白状
「なんですと!? 陛下がまさか……」
衝撃の事実を言うルフラ。
その言葉にルイスは驚くが、巧はどこか冷静な様子であった。
「もしかして、今までの事報告されたり?」
この国のギルドでの内部事情を思い出していた。
ルベスサから説明を受けていた事やギルドに巧達の活躍を報告されていると。
その時に白い魔物、フェイリア、ハウリック家での襲撃事件、この城下町に到着する前に退治したサイクロプスの件など。
この世界に来てからの出来事全て報告を調べられた結果、巧が全て関与していることがベランジェの耳に届いたのだろう。
そう巧は予想した。
「そうね、貴方……いえ、貴方とその仲間達の記録を調べさせ、陛下は興味を示したの」
「やっぱりか……」
ルフラの言う事に巧は悩む。
するとシロが提案を出す。
「どうするの? このまま、また別の街に行っちゃう?」
「まあその手も考えるけど。いっその事、会って話をしようと思う」
「だけどどうするの? 相手は警戒するだろうし、また会えるとは限らないのよ?」
「ルフラをこのまま返そうかと思う」
「しかしこのままでは、この方が戻った所で処遇がどうなるかわかりません。敵国ならまだしも自国の者なら処刑とまではいきませんが、最低でも情報漏洩として牢へと監禁されるでしょう。その時に拷問されでしょう」
ルイスは自分が城で働いていた時の事を思い出し言ってるのだろう。
巧は思考を巡らせる、どうすれば良いか、最善の策を考えるように。
「ルフラ、お前は城での情報と言うか立場はどのぐらいなんだ? どこまで知ってるんだ?」
「私は暗殺対象の暗殺や今回の様な拉致などを主としていたのよ。だけど今まで失敗はなかったの。だから、ベランジェ陛下は私の事を信頼しこの任務を任せてくれた」
「信頼されてるなら何で、毒物何て仕込ませていたんだ?」
「それは、私が主に迷惑をかけてしまうから……」
「……言い方を変えるわ。誰に毒物を持たせ、仕込ませるように仕込んだんだ?」
「これはベランジェ陛下の側近であるフェス様に最悪の場合と用意してもらった物」
「なら、普通成功すると思われてるなら毒何て渡す必要性もないよな? 信頼されてない証拠、いやお前が負けても捕まっても疑いもせず、他の奴と同様に毒物を飲み死ぬと思われてるんじゃねえのか?」
「ち、ちが……私が……私は……」
次に出てくる言葉が思い浮かばずに黙る。
「このままじゃ、ルフラお前は不要と思われて処分される可能性がある」
「なら戻った所で無駄じゃない? タクミ」
「ああ、シロの言う通り。ただ戻るんじゃなく、俺等が今度会いたがっていると。そして明日迄にルフラ“だけ”戻って来ないと俺達はこの国を出ると伝えてくれ。そこで話を付ける」
そう伝令役としてルフラにする案を決めたのだ。
だがルイスは訝しげな表情をする。
「それでは、戻って来なかった時はヘルデウス様との約束の破棄になるのでは?」
「確かに身勝手な話です。流石にこれはヘルデウスに聞いてみますが」
「いえ、それには及びません」
ヘルデウス達は巧の会話が聞こえていたのか、部屋の中に入る。
後ろに続くようハリトラスがついてきていた。
「タクミ、話は聞いていたよ。僕じゃどうしようも出来ない。だからタクミが決めた事に任せる事にします」
「だけどタクミ、相手は俺達の事どうでもいいって思うんじゃないのか?」
「いや、それはないと思うぞハリトラス」
「どうしてだ?」
「ルフラは“ベランジェ王は俺達の事を調べている”と言っていた。つまりそれは俺等に興味があり、俺等に再び会いたいとも思えてるはずだ。そこで俺等から会いたいとも迫ってみる」
「なるほど、つまりは相手の好奇心に合わせて、そこを突くってわけか」
「そ、だから伝言役としてルフラ“だけ”を連れてくるよう言うわけだ。いいかな?」
巧に答えるようにルフラは頷く。
「ええ、わかったわ。私の方からそう伝えさせてもらうわね」
縄を外され自由になったルフラはそう言い残し、窓から飛び出すと空は雲で隠れているのか月明かりは無く漆黒。
そんな暗闇の彼方へ消え去った。
「上手くいけばいいけどね」
「そうだなっと、時間は」
時刻を確認すると、〇時過ぎ。
巧は後を振り向くと。
「とりあえず暗いし寝ようか」
一抹の不安を感じていたが、これ以上はどうしようもなかったのだった。