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神隠しによる放浪記  作者: レブラン
第四章
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進行途中と揉め事

今回も戦闘なし

 城下町を出発してから数時間が経過。

 現在冒険者による三つの軍勢に別れ、魔物の軍勢の迎撃の為に進行中であった。

 一つ目が先行部隊である第一陣、二つ目が第二陣は第一陣の出撃後に時間差で進撃する後発部隊、三つ目は城下町を守る防衛部隊となっている。

 その先行部隊の第一陣に巧達は居た。

 他に冒険者達や貴族などで数十人、それに対して馬車は十と少ない。

 だが、その代わりに馬車の中は大量の回復薬や食料、寝床品に捕獲縄ほかくなわなど、今回の討伐に必要な物が詰め込まれている。

 なにせ三日以内に魔物の大群に出くわす事になるとは言え、最低一、二日以上は歩くことを想定すると休憩する必要も出てくるのだ。

 全員が全員馬車に乗れないため、大名行列の様に進んでいた。


「結構時間経ってるけど魔物との戦闘はないな」

「確かに、旅をすれば大体魔物に遭遇するが、今の所戦闘が行ったって感じはねえな。警戒はしてるが」

「まあけど、実際魔物がいてもあんな感じで逃げ出すし、来る魔物なんていないか」


 巧の指さす方向に魔物の群れはいた。

 だが魔物の群れは大量の冒険者の気配を察知するや否や、一目散に逃げ出す。

 これが低ランクの冒険者ならまだしも、実力は様々だがそれでもある程度ランクの高い冒険者達なのだ。

 自殺志願者の様に無謀にも飛び込んでくる魔物はそうそういない。


「それにしても暇だな」


 ハリトラスはそう言いながら眠そうに欠伸をした。


「確かに暇だけど、下手に魔物が突っ込んで来て怪我人がでるかもしれないからさ」

「そうね、怪我して進行が止まったら邪魔よね」

「そう言うなってシロ。戦闘で怪我をしたらしょうがないし、それにその為に回復薬も積まれてるようなもんだしさ」

「そうね、邪魔とは言っても囮役にはいいかしら」

「おいおい……」

「わ、私は! タクミの言う通り、皆怪我しちゃったら大変だから……戦闘にならないほうが……」

「そうだな、確かにリウスの言ったように戦闘なると無駄に被害が出るし、しないに越したことないしな」


 実際は回復薬はそこそこあるのだが、それでも消耗品故に数に限りがある。

 回復職はいるが人数は少ないため、いざ戦闘になった際に確実に人手不足になるのは必至。

 回復薬はそれまで温存しておいたほうが得策なのだ。

 そんな雑談をしているうちに、前のほうで馬車が止まるのに気が付く。


「魔物か!?」


 緊張感が走るが、それが違う事だとすぐにわかる。


《今から昼食に移る! 食料は馬車に積んでいる為、各々食事をとるように!》


 フェスは巧達の近くにいないが、声だけは各冒険者達に響き伝わる。

 それは出撃する前に広場にいた大勢の冒険者達に声が届くようにする連絡用魔法であった。


「もう昼か、腹減ってきたな」


 巧は時間を確認すると、一二時を過ぎていた事に気が付く。


「時間の調整も隊長の仕事のうちってか、それじゃ食べ物取りに行ってくるよ」

「いや、タクミはここで待っててくれ。流石にお前一人じゃ持ちきれないだろうから、俺が行くよ」

「そうか? インベントリもあるし大丈夫なんだけど……。まあ、その厚意ありがたく受け取る事にするよ。頼むわ」

「ああ、任せろ」


 ハリトラスは嬉しそうな顔をすると食料が入っている馬車の方へと向かい歩いて行く。

 食料や回復薬は貴重な為、中央や、やや後ろよりに馬車は存在していた。

 戦闘になると馬車の破壊は戦況、戦場ともに急所となるので後方へと下がらせる事で馬車の安全を確保する事ができる仕組み。


「嬉しそうな顔だったわね」

「余程頼まれるのがうれしかったのかな? まあ今までの事を考えればわからなくもないが」


 ハウリック邸での出来事、岩人形での出来事など、そこまで活躍できてなかったことに対して後ろめたさがあるのだろうと巧は思った。


「あの男はいないようだな」

「ん?」


 声に振り返ると一人の冒険者が巧達に近づいていた。


「何の用? てか誰?」

「俺はイッスって名前だ! あの時はドルアガに邪魔されたけど今は周りにいない。俺はお前が参加する事に気に入らねえんだ! それにあの時の俺によくも屈辱を!」


 出撃する前に巧に絡んできた冒険者であった。


「いや、あんな下らない事してたらあいつ怒るわな。それに自業自得じゃん?」

「うるせえ! あの時はドルアガが邪魔しなければ! それにリーダーのあの男がいねえし、そこの女達もどうせ弱いだろから、そいつ等といるより俺の女にしてやろうか?」


 イッスと同じように納得していない様な視線が複数、巧達に向けられていた。

 巧達の実力が知らないのか、どの冒険者達も巧達をランク相応だと舐めてかかっている。


「やっぱここで実力見せた方がいいのかねえ……」

「タクミ、ここは私に任せて」

「シロ……大丈夫か?」

「ええ、私達はそう見えてもしょうがないけど。それに……さっきからタクミが馬鹿にされるのは許さないしね……」


 殺気を放つシロ。

 そのせいか、遠くの馬車の馬、魔物、敏感に察知した冒険者が慌てふためく。


「ストップ、ストップ! 殺気抑えてくれシロ!」

「そうね、これぐらいで恐れているようじゃこの先、生き残れないものね」


 殺気はすぐに収まったが、周囲の冒険者達全員の表情は強張っていた。


「とりあえずさ、これでもやる? って、こいつ本当にランク六の冒険者か?」


 イッスは白目を向き気絶。

 その周囲の冒険者達も巧達から視線を逸らす。


《昼食を中断し戦闘準備をして待機せよ!》


 そんな言葉が響くと、遠くから馬の足音が巧達の方向へと近づく気配が複数。



今回の討伐依頼は最低ランク六ですが、ランク六までは正直依頼をそこそこ完了させれれば誰でもなれます。その為実力の差が激しく今回のシロの殺気にもやられる人が出ました(シロは特殊でもあるのですがね)

その為に冒険者は六が多いですが、逆に七からの昇格が難しく数は少ない。

ちなみに六でも安定した仕事につければ給金もそこそこいいが争いは激しいです。


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