ルフラとベランジェ
窓から差し込む光で部屋が明るくなり。
その眩しさに気が付き、ベランジェは目を細めた。
「ああ、朝なのか。書類がまだ山積みだがひと眠りするか? いやでも」
ベランジェは机の上に山積みの書類を見据え考え込む。
一晩中、机に齧り付く様に座り書類作業をしていたのだ。
すると部屋の扉がノックにより、意識は切り替わり扉へと向く。
「ベランジェ陛下、フェスです。起きていますか?」
「何だフェス、朝から騒々しい。入ってよいぞ」
「申し訳ありません失礼します。朝から書類作業とは、もしかして紙束を枕替わりにしておりましたか?」
「そんな嫌味な事を言いに来たのではないだろう、要件を言え」
「そうですね……。昨晩、私が人選し送り込んだ密偵者。夜中に戻って来まして、報告にと」
「ふむ早いな。で、その送り込んだ人物は名は確か」
「ルフラ、ルフラ・ファーマ。フィティアの妹でございます」
「フィティアのか。それで報告だけではないだろう?」
「……陛下に昨日の冒険者の事でお話、相談したい事があると」
「ふむ……、わかった。連れて来い」
「畏まりました」
フェスは一礼すると部屋から出て行く。
「面倒な事じゃなければいいが」
そう不安を募らせ、暫く待つとノックがかかり扉が開かれる。
中に入るはフェスにローブを着こんでいるエルフ女であった。
「陛下、この者がルフラ・ファーマでございます」
「お初にお目にかかります陛下」
「フェス」
「ご安心下さい陛下。この者は洗脳魔法もかけられておりません」
安心するよう溜息をつく。
「あのよろしいでしょうか」
「ああ、そんな畏まらなくても良い。それよりも昨日の出来事を聞かせてくれないか?」
「はい、フェス様から承ったのち、私達はブリアン伯爵邸に向かい、そこでタクミ、シロ、リウス、ハリトラスと対峙しました」
「ふむ、そう言えば残りの三人はどうした?」
「残りの三人は……死亡。私は気絶させられ、伝令役として生き延びました」
毒物の件は思う所があるからか、口に出さないでいた。
「伝令役? つまりは何か言われてるのか?」
「左様です」
「それでどのような事を言っていた」
「“明日迄にルフラだけ戻って来ないとタクミ達はこの国を出る”とのこと」
「陛下」
「ああ、わかってるフェス。本当にそう言っていたんだな?」
「間違いございません」
真剣な表情をし、考え込む。
「フェス、確かブリアン伯爵は今ウルラヌスが死んで、その子供が継いだのだよな?」
「左様です。それに加えて現護衛者はタクミ、リウス、シロ、ハリトラスの四名となっております」
「まだ手垢が付いていない状態と考えれば……、フェス今日の予定は」
「はい、ブライ侯爵との会談、会食、その後に貧困街の査察し城へとお戻られた後はこの山積みの書類仕事かと」
「なら査察はまた次回に見送らせ、その間で会談する」
ベランジェは執筆し、手紙を差し出す。
「すまないがこの手紙を持ち、今から伝えて来てくれ。ブリアン伯爵と共に、昼を過ぎてから調節せず魔時計三回分経った頃、鐘三つ鳴らされた頃に来られたしと」
「畏まりました」
ルフラが部屋から出て行くのを確認すると、フェスはベランジェに問う。
「なぜ予定を変更してまで会おうと?」
「現状後回しにしても良い案件だったのでな」
「それだけではないでしょう」
「バレバレだったか。フェス、ルフラの実力はこの暗部で何番目の実力だ?」
「彼女は暗部でなら五本の指に入る実力かと、忠誠心もあり推薦致しました」
「ならその彼女と部下を一網打尽にして、倒し切れたタクミ達は本物と言うわけだ」
「確かに彼女も実力はあるでしょうが、たまたまなのでは?」
「そうかもしれないが、そうではないかもしれない。更にはまだ子供だろうがまだ伯爵には会えてはいない」
「とは言え確か、現ブリアン伯爵はまだ十二歳にも満たない子供のはず。陛下の前に現れるのは、今度の顕彰会でしょうに」
「確かにその時に会うだろう。だが子供とは言え、伯爵としての器としてはどうなるかも確かめてみたいと思ったんだ」
「前のウルラヌスは粛清対象に入ってましたからな。その子供までも汚染されていましたらどうしますか?」
「まだ子供だろう、いつでもこちら側に引き込める。それよりも上手く話しをし、冒険者であるタクミ達を手駒にするかが問題だ」
「相手は冒険者ですから、実力としても申し分なければ確かに我が国としても軍事力強化にも繋がりますでしょうな」
「ああ、城の兵士だけじゃなく。冒険者でも多ければ多いほど損はないからな」
「ええ、仰る通りです。だけどとりあえずは食事をとりましょう。栄養を取られず倒れられると困るのはこちらなので」
そんな言葉に苦笑するベランジェ。
「確かに、一度休憩しよう。それから改めて再開する事にするよ」
「畏まりました」
最近出番が多くなってくる陛下
侯爵名をブライに変更しました