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神隠しによる放浪記  作者: レブラン
第四章
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進軍開始

 日が昇り城下町の鐘の音が街全体に鳴り響く。

 そんな中、巧達は街の外門に居た。

 巧は辺りを見回すと、人混みの多さに目移りしていた。

 冒険者と思われる人々、多くの荷馬車が存在し、中には冒険者ではなく貴族と思わしき人物の姿も。


「あれ? 結構多いな」


 そう巧は呟く。

 実際昨晩に収容広場に集められた人数は十数人、それぞれのパーティーの代表者達。

 その代表者以外に、ギルド本部の広間に居たパーティーメンバーも含めれば数十人程度だろう。


「五百匹の魔物討伐でこれだけ人数がいるとは聞いてないぞ?」


 ハリトラスの言葉に巧は同意するよう頷いた。


「ああ、多分だがあの時、俺達以外にもあとでこの依頼を受ける人が多数出たんじゃない? それにこの城下町でギルドがあの一つとは限らないだろうし」

「そうだな、まあけどこれだけ人数多いと魔物対峙するとき負担すくなくていいかもな」


 分散によるリスクと魔物一匹による人数の割合、そんな言葉を巧の脳内には思い浮かんだが気にする事をすぐにやめた。


「なんだか注目されてるわね」


 シロがそう呟く。

 そう、周りの冒険者達は巧達を奇異の目で見ていたのだから。

 誰もかしこも巧達の方向を見るように。

 そんな中、一人の冒険者が絡んでくる。


「おいおい、子供が何でこんな所にいるんだ? さっさと街へと戻りな」

「いや、俺達もこの討伐依頼に参加する者なんだが?」


 そう言いつつ依頼書を相手に見せつける様に取り出す。

 巧が出した依頼書を確認するように冒険者は見入る。


「おいおい、本当にこの討伐依頼書だ。まさか、お前みたいな子供もランク六以上だとは思わなかったぞ? ちなみにランクはいくつだ?」


 実際周りには、巧やリウスのような見た目が幼く見える者はいない。

 仮にいたとしても、ランクの低い冒険者としか思われないのだろう。

 昨日のギルド本部広間に居た冒険者達と同じような反応を見せるのは至極当然の反応であった。


「ランクに関しては四と五だけど?」

「四と五って冗談だろ? この依頼は六以上で五以下は受けられないはずだぞ?」

「俺達は特別に許可が下り、この依頼を正式に受けただけ」

「嘘言うな。お前みたいな子供が参加できるわけないだろ」

「そんな事言われてもな……。実力も認められたし、この依頼書だって本物だから文句ならギルドのほうに言ってくれ。それとも……実力をここで見せたほうがいいのか?」


 巧が言い放った言葉に周りの冒険者達は失笑が漏れる。

 その時、巧達に近づく一人の人物。


「その小僧の言う通り、ランクは低いが実力は本物だ。お前達の敵う相手じゃねえ」


 そんな言葉を放つ人物は、ドルアガであった。


「げ、激昂のドルアガ!」


 有名なのか、ドルアガを見た冒険者達はざわつき始めた。


「五月蠅く揉めてると思って来てみたら、こんな下らない連中に何やってんだお前」

「いや、俺達がこの依頼を受けることに不満があるらしいからさ」


 ドルアガは巧に絡んでいる冒険者を睨むと、蛇に睨まれた蛙の様に委縮する。

 耐えきれなかったのか、離れて行った。


「けっ、雑魚が! 睨まれたぐらいで委縮してんじゃねえよ!」

「ドルアガ、ありがとうな」

「お前もお前だ! 俺様に勝ったんだから、もっと堂々としとけ。そんなんだから舐められるんだ!」

「あ、ああ。悪いな」

「たく……、俺様はもう行くが」


 ドルアガは背中の巨斧を突き付ける。


「いいか、今回の討伐では俺様が活躍する。昨日みたいな無様な姿はないと思え!」


 そう言いつつ、その場から離れた。

 ドルアガとのやり取りを見ていた冒険者達は、その場を離れようとしてるのか巧達を絡もうとする者はいない。


「あれがドルアガなのか、迫力あるな。いつの間に仲良くなったんだ? 気難しいとは聞いてるが」

「ああ、昨日ちょっとあいつとね」

「あの男と何したの? タクミ」

「いや、あいつと揉めてちょっと闘う破目になったん……だ」


 振り向くとシロの表情に少し強張る。


「け、けどすぐに俺の実力が分かったみたいで。ほら、根はいい奴ぽいから今回みたいに場を収めてくれたしさ……な」

「タクミがそう言うなら……、けど次は何かしてきたら私が助けてあげるからね」

「ああ、頼むよ。それはそうとリウスはっと……ん?」


 巧の背中を引っ張るリウスがそこにいた。

 委縮していたからか、その表情は小動物の様に怯えて怖がり、それが何に怯えているのかすぐに察する。


「あー……、しょうがないか。とりあえず顔を上げても大丈夫だよ。怖いおじさんはもういないから」


 巧の言葉に顔を上げるリウス、その表情は不安そうな顔を浮かべていたが巧の言葉により安心した表情を見せた。


「さて、いつまでここにいるんだろ? 結構人集まってるし、そろそろ出発の合図とかあってもいいんだろうけど」

「そうだな、けど見た所フェスさんがまだみたいだ」


 ハリトラスの言葉通り、周りに冒険者はいるが中央人物であるフェスの姿は見受けられない。

 巧はキョロキョロと辺りを見渡すと、周りの冒険者達はざわつき始める。

 その理由はすぐに判明した。


「皆の者、集まったようだな」


 そんな言葉を放つのは、フェスであった。

 その後ろに複数人のギルド受付嬢とフェスとは違う漆黒の鎧を着た人物が複数人立っていた。

 どの人物も異様に警戒心が強く、見てくれからしても実力も相当な物だと判断でき、それぞれ集まっている冒険者達を睨むように見まわしていた。

 冒険者一同はフェスに注目するように集められる。


「まずは今回魔物討伐参加する皆の者に感謝の意を表そう。私が今回の軍勢の指揮をとらせてもらうフェスだ」


 そう言葉を述べると、背中の大剣を地面に突き刺す。

 弁慶の如く仁王立ちの姿をしている様であった。


「さて、我々はこれから、このベルチェスティア王国に進行している魔物軍勢の討伐に向かう。我々全員がこの討伐に向かうと、このベルチェスティア王国に支障が生じるだろう」


