばかり見かける。ここの平均寿命は短いのか~?)
ノロ「
あ、どうも。
」
と、気さくに声をかけるノロ。
美鈴「
怪しいやつ。侵入者には、容赦しませんよっ!
」
と、のっけから攻撃してくる、このチャイナさん。
ノロ「
なんで! なんで! なんでそんな、皆、攻撃ばっかなの!?
」
と、チャイナさんの飛び蹴りを受け流しながら、文句を言う。
美鈴「
ぬう。なかなかやりますね、あなた。
」
ノロ「
いやぁ! 私は、なかなかも何も、戦闘拒否したいんだけどね!?
ここらで、穏便に済まそうじゃないの? 無益な戦いさー?
」
美鈴「
そうは行きませんね。我が紅魔館を汚すものは、何人たりとも、
この紅美鈴が、追い返してみせます! たやぁぁァァ!
」
今度は回し蹴りだ。
すごいな。距離を取っていたはずなのに、どうなってるのか、
蹴りがここまで届くのだもの。
それだけでない!
――バゴホッ……!
このチャイナさん改め、美鈴さんの蹴りの風圧で、建物がまた余計に壊れたぞ。
美鈴「
…………。
あなた、よくもやりましたね!
」
ノロ「
まあーあ、責任転嫁は良くないなァ。
」
美鈴「
ふふっ。面白くなってきました。
あなた、相当の実力者ですね。
名を聞いてもよろしいですか?
」
ノロ「
面白くないんだけどなーっ!
観光地だと聞いてやってきたとに、何でしょう、この待遇!
ここは闘技場かぁ~。
」
美鈴「
なるほど。私程度では、名乗る名もないと。
」
ノロ「
いや! そんなこと言ってないでしょう。
名前ね、名前。名前は、ノロ。なんてことない、平凡な名さ。
」
美鈴「
ノロ……さんですか? 聞いたことがありませんね。
」
ノロ「
そりゃそうさ。だって私、有名人じゃないもの。
むしろ無名人を気取っていたい。
」
美鈴「
おしゃべりは、これまで。
さあ、戦いの続きをしましょうよ! ノロさんっ!
」
ノロ「
戦わなきゃ、ダメ? なんで~?
あんた、殴り合って痛い思いするの、好きかい?
私は嫌いだなぁ~
」
美鈴「
好敵手を見つけたとき、喜び勇んで戦いを挑むのは、
武道家として当然のこと。行きますよっ!!
」
ノロ「
だって私、武道家じゃないもん――わわわわっ!?
」
さらなる本気を出した美鈴の、目にも止まらぬ打撃。
速さだけではない。一撃一撃の重さも無視できない。
なおかつ、上体のみならず、下体への攻撃・防御もおろそかではない。
まさに、武道家としては、超一流だ。
美鈴「
くっ……(芯を、打てない……)
」
美鈴の打撃は、ほとんど全て、ノロに当たっている。
当たっているが、それは、受け止められているに近いものだった。
ダメージらしいダメージを、与えることができない。
ノロ「
あんた、門番だと思いきや、武術の達人じゃないの。
人は見た目によらないなぁ……
」
激しく動いているのに、息一つ乱れないノロは、余裕のある体で、会話する。
美鈴「
そういう……あなたこそ、……いったい何者――くっ!
」
美鈴の足がすくわれ、倒れる。
戦っている最中に、話している余裕はない。普通はそのはずだ。
追撃の、踏みつけ攻撃――を、美鈴は辛くもかわす。
ノロ「
おしいっ!
」
ゆらゆら揺れる身体で、立ち上がる美鈴。
美鈴「
ふう……ふう……
」
実はノロの動きは、どこまでも加速していた。
それに追いつこうと美鈴も、動作速度を上げるに上げる。
けれども……、実力以上にまで上げるなど、それはムリなこと。
そんなムリをすれば――
美鈴「
うう……ぐぐふぅ…………
」
美鈴、地に膝を付ける。
限界以上に力を出した美鈴は、
もはや立ち上がる力も残されてはいないようだ。
ノロ「
もう気が済んだろう。私は行くよ。
」
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■要約
・幻想郷へ入った。霧の広がる湿地帯だった。紫に観光地だと騙されて、紅魔館を目指す。
・幽香と魔理沙がバトルしている。二者のマスタースパークを合体させたものを、ノロと紅魔館が食らう。
・紅魔館の門番、紅美鈴が攻撃を仕掛けてきた。が、力尽きる。
◆難読注意。
東方キャラクタは、漢字の読みに注意が要ります。
紅美鈴 (おそらく中国読み)