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神隠しによる放浪記  作者: レブラン
第四章
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国内政策での得策とその行為

 曇り空もなく夜が更けた頃、ベルチェスティア王国には第二陣や第一陣が戻り終え、冒険者一行は報酬をもらい終えると解散をしていた。

 城下町内周辺や見張り塔には衛兵が見張交代をかけ、より警戒をしていた。

 そんな王城広間にはベランジェとフェス、それから複数の護衛兵士がその広間にいた。


「よく無事に戻ってきた。話は聞いている、呪い子が現れたとか」

「左様でございます陛下。私どもも戻る途中に呪い子のルルシともう一人のマグワイアの二名と遭遇しましたが撃退いたしました」

「流石はフェスだ。我が国随一の騎士と言いたい所だが、二名? その二名とも呪い子なのか?」

「否定しかねます。しかし、それに近い印象を受けましたが、実態は……」

「ふむ、それは一先ず置いておこう。それにしても呪い子が現れるとは予想だにしていなかった。たく、魔物の軍勢が来てこの忙しい時に」

「陛下、魔物の軍勢は来ないと思われます」

「何故来ないと言い切れる?」

「今回遭遇したマグワイア本人が魔物の軍勢が来ているとの偽の情報を流し。そして、出撃した所により呪い子によるテルヌス帝国側の実験とも言っておりました」

「実験とは、我が国の国力を図ろうとしたのか」

「多分、呪い子の力量である実践記録を取りたかったのかと。なにゆえ相手国でも久々の事でもあったからだと思われます」

「なるほど呪い子に関しては理解した。だが、本当に魔物の軍勢が攻め入って来ないという保証はあるのか? 実際その者の言葉を信じるに値できるとは思えないが」

「相手をした二名においては逃げられてしまいましたが別のなら」


 王城広間の扉が開く。

 扉の向こうにはホルズが三人の兵士を捕まえ連れて来ていた。

 その兵士達は鎧からしてベルチェスティア王国に仕えている兵士であると証明されている。


「どうやら証拠来たようです陛下」

「我が国の兵士ではないか、その者達はもしかして」

「左様、陛下の考えていらっしゃる通り、内通者と思わしき者達です。ホルズが独自調査して捕まえたとのことなので」

「この者達が……だが、どう言った経路で内通者としてやっていけたのか」

「今から話させます」


 一歩前へと出る兵士。

 どれも目は虚ろで、焦点はあってない。

 魔法により自決をされないための対策を施されていた。


「貴様の主人は誰だ。情報は誰からの指示で煽られたのだ」


 口元はしっかりと開き喋り始める。


「主人はプルート様。この城の情報をテルヌス帝国の間者に知らせよとのこと。それから入手した情報もプルート伯爵に逐一報告せよと」

「情報を知らせる事でプルート卿には何の得策があるのだ?」

「……」

「知らぬか」

「まあおおよそ、情報を流す代わりにテルヌス帝国の貴族としての地位の保証。残り二人も似たような偽情報を流したりとかだろうな」

「しかし陛下。不穏な動きはありましたが、プルート卿は元々この国の伯爵であり地位としても十分申し分なかったはずです」

「確かに、だけどそれを脅かす出来事があったとしたら?」

「……呪い子ですか……」

「その通り。元々は不穏な動きをしていると情報も入っていたし、呪い子の登場によって本格的にってわけだろうな」

「呪い子が本格的に表舞台に登場したら我が国じゃ勝てないと踏んでいるわけですか」

「そうだ、事実呪い子と対峙して壊滅的な被害を被ったのでな。だがそれによりこちらから手を付けずとも反王国派の大多数貴族達を削ぎ落とせたのは大きいが」

「顔がにやけていますよ陛下」


 ベルチェスティア王国での問題の多くは貴族に関する事ばかり。

 それ故に他国との戦争よりも国内での敵でのほうが厄介であり、ベランジェの悩まされる部分。

 ハイリスクハイリターンでもあるが、今回で国内問題の大部分を解消されたからかベランジェの口元がにやけていた。


「おっと、それは我が国のために死んでいった者に対して失礼だったな」


 咳ばらいをして、落ち着かせると視線を捕まっている兵士へと向ける。


「プルート卿には退場させる名目上の理由がようやく作れた。よくやったぞホルズ」

「陛下に忠誠を誓った身、陛下に付きまとう害虫の進行を付き止めたまでですよ」

「これで残りの問題はシュワルとフェルティ、そして呪い子の問題か」

「陛下、呪い子に関してなのですが重要なことがございます」

「なんだ」

「敵国側ではなく、我が国にも呪い子の存在は確認できました」


 フェスの発言に広間にいた全員に動揺が走る。

 何せこれまで敵国側に呪い子は見つかるが、自国内では見つかる事がなかったのだから。

 更には現状相手国の進行が進み始めている以上、早急に対応する必要もあったベランジェにおいてフェスが発見した呪い子はまさに千載一遇とも言えた。


「して、その呪い子は今どこに」

「現在、ハウリック卿の屋敷へと居ります」

「ハウリック卿? どうしてハウリック卿の屋敷なのだ」

「実は呪い子と言うのが、陛下が目をかけていたあのタクミと一緒に居た赤髪の女性であるリウスと判明しました」

「なるほどあの娘が……なら今すぐにでも連れてまいれ!」

「陛下、今まで隠し通していた存在。迂闊に近づけば察知され逃れられてしまいましょう。それに明日、向こうから説明しに来られます」

「それは本当か? だが、現れない可能性があるかもしれないが」

「いえ、それは有り得ないと思われます。明日王城へと来るでしょう」

「フェスにそこまで言わせるほどにあの者は信頼を置かせたのか。わかったその件に関しては置いておこう……それよりもフィティア」

「ここに」


 ベランジェの目の前に突如現れたフィティア。

 事前に知らされているかのような対応で登場する。


「シュワルはどうしている」

「シュワル様は現在王宮の研究室におります。なお接触し怪しい動きをする者はいませんでした」

「バレて動くことが難しいという可能性は?」

「多分、それはないかと。我々も隠密に長けていますのでシュワル様でさえ気づかないと思われます」


 ベランジェは顎を撫でると広間の人物を観察するように視線を見回す。

 そして考え込むように腕を組む。


「シュワルに関しては、近日中には必ず動くはずだ。だが先に、フィティアには別任務をもしてもらわないといけない事がある」


 顔は自信のある表情で前を向く。

 手には手紙を差し出していた。

 今回のを予知していたかのように。


「プルート卿には我が城へと招き入れないといけないからな」

「畏まりました。では」


 手紙を受け取ると、何かを唱え目の前に現れた様に目の前から突如姿を去る。

 その動きは洗礼された忍者のようであり広間からの気配も完全に消した。


「さて、残りの連中も追い込みもしなければならんな」

「そうですね陛下」

「しかしこれほど内政だけではなく外政をも覆すとは、全く呪い子とは脅威だ」

「脅威と言いつつも全く恐れを抱いているような顔には見えませんがね」


 ベランジェは何かよからぬ企みをしている様な顔をしていた。

 そんな同時刻ヘルデウスの屋敷に戻っていた巧達。

 部屋のベッドに座り、巧は考え事にふけっていたその時、部屋のドアがノックされる。


「タクミ」

「シロか、入っていいよ」


 入室したシロは何かを思い詰めた表情をしていた。


「あれから考えていたの……」

「何がだ?」

「あのねタクミ。これまでの事を忘れて私と一緒に……一緒に逃げましょう」

もうちょいベランジェの鋭い考察をすればよかったかなって思いましたが

まあ展開的にはとりあえずはこんな感じで

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