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神隠しによる放浪記  作者: trt
第一章
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初めてのギルドそして登録

 ウェスタンドアを開け中に入ると、男二人が口論をしていた。

 報酬のもめ事のようだが、男がもう一人の男の胸倉を掴み投げ飛ばす。

 投げ飛ばした先に巧がいたが、男とぶつかりそうになる寸前で慌ててしゃがむ。

 男は巧の上を通りすぎ、外へと飛び出すと地面に転がり込み気絶した。

 飛んで行った男を茫然と見ていた巧、その肩に手が触れるのに気付いて振り向くと、喧嘩していたもう一人の男が心配するよう巧に話しかける。

 焦っている様子ではあった。


「悪かった、大丈夫か?」


 見た目は三十代、顎鬚あごひげをぽつぽつ生やし彫りの深い顔。兜は装備していないが、鎧は胸と腹を守る為に作られた青銅製ベル・クィラスに中には鎖帷子を装着していた。


「え? あ、うん大丈夫だよ。何があったの?」


 男の顔はホッとしていた。


「ああ、ちょっと報酬部位のもめ事でな。酔っていたとは言え、毎回良質の素材を得ようとしたから流石に頭きて。今回は俺が渡したのに次もよこせ! とか」


(これがデータとリアルの違いかめんどくさいな)


 パーティによるアイテム分配が自動的に行われていたゲームと違って、リアルで揉め事が起きた時の険悪な状態を聞き、巧は自分がしていたゲームと現実の違いに嫌な気分が滅入る。


「けど喧嘩するのはいいですが、他でやって下さい。ここには喧嘩するための場所じゃなくて、他の冒険者だっているんですよ?」


 そう巧と男に声をかけてきたのは、獣人の特徴である獣耳に尻尾をつけた女性。

 顔は人間の女性と大差ないが、日本にいたらモデルをしていてもおかしくないほどの美形。上は白に下は茶色のロングスカート、見た目はワンピースぽい服装で腰エプロンをつけている。周りの冒険者達と違い受付嬢達も同じ服を着ているのでギルドの制服だとわかる。


(うお! リアル獣耳娘! むっちゃ可愛い! モフりてえ!)


 巧の内心は歓喜していた。

 こう間近に迫っていたので獣耳に注目する。


「あ、ああすまなかった。もうあんな事はしないから……、ごめんなさい!」


 巧と違って男のほうは頭を下げ、顔を青ざめ恐れていた。


「あの、この人もこう言ってるし、許してあげてもいいんじゃない?」

「……仕方ないですね。今回は、この子に免じて許してあげましょう」


 他の人を見てみると、男女問わず安心したかのように安堵していた。

 男は頭をあげ巧にお礼を言って手を出す。


「本当すまなかったな、俺はヒューズト・ハリトラス★五つの中級冒険者だ」

「山内巧だ。巧でも呼んでくれ。冒険者としてはまだだけど今から登録しにここへ来た」


 自己紹介したお互い握手する。


「ではタクミさん、ギルド登録しますので受付前まで来てくださいね」

「気を付けろよ? あの人怒らせるとギルド半壊してもおかしくないからな?」


 小声で巧に言ってくる。慌てて振り向くとクククと笑い親指を立てていた。


「タクミさん?」


 受付に座ってる獣耳女性、巧は慌てて受付前にある椅子に座る。


「改めて初めまして。私はギルド受付のシファ・エルオリスタと言います。では、この羊皮紙に書いてもらうのと、質問をいくつかお伺いします。その後はテストと規約説明をして終了です。もし仮のカードがあれば、書くことは省きますが」


 この世界に”テスト”の言葉を聞くとは思わなかった巧。

 日本での筆記テストではあんまり良い点はとれず、実技でもいい思い出はなかったのだ。


「仮のカードを渡すね」

「少し確認の為に離れますね。その間に質問は隣のエルメ・シーエリッドがしますので」


 シファの隣に座っていた受付嬢に目を向けた。

 肩までかかった金髪、目筋はしっかりし肌はきめ細かく、顔もシファと比べても優劣のつけようがないほどの美しい女性。種族の特徴である長耳、つまりはエルフとわかる。そして更には胸が強調するように大きい。


 巧はエルフの耳と胸を交互に視線を動かす。


「……あの……タクミさんいいですか?」

「はっ……どうぞ!」


 エルメは巧の視線に気にも留めず、何事もなかったかのように質問する。


「タクミさんの得意武器は?」

「得意武器は特にないな、代わりに魔法を使える所かな」

「魔法? 杖も持たずに……ですか?」


(ヴィッツの時も同じ反応してたな。魔法使う奴は杖持ってないと撃てないとかか? それに魔法ってあれだよな)


