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神隠しによる放浪記  作者: レブラン
第四章
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決闘と決着

「めんどくせえ……」


 巨斧を抱えているドルアガと対立する。

 その周りの観衆は、巧とドルアガの決闘に興味を示している様に見ていた。

 巧の実力を確かめようとしているのか、止める者が一人もおらず、決着が着くまで逃れ様がない雰囲気。

 そんな巧はウエインの方に視線を向けるが、ウエインは止めるのは不可能なのか首を振る。


「早くお前も構えろ!」


 巧が中々準備しないのにドルアガは苛立っているのか、声を張り上げる。


「あー、本当に戦わないといけないんですか?」

「ああ、タクミがこの者、ドルアガと言ったか。まあ倒せれば実力を認めさせる事になって、この場は収まるだろう」

「俺が負けたら?」

「陛下にこの決闘の行く末を伝える。討伐参加はさせるが、前線に立たせるわけには行かないからな、街にて待機だろう。あの件は不問は陛下次第だがな」

「マジか……わかりました……」


 諦めた様に溜息を吐く。

 フェスは巧とドルアガの両者を見据え、決闘ルールを説明し始めた。

 それは巧がギルドにて決闘を受けた時のルールは何一つ変わり様がない、但し一つを除いては……。


「え? 死亡させる事が有りって……。けどさっきは負けても街にて待機って」

「これから先厳しい戦闘になるだろう。だがここで死ぬようでは、前線に放り込んでも呆気なく死ぬだけだ」


 本来なら、死亡させる事によりギルドから厳しい罰則が加算されるはずなのだ。

 だが、フェスの権限により実質の殺し合いが認められたのであった。


「それが嫌なら本気を出して戦えタクミ!」

「いや、滅茶苦茶だろ……。仕方がない……【水玉みずたま】」


 巧は水の塊を空中に浮かべた。


「準備はいいな? 始め!」


 巧とドルアガ互いの距離は数メートル、少し遠目だがすぐに距離を詰められるだろう。


「へ、まあ安心しな。流石に俺様もお前を殺しまではしないが、世間の厳しさを教えてやるよ!」

「へえそうかい、だけど人生経験からしたら多分俺の方がお前より上だと思うがな」

「何言ってんだ。どうせ仲間の後ろに縮こまって魔法を撃っていただけだろ小僧!」


 先に飛び出してきたのはドルアガ。

 魔法使いとの戦い方を知っているのか距離を詰める。

 そのスピードは速く、間合いを詰め振り被れば巧の所に巨斧は届く。


「武器変化水【斧】!」


 水の塊はドルアガの持っている巨斧と瓜二つの形を出現させた。

 変化させた斧は、巧に振り被られた巨斧に対して負けじと水斧を振り被る。

 両者がぶつけた斧は激しい金属音をまき散らし、ぶつかった衝撃で互いの斧は弾く。

 突如、斧を出現させた事に対して驚きの声が上がった。


「な! く、くそ!」

「次いくよ!」


 魔法で創られた水斧でもあるのだが、巨斧のわりに軽さがあるのかすぐさま次の攻撃に移る。

 その攻撃はドルアガの持っていた巨斧の斧腹部分にぶつけ弾き飛ばすと、巧は斧筋部分でドルアガを突き飛ばす。

 ドルアガに関しては、突如現れた斧による驚き、そしてはじき返されるとは考えてもいなく、重さの所為もあってかすぐさま次の攻撃に移る事が困難であった。

 従って、巧の次の攻撃にする事ができなかったのであっただろう。


「これで終わりだな」


 対峙する相手を前に武器を手放す、それは戦士にとって勝ち目のない戦。

 それが戦場なら命を散らしているだろう。

 だが今は違う、これ以上相手を追い詰める必要性がない為、巧は水斧を解除した。


「さあ、さっさと降参宣言してくれないかな? 武器も手放したし、お前に勝ち目はないぞ?」


 戦意喪失をしてないのか巧を睨む。

 実際、巧の言う事には間違いではなかった。

 魔法使いだと侮り、足元をすくわれたのであったから。


「くそがあ!」

「俺の勝ちでいいですか?」


 巧はドルアガに視線を外し、フェスに顔を向ける。


「何をしている、まだ試合は終わってない」

「タクミ、避けろ!」


 ウエインが叫ぶ。

 その言葉の意味をすぐさま理解するよう、少し屈む。

 するとドルアガが何かを叫ぶと同時に巧に大きな衝撃が走り、体重も軽く身体も小さい為か遠くまで吹き飛んだ。


「はははは! 試合中に余所見するとは随分余裕なこったな! それとも斧だけとは思ったか?」


 巧を襲った正体、それは“拳”であった。

 余所見をした瞬間に巧の体に拳が叩き込まれ、吹き飛ばされたのだ。

 観衆は動かなくなった巧を見て沈黙が降りる。

 

