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神隠しによる放浪記  作者: レブラン
第四章
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襲撃後による互いの確認と対話

 襲撃から数時間が経過。

 あれ以降、第一陣は魔物の襲撃を受けずにいた。

 それから間もなく日が落ち、より一層薄暗く周囲に闇が覆う。

 動く事が困難かつ危険なのを熟知していたためテントを張り、各冒険者パーティーは見張りを交代しつつ朝を迎えるのを待つ。

 そのテントの一つに巧は向かっていた。

 他のテントよりも中は広く、優に十人以上は楽に入るであろう大きさ。

 その中にフェスと王国から選抜し派遣されたであろう兵士数名が鎮座ちんざする。

 兵士達の中央にフェスが座り、巧を待っていた。


「それで私に何用でしょうか」


 巧はフェスと対面するように座ると周囲を見渡す。

 布とはいえ出入口は一つの密室空間。更には人数の多さ、もしもの時の逃走は巧が圧倒的不利である。

 更にどの兵士と対決したとしても一筋縄ではいかないだろうと予想された。

 そんな兵士達も巧が現れると場の空気に緊張が走るのを巧は感じ取っていた。


「そんなに緊張しないでくれ。この者達は私の護衛の役割も兼ねているのでな、貴公の事はちゃんと伝えている」

「そうですか、このテントに入ってからこれだけの人数が居た事に驚いてしまいました」

「そうか、それはすまなかったな。早速で悪いが貴公の意見を伺いたいと思う」

「意見とは?」

「今回襲撃の件について、どう思ったのか述べてほしい」

「それなら私の様な意見よりも、他の経験豊富な冒険者のほうが良いのではないでしょうか」

「確かに他の冒険者達に意見を聞くのもまた一つ。だが今現在この私、フェス・ミラベルトが問うのはヤマウチ・タクミ、貴公の意見なのだ」


 逃げ道はないと判断すると、巧はため息をつき諦めたような表情を向けた。


「わかりました……。そうですね、今回の戦闘で考えられた点は三つほど」

「ほう」

「第一に雨を降ってからの奇襲。これは天気が良い時に視野に入った魔物達は私達冒険者一向に恐れ、逃げ出す。これを見れば雨の日であろうが関係ないかと」

「しかし、今回は雨が降ってても逃げ出さず襲撃に来たのは事実だがそこの所はどうなのだ?」

「ええ、その点にも踏まえあの多さ。予想し行動すると言った事……そしてあれだけの魔物の集団行動。不思議に思いませんか? 色は違えど何故ゴブリンなのかと」

「確かに、ゴブリンは数匹での行動ならするとは聞いた事あるが、あそこまでの多さで行動とは異常ではあった」

「あの程度のゴブリンならこの数の冒険者で一掃できるはず、だったのですがそれもできていない。となると」

「集団をまとめ上げ、更には判断のできる優秀なゴブリンがいたとも考えられる……か」


 フェスは顎を撫で考え込むが巧は気にせず次へと話を進ませる。


「そうなる可能性の一つと考えられますが」

「他にあると言うのか?」

「ええ、しかしまだ確認したい事があるので続けます。第二に撤退した時の魔物の行動、足を切られていようが手を切られていようが気にせず撤退を優先する様子でした」

「痛みを感じないと? まさか再生能力持ちの集団」

「いえ、それは考えられないかと思われます」

「再生能力持ちではないと、その根拠を聞かせてもらおうか」

「まず、あの場で陛下とフェスさんにお話しましたが再生持ちの魔物との対峙。その魔物をいくら傷つけようが再生すると」

「そのように聞いたが、それが今回の魔物は違うと?」

「あの時、私が見た限りでは斬られても即座に再生。そして反撃も余裕でできていました」

「ふむ」

「しかし、今回のゴブリンは頭や心臓部分に貫通すれば動かず死に絶えました。核などがあればまだしも、あれを見る限りそうではないかと。この点からしても再生持ちは省かれるでしょう」

「なるほど、して三つ目はどのようなのだ?」

「そうですね、まずは先に質問であり確認なのですが。ゴブリンと言うと、緑色ばかりと聞きましたが他ゴブリンに色があるという事例は?」

「色についてならゴブリン共は緑が共通と聞く。他の特色は聞いた事がないな」

「となると攻撃を受けようが、これだけの冒険者を相手に怯まず突き進む。そして攻撃を受ける……弱くても武器は持てます。そしてその恐怖心がないとなると……」

「死をも恐れぬ兵士の完成……つまりは洗脳か」

「可能性は否定できませんが、もう一つあるとすれば改造。つまりは“人為的変化”をさせられたかと」


 人為的変化と言う言葉が出た瞬間、兵士達の雰囲気からして更に一層緊張が醸し出される。


「警戒するでない! この者に対して失礼であろう!」

「はっ!」


 変化を察知したのか、フェスの一声で場の空気が元に戻る。

 その様子からして、何か重要な情報があったと考えられた。

 この時の巧は安易に考えていた事を喋っただけで、さほど深入りするつもりはなく聞くことも考えてはいなかった。だが、無視をできるほどの状態ではいと理解する。


「この者達が貴公に対した無礼を詫びよう」

「いえ、私も何かまずい事を言ったようで申し訳ありませんでした」

「すまない、続けてくれ」

「はい。つまり、誰かがゴブリンを改造、改変、変異させた可能性があります」


 だがそれは非効率的すぎると言えた。

 しかし、あれだけの数を相手になると誰かしらの介入がなかったとは言いにくかったのであった。


「優秀なゴブリン、これを現場隊長とし、そして死ぬ恐怖がない部下を連れて戦場へ。もしかしたら指揮官はそのゴブリンを命令して私達に会わせた可能性もあります」

「私達の戦力を知るためか」

「真実はわかりませんが…………うおっ!」

「こ、これは地揺れ!」


 突如地面が揺れたと同時に轟音が鳴り響く。

 すると一人の護衛兵が息を荒げてテントに入ってくる。


「フェス将軍、大変です!」

「何事か!」

「突如上空から巨大な魔物と思わしき物が飛来」

「巨大な魔物? その魔物でこの地揺れを起こしたのか。して、その巨大な魔物とはどのようなものだ」

「多分サイクロプスに似たようなものでしたが体格は違いました」

「……わかった、兎に角お前達はその巨大な魔物に怪我をした冒険者はいるかどうかの捜索せよ」

「はっ!」

「タクミ、すまぬな。話はまた」

「畏まりました。私も一刻も早く仲間の所に行き無事を確認しに行きます」


 フェスは頷くと巧は急いでテントを飛び出した。

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