新たなる刺客
報告後、すぐ第二陣へと合流し援護を行うようフェスに要望する冒険者は多数いた。
「俺達がすぐ向かって応戦すれば呪い子だろうが倒せるんじゃ」
「心配する理由もわからなくもない。だが、今は休息を努めるのが先決」
「なんでだよ! 俺達はもう逃げねえ、そうだろ皆!」
「そうだ!」
多くの者が賛同する。
それは集団的意識によるものなのか、やる気に満ちて興奮が高まっていた。
「貴公等の勇気しかと受け止めた。だが、今向かう選択はただの愚行。仮に向かうとしても、合流するのは数時間後。いざ合流しても疲労困憊状態では戦闘処ではない」
ぐうの音も出ないのか、反論はでず冒険者達は苦い顔をする。
そんな中、巧は手をあげた。
「フェスさん、質問いいですか?」
「ああ、構わない」
「本当に呪い子が第二陣営を襲ったのでしょうか? 他に敵の数は、詳しく知りたいです」
「その事についてはこちらの者のほうが詳しいので、今から説明してもらう」
王国から派遣された兵士の一人と思われる人物が前に出る。
「確認できた敵は二人、ローブを羽織って顔は見えていない。一人は何もせず傍観者であったが、もう一人は“土魔法”を使用していた」
「土魔法……」
「そうだ、空も暗くなり我々は休憩をしていると急に地面が揺れた。次の瞬間、地鳴りとともに大地の陥没や盛り上がりなどが起こり、そして……」
歯を食いしばり悔しそうな顔つきになる。
「そして、我々を飲み込んだ。その時の被害は尋常じゃなかったと思う」
「思う?」
「何せ急すぎるものだったので、空も暗くどうしても後手に回らなければならなかった」
「なるほど、けどそんな中どうしてあなただけ来れたのですか? 他の人は」
「合流するために他も一緒に飛び出したが、他は……何せ相手が相手。俺一人でも伝えれただけ運が良かったとしか」
「この第一陣も含め第二陣には緊急対処はしているだろう」
「緊急対処?」
「もし第一陣、第二陣に何かしらの原因で壊滅的な被害に陥れば他陣営含め王国への緊急通達と帰還と言うものだ」
「それだと下手したら敵も一緒に連れて帰るんじゃ」
「あらかじめランクの高い者がその第二陣に配置させている。その者達が時間を稼いでいるはず。だが……」
「魔物ならまだしも、呪い子だとは予想できなかったわけですか」
「そうだ、流石に想定外すぎたのでな」
巧はルベスサから呪い子に関して聞いた事を思い出していた。
異常なほどの戦力差、それが戦場になると甚大的な被害がでるのは容易に想像がつく。
だが、問題はそれ以外にも存在した。
「現状は前方は魔物軍勢の進行。後方では呪い子か……まさに背水の陣だな」
「タクミ、背水の陣って?」
「ああ、簡単に言えば後にも引けず前にも進む事が困難な状態の事かな。まあ、どちらか一点突破しかないけどね」
留まっていようがいずれは全滅必至。
王国へと戻るために途中強者との戦闘、魔物の軍勢との戦闘である二者択一。
そんな中でのフェスの決断は――――。
雨が上がり夜が明け、数時間が経過。
第一陣営は王国へと引き返すため歩いていた。
時間が経つにつれ周囲の風景が荒々しくなり、所々で激しい戦闘の跡が見受けられた。
冒険者達は昨夜とは違い、誰しも覚悟のある真剣な面持ちで前を向いていた。
「ずいぶん激しかったようね」
「まあ、相手が相手だ。こうなるのもしょうがないさ」
「タクミ……」
「心配すんなってリウス。何とかするから」
「タクミ、お前の言った通り、今回もあいつ等同様に探知できる奴はいるのか?」
「ああ、きっといると思う。特に今回は二人と言っていただろ? テルヌス帝国関係者の可能性も否定はできない」
「だとしたら、やっぱり目的はリウス……なのか?」
「それはわからない。だが前回俺達はウエルスとの戦闘での一件以来、リウスの存在が向こうに知られたのもあるから何とも言えない」
「つまりこれだけの規模はリウス一人の為に行われたかもしれないって事なのか」
「私の所為で……」
杖魔祖を強く握り絞め、思いつめる様にうつむく。
「待て待て、知られたには知られただろうが。まだ決まったようなもんじゃないって」
「だけど……」