「どうだ小僧。ここが戦場だったらお前は死んでいた! 慈悲深い俺様に感謝するんだな!」


 ドルアガは勝ち誇った顔をする。

 相手が子供相手だろうが容赦はしない、実際戦場なら尚更ドルアガの意見のほうが正しいのだろう。


「さあ俺様の勝ちだ!」


 巧は未だ動かない、フェスは勝利宣言を告げようとした時。


「いやー、本当やばかったわ」

「な! 何で俺の【硬拳こうけん】をくらって起き上がれるんだ!」


 ドルアガは慢心していた、巧が余所見をした隙に技を込めた渾身の一撃で殴り飛ばしたのだがら。

 気絶までとはいかなくても、何事もなく起き上がるとは予想だにしなかったのだろう。


「さてはお前、回復薬を飲んだな?」

「いや飲んでないぞ? 俺がそんな仕草してないの見てただろ?」


 その言葉を確かめるようにドルアガは視線を周りに向けるが、誰しも巧の意見に肯定するように首を縦に振る。


「や、やせ我慢だな? そうだろ、俺様の攻撃に直に叩き込まれて動けるはずがない!」

「いや……平気だが?」


 痛さがない様子をアピールするかのように、身体全体を力強く叩く。


「わかったろ? だからもうお前に勝ち目はないから降参宣言してくれよ」

「くそ、くそがあ! これならどうだ……【憤怒ふんぬ】!」


 明らかに煽られてるのがわかっているのか、ドルアガは全身赤くさせ怒りを露わにする。

 その迫力や先程と違い威圧感までをも数段上であった。


「俺が激昂と言う二つ名を教えてやる。この憤怒の姿になれば身体能力は上昇するが、数分間怒り狂ったように暴れまわるからな!」


 地団駄踏むように何度か床を踏みつけると、足元に亀裂が入る。


「建物を壊すなよ」

「自分の心配より建物の心配か!」


 言い終わると、ドルアガは巧に向かい飛び出す。

 その速さは先程の動きと比べると格段に上昇。

 だが巧の反応できる速さであった。


「一旦距離を……風壁!」


 風壁によりドルアガを吹き飛ばすが、ドルアガは着地したと同時に再び距離を詰める様に飛び出す。

 

「マジか、それなら、水ビーム!」

「があああああ! ごう゛げん゛!」


 水ビームはドルアガにぶつかろうとした時、ドルアガは自分を守るように腕で庇い折れるが水を弾く。

 折れた腕を一向に気にする様子もなく、ドルアガは巧に近づき、折れていない方の拳で殴りつける。

 それは先程、巧に一撃を入れた硬拳であった。


「っと、あぶねえ」


 運よく拳を回避した巧、だが殴りつけようとした腕は巧を外れ地面に激突。

 地面は激突したと同時にめり込むように腕が突き刺さる。


「マジかよ……」


 突き刺さった拳の見て血の気を引くのを感じた。

 ドルアガは突き刺さった腕を軸に巧を蹴り飛ばす。


「ぐっ!」

「があああああああ!」


 巧は何度か転がったのち、ドルアガの獣の様な雄叫びが聞こえたのかすぐさま体勢を立て直す。

 顔を上げると近くに、ドルアガが迫って来て再び巧に向かい殴りかかろうとしていた。


「流石に受けるわけにはいかねえよ!」


 自らドルアガの懐に飛び込む。

 その行為は誰しも自殺行為に思えたであろう。

 体格差もあり、巧程度ではドルアガの様な巨漢な体格にダメージを負わす事は不可能に思えた。

 だが……。

 

「【風拳ふうけん】!」


 巧はドルアガの腹に勢いよく拳を叩き込む。

 強い衝撃音と衝撃波らしきものが巧とドルアガ互いの間、いや周囲にまで広がり、両者は時が止まったように動かなくなる。


「騎士団長様、どうなって……るんですか?」

「残念だが私にもわからん。だが一つだけわかった事がある」

「それは?」

「勝者が決まった事だ」


 その言葉と同時に歓声が上がるとウエインは巧に視線を向けた。

 ドルアガは口から血を吐き出し地面に倒れ、立っていたのは巧であった。


今更ながら別にドルアガの武器は巨斧じゃなくても良かったなって思いました。

あとちなみに巧が叫ぶ魔法ですが適当です。

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