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神隠しによる放浪記  作者: レブラン
第四章
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不死者ゴブリンゾンビと対決

 ゴブリンゾンビは切り離された部分を重ねると、徐々に傷口が閉じていく。

 そんな様子を目の当たりにした冒険者達は誰しもが絶望の表情を見せていた。


「そ、そんな……倒せたんじゃねえのかよ……」


 そんな言葉を吐くのも無理はなく、それを否定しとがめる者もいなかった。

 希望から絶望と言う名の崖へと叩き落されたような思いなのだから。


「ギギギ、ギュアアアアァァァァアア!」


 ゴブリンゾンビの叫び、その叫びが周囲に渡り恐怖を支配するかのような雄叫びをあげた。

 誰一人動く事ができない状態。誰しも目の前の死と言う絶対的絶望に身をすくませる。

 数人(・・)を除いては。


「水ビーム!」


 水の圧力による噴出はゴブリンゾンビの腕に当たると、貫通し腕は吹き飛ぶ。

 恐怖で怯え絶望していた冒険者一同はゴブリンゾンビに水ビームを撃った人物に注目した。

 巧の表情は未だ諦めていなかった。


「ギギ!」


 ゴブリンゾンビは無くなった腕の部分を振るわすと、付け根から肉の様な塊が生え始め、次第に腕の形に変貌し始める。


「うわっ、そんな感じで腕生やすって、気持ちわる」

「お、おいお前」

「俺か? どうした?」

「お前もさっき見てたろ、あんな化物を!」

「ああ、見てたけどそれで?」

「それでって……それでお前は怖くねえのか?」


 疑問に思われてもしょうがない状況であった。

 何せ対峙している相手は不死身の魔物。

 どれだけ攻撃しようが一切効いていないのだから。


「怖いか怖くないかと言えば怖いさ。だけど、こういった経験は何度かあったし。それに策もないわけではないさ」


 ゴブリンゾンビの腕が完全に復元すると巧へと視線を向けた。


「って、もう復活かよ」

「ギギギ、ギギギギギ!」


 復活した腕で地面を巧をつかもうと迫る。

 その動きや素早く、巧はギリギリの所でかわしたため、ゴブリンゾンビの手は空を切る。


「っと! 危ねえ……お前等、俺がこいつを吹っ飛ばすから、そこで気絶してるドルアガ運んで逃げてほしい」

「吹っ飛ばすってどうやって」


 ゴブリンゾンビは再度、巧を襲おうと掴みにかかる。


「素早い上にしつこい、武器変化水“ハンマー”!」


 巧の両手に巨大な水のハンマーが現れた。

 その大きさやヘッド部分が直径にして五メートル。

 この世界の通常の武器ハンマーは最大でも二メートルほどで、愛用はされにくい。

 その理由はいたってシンプル、“重い”からであった。

 威力としては絶大だが、大きければ大きいほど扱いも難しく重い。

 そうとわかれば、巧がどれほど巨大なハンマーを出したのか自ずと理解できる。

 それほど突如出現した巨大ハンマーに驚きを隠せない冒険者達。


「吹き……飛べ!」


 水ハンマーをゴブリンゾンビへと当て、叩き飛ばした。

 当たった反動かゴブリンゾンビは空中を大きく弧を描くように、数十メートル先へと落下する。


「よし、それじゃお前等頼むな」

「お前はいったい……いや聞かない事にするよ。それよりもドルアガは任せろ」


 その言葉を聞くと頷き、ゴブリンゾンビへと走り出す。

 後ろ姿を見送る冒険者達、その期待を乗せて。


「あいつなら……」

「やはり思惑通り只者ではなかったか」

「あんたは!」


 冒険者達の目の前に現れたのは軍馬に乗っていたフェスである。


「何であんたは参加しなかった! 俺達はあんな化物が現れるなんて聞いてなかったぞ!」

「私はこの討伐が開始される前に貴公等に申したであろう、『参加しない者は辞退を申し出よ』と」


 フェスの言葉に反論をあげる者はその場にいなかった。

 更に追い打ちをかける様に続ける。


「それをせず参加し、いざ自分の危険が及ぶと自分可愛さあまりに他の者に任せ保身に走る。これが貴公等冒険者と言うものなのか?」

「くっ!」

「これ以上話をしても議論の余地はなかろう。私は行かせてもらうぞ」

「……どこに」

「勿論あの男、ヤマウチタクミの所へだ。貴公等もどう選択するかは任せよう」


 ゴブリンゾンビの叫びと轟音が響き渡る。

 周囲は薄暗く見えにくくても未だに戦闘は続いている事がわかる。

 フェスは冒険者達を置き去りにし、すぐさま巧の所へと向かうのであった。



シロ達を登場させるか迷いましたが、まだ出さないことにしました。

次回は。

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