 つまり、討伐に大量に人員を送り出しても城、街の守りが手薄になりそこを突かれる可能性がある。

 もしもの時に城の兵士だけでは対応出来ず、その様な危惧があるのだろう。


「そこで、第一陣、第二陣、第三陣と別けることにした。第一陣は先行部隊、第二陣は第一陣がもしもの時にベルチェスティア王国と第三陣への通達と第一陣へ合流し応戦役、第三陣はベルチェスティア王国へと残り城下町の守りに徹してもらう」


 そこに冒険者の一人がフェスに質問を投げかけられる。


「もしもの事とはどんな?」

「全員の全滅、または第一陣の壊滅状態だ」

「そ、そんな事があるのですか? 魔物如き、五百匹と聞きましたが、これだけの人数がいればそれら全て倒せるのでは?」

「普通の魔物ならそうだろうな。だが、今回の魔物はそうはいかないと予想される。何せ魔物の中に再生持ちの魔物が存在する可能性があるのだから」


 再生持ちと言う言葉を聞いた巧達以外の冒険者は誰しもピンと来ない表情を浮かべていた。


「今回の魔物ではなく、ここ最近このベルチェスティア王国領地内周辺でも、その様な特殊な魔物の事例が複数上げられている。再生持ちの魔物達は他の魔物とは違い、再生はもとより、能力も格段に違うと判明。つまり一筋縄ではいかない可能性もあるのだ」


 巧達が討伐したサイクロプスの事も含まれているのであろうと、そう予想した。


「更には今回その再生する魔物を捕らえると言う命令も出ている」

「そんな事聞いてねえぞ! ならより危険って事じゃねえか!」


 フェスの説明を聞いて納得していなかったのか、冒険者の一人は不満の声を漏らす。

 その言葉に同意する冒険者は複数いた。


「これだけ人数がいるのだから、魔物の数は多いが楽な討伐になると思えばそうじゃないとか」


 そんな身勝手で不平不満の中、一つの轟音が鳴り響く。


「うるせえ! 文句垂れるなら、お前等みたいな雑魚はさっさとこの討伐を辞退して今すぐ消えろ!」


 ドルアガが巨斧を地面に勢いよく振り下ろしたのか斧の半分は地面に埋め込まれる。


「な、なんだと! 俺は今回の事を聞かされたわけじゃなくてだな!」

「あぁん? 魔物に殺されるのが怖いなら代わりに俺がお前を殺してやろうか?」

「い、いや……そうではなくてだな……くっ!」


 ドルアガの威圧に押されたのか、文句を垂れていた冒険者は黙る。


「悪いな続けてくれ」


 フェスは頷く。


「現状我々に説明の不備があったようだが、この討伐は緊急ではあるがあくまで任意であり強制ではない。そこで今回の討伐による覚悟のない者、不満のある者は今すぐこの討伐を辞退し、この場から離れるのを認めよう」


 フェスの言葉に互いの冒険者は見渡すが、誰一人離れる事はなかった。

 確認が取れた所でフェスの後ろにいたギルドの受付嬢達が前に出る。


「それぞれのパーティメンバーや人員の振り分けはこの受付嬢達がするので、それに従うようにしてほしい」


 受付嬢達はそれぞれの手持ちにあった羊皮紙に書かれている事に従い振り分けていった。

 その中で巧達は第一陣として先陣を切る事になる。


「まあ説明を聞いた時に何となく一陣になるなって予想はしてたが」


 第一陣は巧達を含め、昨晩のギルドホール内に居るメンバーよりも少し少なめであった。

 先陣を切ると言う事は、まず先に魔物との交戦をすると言う事でもあり、更には偵察役目もある重要な立ち位置なのだ。

 もしも第一陣部隊と交戦をしても数が数なので、他に魔物達が分担して移動する可能性もあるようなら、迅速じんそくに行動できる人数となる。

 振り分けの際に説明を受けた巧達は納得する。

 だが、明らかな不釣り合いの人物達(・・・)がフェスの周りにそれぞれ集まっていた。


「フェス卿。今回もよろしく頼みますぞ? 手柄を立てて陛下に私がどれだけ優秀さを見せる必要性があるからな」

「いや私こそ陛下のお役に」

「分かっておりますスマグス卿、ルビス卿。それに他の方々も陛下の耳にしっかりとお伝え致します」


 その言葉が聞けたのか満足するかのように貴族達は頷く。

 どう見ても邪魔になるであろう貴族達が何故ここにいるのか、先ほどの会話で巧は納得した。


「では、これより魔物軍勢の討伐に移る!」


 フェスは軍馬にまたがり進軍の合図を開始する。


やっと書き終わりました。

まさか前話が4ヶ月ぐらい前になるとは思いませんでした。


次回は魔物の軍勢との戦闘シーンかけたらいいかなって

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