《全体止まれ!》
先頭付近に突如、地面が盛り上がる。
中から二人の人物が出てくる。
「へえー、自信作だったんだけど、あれを倒すなんてね」
「誰だ!」
「おっと、失礼。師匠にも挨拶はしろって言われてたんだっけか、忘れてたよ」
二人はフードをとると、青年であった。
一人は灰色掛かった白髪、もう一人は黄色い髪色の青年どちらも顔つきから年齢も若いと判断する事ができる。
「初めましてベルチェスティア王国の皆々様。僕はマグワイア、こっちはルルシ。テルヌス帝国からの使者であり、勝手ながらあんた達を殺しにきたよ」
「貴公等の事は聞いている。そちらの黄色い髪の少年が呪い子だな」
「それがどうした? どうせあんたも含めここで死ぬんだからさ!」
マグワイアは手をあげると、合図だからか突如周囲至る所に地面の中から人間の様な生物が這い出てくる。
這い出てきた生物はどれも生気はなく、まるでゾンビの様であった。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 俺は、俺は連れてきてくれたら助けてくれるんだろ? な、そう約束したよな」
第二陣から緊急連絡役として送られてきた兵士がマグワイアとルルシに対して訴えを始めた。
自ら裏切りをすることにより、命を助け敵に引き渡す仲介役として、第一陣を連れて来たのだ。
「そうだねー、確かに連れて来たようだしルルシはどう思う?」
「……」
マグワイアはルルシに話しかけるが、返事も表情の変化もない。
気にする事もなくそれが当たり前の様に、納得したような顔をすると笑顔になる。
「もうあんたに用はないし死んでいいってよ。それより、そんなバカでかい大剣を担いでるあんたが、向こうの大将でフェスって人かな?」
フェスは大剣を手にし、走り出していた。
飛び出てくる敵、進行を妨害する敵を薙ぎ払うように進み、マグワイアとルルシに突撃をかける。
「あららー、こっちの質問には答えちゃくれないのね。ルルシやっちゃっていいよ」
ルルシは手を向けると、地面が十メートルとなる高まで山の様に盛り上がり、勢いよくフェスも含め他冒険者達を襲う。
まさに大地の津波とも言える光景であり、巻き込まれてしまえばひとたまりもない状況。
そんな中フェスは、大地の津波に向かい走り続けていた。
「あぶねえ!」
誰しもフェスの行為を無謀としか思えていなかった。
だが、フェスは大地の津波に近づくと、大剣を地面に突き刺し勢いよく振り上げた。
大地の津波は勢いが止まり、斬られた部分からヒビが入り音を立てて崩れ去る。
砂埃が立ち込め、フェスの姿は見当たらない。
「へえー、やるね。あれを崩すなんて、けどまだ死んでないんでしょ?」
砂埃が晴れ、フェスが相手を見上げるように立ちすくんでいた。
「嘘……だろ……」
冒険者一同は目の前に起きた光景に唖然とする。
一見何事もないかのように見えるが、フェスの体中は傷だらけ。
瓦礫がフェスの体に当たった感じではなく、刃物で切り刻んだといった感じであった。
「あの壁を壊しても視覚を封じて攻撃してくる二段構えとはな。やはり呪い子。久々であったが油断ならんか……」
「流石だね。あの人があんたを高く評価していただけの事はあったよ」
「あの人?」
「そ、昔この国との戦争が起きた時、あんたと戦ったとか言ってたっけか」
「何の話だ」
「んー、ならこう言ったほうがいいのかな? “災厄の魔女”と」
フェスの表情は強張る。
マグワイアの言葉に何かを思い出したのか、出血も気にする様子もなく大剣を向けた。
「あれは私が殺したはずだ!」
「生きているわけがないって? まっ普通はそう思うよな。だが、実際は死んでいなかった」
揺らいでいるのかフェスは足を一歩後ろへと下がる。
「まさか、本当に生きているのか?」
「だーかーらー言ってるじゃん」
「貴公等の目的はなんだ。何故ベルチェスティア王国に仇なす」
「そうだね、一言でいえば。第一にルルシの実験。そして第二に我々テルヌス帝国はあなた方ベルチェスティア王国に宣戦布告をしにきたって所かな」
もう少し戦闘描写の表現をどうにかできればなあ・・・




