16. 所変われば品変わる(22/12/19/改)
大きい画面でひらひらした服の女の子たちが戦っている。
正直「長い時間ただ映像を見るのは退屈なのでは?」と来る前は思ってた。
けど、そんな事は杞憂だった。
朝、レイカとテレビでアニメを見た時とは、また別の楽しさを感じる。
画面が大きかったり、音が大きいだけでこんなにも楽しさが違うんだと衝撃だった。
また、長い時間をふかふかの椅子が疲れさせない。
内容はもちろん面白かったし、キューティーミラクルたちが着ている衣装のデザインが魅力的で自分の創作意欲を刺激する。
久々の映画は色々発見できて、すごく楽しいものだった。
あっという間に1時間30分が過ぎ、僕の胸の中に高揚感が残った。
そんな温かい気持ちの中、暗かった館内は明るくなったので、荷物を持ってその場を後にする。
「久々の映画はどうでしたか?」
「なんだろう。すっごく楽しかったし、いろいろ勉強になった」
「でしょー!!」
ユイさんは嬉しそうだ。
そのあと、僕らはお互いの感想を述べながら映画館を後にした。
レイカの少女漫画を借りて読んだ時は、それで終わりだったから、こうやって、観たあとに自分の感想を共有するのは、新鮮ですごく楽しかった。
今度、レイカに漫画を借りて読んだら、感想を言ってみようかな?
そんな気持ちになった。
一通り、感想を言い合い落ち着いたところで、電源を消していた、スマホを起動すると、時間はもうお昼過ぎ。
「この後どうする?」
「もう一つ買ったチケットの上映までは、まだ時間があるので、お昼ご飯食べませんか?」
「そ、そうだね、何食べる?」
「そうですねぇ、少し近くを歩いて何か探しましょうか!」
僕たちは、映画館を背後に遠ざかり、大通りに向かった。
ただ、まだお昼時ということもあり、大通りに面したお店は人が多い。
なので、大通りから脇にそれ、路地裏をあみだくじのように進みながら、お店を探す。
池袋には打ち合わせでたまに来るがクライアントに言われるがままについていき、終わったら、俯いたまま、何処かへ寄る事もなく、駅へ直行していたので、気づくことがなかったが、
「あのアパレル店のマネキンの顔、なんか有名な人に似てません?」
「フフッ、このUFOキャッチャーに入ってるぬいぐるみ、変な顔ですね」
「今、美容室から出てきた、女性のインナーカラー、可愛いですね!」
など、ユイさんは気になるものに反応するので、そこに視線を向けると、確かに色々な感想が頭に浮かぶ。
正直、今までは、何度も歩いている道のため新鮮味が無かったけど、今日は、新しい事を知れて、いつもよりも、楽しい。
そんな事を思いながら、ユイさんの言葉に相槌を打っていると、とあるビルで立ち止まった。
ビルの前には、格子状に区画された看板があり、そこにハンバーガーやラーメン、うどん、焼肉、イタリアン、中華などの写真がレイアウトされている。
「ここのビル、飲食街ですね! ここで食べる物決めませんか?」
「そ、そうだね、、、」
「何食べたいですか?」
「うーん、僕はあんまり食にこだわりがないから、ユイさんが食べたいものを選んでいいよ」
「そうですねぇ……。では、中華にしましょう!」
ユイさんがサクッと入る飲食店を決めると、僕たちはビルへ入っていった。
中華がある階層にエスカレーターで上がり、お店を探していると
「あっ、お好み焼き屋さんですよ! ソースの良い香りがしますねぇ〜、美味しそうだけど、今は中華な口だから、我慢、、ぐぬぬぅ」
「あのパン屋さんで、お会計しているお姉さんのトレーに乗っているパンの見た目、可愛いですね!」
など、ユイさんは通りすぎるお店に反応していく。
普段の僕なら、気にも留めないが、ユイさんに言う事に意識を向けると、新たな発見がたくさんできる。
「中華を食べにお店を探す」という、なんら一般的な行動をしている中でも、視点を変えると新たな発見になるんだと、沸々実感する。
「経験」と聞くと、「大それたことをやらなきゃいけない」と思ってしまうが、些細な事をするだけでも、新たな発見ができるんだと僕は思った。
そうこうしているうちに、目的地である中華屋へ辿り着いた。
山椒の辛味を想像させる香りが僕らの鼻を通り過ぎる。
「いらっしょいませ、お二人ですか?」
「はい! 」
「では、こちらにどうぞ」
僕たちは席に案内されたので、荷物を置いて座る。
そして、机に置かれた、ランチメニューを覗き込む。
台湾ラーメン、麻婆豆腐、エビチリ、八宝菜、青椒肉絲など、中華の定番メニューがメイン皿である、ご飯、中華スープ、漬物がセットで、どれも850円(税込)。
「シュウさん、なんのセットにしますか? 私は油淋鶏にします!」
「じゃぁ、僕は、、、、、うーん………回鍋肉で」
「すみませーん! 注文お願いします!」
ユイさんが元気に店員さんを呼ぶと、それぞれのメニューを注文した。
注文中に二人でメニューを覗き込みながら、なんの中華が好きやら、これも美味しそうやら、なんて事ない話をしていたら、あっという間にメニューが届いた。
お互いの前に置かれた油淋鶏や回鍋肉からは、美味しそうな湯気が立つ。
「それじゃぁ、食べましょうか?」
「そうだね」
「「いただきます」」
このあと、僕らはランチを頬張りながら、先ほどの映画の感想などを話して時間を過ごし、次の映画を見て帰路に着いた。
2本目の映画ももちろん、面白かった。