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神隠しによる放浪記  作者: レブラン
第四章
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惨劇

「あれが飛来してきた魔物……大きいな」


 戻る途中、巧は立ち止まると冒険者達と飛来してきた巨大な魔物との戦闘を眺め見た。

 魔物に攻撃されたのか、周囲には数人の冒険者が倒されていたのが確認できる。

 どれもが首や胴体が離れ、即死なのが誰の目から見ても明らか。そのせいか、誰しも顔が強張る表情を向け魔物に対峙していた。


 魔物は一匹だけで他には見当たらない。

 ゴブリンの様な顔立ちだが、通常のゴブリンと比べると遥かに巨大で巨体。手に持っていた石の巨斧を振りかざし冒険者達へと攻撃を行おうとしていた。


「どけ! 俺様が止める!」


 最前線で戦闘を行っていた冒険者の一人、ドルアガも持っていた巨斧で止める様にぶつけ、鈍い音と共に互いの斧は弾かれる。


「くっそ重てえなあ! だが手前等今だ、やれ!」


 ドルアガが叫ぶと、冒険者達は魔物の体に剣は切り裂き、斧は叩き付け、槍は突き刺す。

 総攻撃に耐え切れなくなった魔物は膝が地面に付きバランスを崩した。

 それでも再び腕を振るおうとした瞬間、複数の矢が突き刺さり、武器を持っているほうの腕や腹に魔法が当たり弾け飛ぶ。


「ギギギ、ギュルアアアァァァアアァァ……」


 魔物は怒り狂ったように叫ぶと倒れ、次第に動かなくなった。


「倒した……勝ったのか?」

「ああ、俺達は勝ったぞ!」


 恐怖からの解放または倒した喜びからか、歓喜の叫びが周囲を響き渡らせた。

 そんな中、巧は地面に座り込んでいたドルアガに近づく。


「ドルアガ」

「遅かったな。こいつはもう倒した。お前の出番はなかったがな」

「ああ、そうだな。だけどすげえなこれを止めたなんて」

「はんっ! 大した事なかったがな!」

「それでもすまんな、俺がもっと早く来れればもう少しはマシな状況になれたかもしれないのに」

「何言ってんだ手前は、こいつらが弱いから遅かれ早かれどの道死んでただけだ」

「……そうか……」


 巧は倒された魔物を一瞥した。

 腕はもがれ無くなり横腹には大穴が開き、誰の目から見ても魔物は死亡していると明らか。

 だが巧には未だこの魔物に対して違和感を感じていた。

 それは今までの様に悪い予感、つまり“直感”とも言えるだろう。

 この魔物に“まだ近づいてはならない”と言う不安感を。


「こいつも、よく一匹で俺達の前に現れたな」

「ああ、強かったが流石にこれだけの冒険者がいるんだ。無謀にもほどがあるってもんだよな」


 倒された魔物の近くに二人の冒険者が近づく。

 すると、その内の一人が魔物の体を足で揺らす。


「まあ、これに懲りたら人間様を舐めんな」

「お、おい止めとけよ」

「心配すんなって、こいつはもう死んでるって」


 何度か揺らしていくうちに魔物の指が反応し、動いている事に気づいていない。


「ドルアガ」

「ああ? 何だよ」

「すまん!」

「何言ってん……だあ!?」


 巧はドルアガの体を引っ張り魔物から遠ざけさせた。


「何で急に引っ張てんだ」

「悪いな、こうしないとあいつと同じようにお前も捕まってたからさ」

「捕まるって何言って……おい、何だあれは! 何で起き上がってんだ!」


 ドルアガは目の前の光景に驚愕する。

 そう、先ほど倒したであろう魔物が起き上がり、生きていたという事実。

 それだけではなく、魔法で弾け飛んだ体の穴は徐々に塞がれ、腕は生えて復活。

 先程まで魔物を踏んでいた冒険者が捕まっていた。


「い、嫌だ! た、助け、死にたく……が、があああぁぁぁあああぁぁ!」


 強く握り絞められたからか、骨がいくつか折れる音が周囲に鳴り響く。

 もう片方の腕で近くにいた冒険者の一人を鷲掴みにすると、鈍い音と共に骨が潰れ内臓が破裂したのか吐血する。


「ヒ、ヒイイィィィ!」


 そんな光景を見た冒険者達から、恐怖からか悲鳴の声があがる。


「ギ、ギギ、ギギギギ、ギュゲゲゲゲゲ!」


 冒険者達を尻目に、魔物は死肉となり果てた冒険者をむしゃぶりつく様に喰らう。

 先程まで、この魔物を倒したものだと意気込んでいた冒険者達は恐怖からか顔が歪む。


「くそが、タクミどけ! 俺様が倒す!」

「ドルアガ!」


 魔物は武器を持っておらず食事に夢中なため、非常に有利な状態であった。

 再び倒すチャンスは今しかないとわかっていたからか、ドルアガは飛び出す。


「うおおおおおおお! 【地烈打ちれつだ】!」


 それは魔物にかけての一撃。

 傍から見れば、斧をただの振り下ろした様にしか見えないが、その一撃は固い鎧をも綺麗に叩き斬れる技とも言える。

 ただし、刃こぼれがひどくなるという諸刃の剣であった。


「どうだ!」


 ドルアガに叩き割られた魔物は地面に倒れ伏す。

 そんな状況を、先ほどまで恐怖で歪んでいた冒険者達は再度歓喜の声をあげる。

 今度こそ倒したんだと……だがそれは一時的な幻想だとすぐに思い知らされる事になった。


「なっ!」


 倒れた魔物がドルアガを叩き飛ばしたのだった。

 魔物は起き上がると、体を引っ付かせ元の状態に戻そうとしていた。

 そんな状況に冒険者達は再び恐怖で顔が歪む。


「何で……まさか、再生能力持ち? けどこれは……」


 再生能力持ちとは異なっていると感じた巧は魔物に対して能力の確認を行う。


名前:ゴブリンゾンビ

年齢:0歳

性別:不明

種族:アンデッド

レベル:40

状態:増腐ぞうふ


 割られようが、生命活動終了させようと攻撃しても、復活する死者(ゾンビ)となり果てていたからであった。


シロ達も戦わせるか迷いましたが出さないことに

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