 巧は少し考え込むと口を開く。


「うん、一応水の魔法が使えるよ」

「魔法……それは階級はどれぐらいまでですか?」

「階級? 階級って?」


 階級とは星の数で分けている。

【冒険者】

 1~3つが初級、4~6つは中級、7~8つは上級、9から特級、10は超級。

 低ランクなら依頼低賃金のものばかり、高ランクになってくると高賃金や名声も手に入るので冒険者になる人達は高ランクを目標としている。 


【攻撃魔法】

 一を初級:魔法を操れで人を軽く怪我を負わす程度。

 二を中級:魔法を操り致命的なダメージを与えれる。

 三を上級:魔法で複数人の人を殺す事が可能。

 四を特級:一つの集落や村を滅ぼす事が可能。

 五を超級:大規模で使う魔法、一つの街を滅ぼせれる事が可能。

 それ以上もあるが、現在の最大五までなら各国に数名は使える人がいるとの噂。魔法に関しては使える魔法によってもランクの目安となる。


 魔法は突如、使用可能になる。この国では、小さい村に魔法が使える者が現れた時に近くの街の領主に報告。その後、その村に派遣された使者によって調べらる。本当に魔法使用者が出てきたなら報奨金が発生する仕組。

 重要なのはどこまで使用可能なのか。

 人口が多いからか魔法が使える者がわからない以上、各領主によって知らされる。もし高ランクになれば戦争や魔物の討伐などで必要になるからである。


 星に関しては字がわからない人もいたり、他国から来る入国者の為の配慮。

 依頼などは羊皮紙に星として張り出され、それを冒険者は目安にする。


「これが基本的な所です」

「うーん、階級はちょっとわからないかも、でも中級ぐらいなら大丈夫かな。ここの街に来る途中で初めて魔法使ったのでそれぐらいいけると思う……かな」

「そうなのですか? わかりました。ではシファが作業終わったので交代し後は任せます」

「ではテストに移りたいと思います。ハリトラスさん」


 近くで聞いていたハリトラスはビクッとさせた。

 呼ばれるとは微塵も思っていなかったらしい。


「ギルド裏にて訓練所があるので、タクミさんの相手をしてもらいます」

「わかった、これはギルド依頼でいいんだな?」

「はい、ギルドからの依頼でいきます」


 小さくガッツポーズするハリトラス。


「そういや外に投げ出した人どうすんの?」

「あ……」


 巧の言葉で投げ飛ばしたのを思い出す。


「はぁ……わかりました。あの人をギルド内の医務室に運んで下さい。そのあとでギルド裏の訓練所に来てくださいね」

「すまねえ」


 頭をかき、急いで外に寝ている男を担いでギルド内の医務室に連れて行った。

 巧はシファにギルド裏の訓練所に連れられる。

 訓練所はテニスコート一つ分ぐらいの広さがあり、端っこには案山子や木製の武器や盾がそれぞれ置いていた。


「ここで対決してもらいます。武器に関してはそちらの木製武器を使用してもらっても構いません。ルールとしては、お互い危険な行為であり死に繋がる攻撃の禁止、打ち身ぐらいなら続行で気絶や骨折したら即終了。時間制限もありますがこのような感じです」


 ルールの把握すると、巧は後の武器を見ながら新しい魔法を思いつき試してみようと考えていた。


「おまたせ、今どうなってる?」

「先ほど説明終わりました。あとは武器の選択をして戦闘開始です」

「なるほど、なら俺はこれだな。タクミ武器は決まったかって……何してるんだ?」


 巧は武器を選ばずてのひらに水の塊を宙に浮かしていた。

 ギルド説明時にハリトラスは巧が水魔法は使えるの聞いていたので驚いてはいない。


「準備完了したよ」

「武器無しで魔法のみか、中々強そうな威力がありそうだしきつそうだな」

「では両者準備いいですね。始めてください」


 その合図とともに巧の右手に集まってる水はある物へと変化。


「え?」

「うそ」


 シファとハリトラス共に驚きの声をあげる。

 無色の水の”ハンマー”へと変えたのだ。

 普通の魔法使いなら水を飛び道具として、巧が使ったレーザーやビームみたいに高威力ではないが一応はある。

 今巧が創ったそれは、どれにも属さないやり方である。

 無詠唱でも使える人もいるが、ただの無詠唱なら驚くに値しない。それがただ、魔法名の無宣言発動で使えるとは微塵も思っていなかった。

 そんな事に気をとられていたハリトラス、巧はハリトラス目掛けハンマーを振るう。ハンマーが間近に迫っているのに気が付くとハリトラスは防御するのを忘れていたのかモロに食らう。

 ハンマーを受けたハリトラスは、そのまま吹っ飛び壁に激突して地面に倒れ気絶した。


「あれ……どうしたっけ?」


 暫くして目が覚めたハリトラスはシファと巧を交互に見た。


「タクミさんとの対決に水のハンマーで吹き飛ばされて気絶し負けました」

「え? あ、吹き飛ばされた? タクミ本当に水のハンマー創ったのか? もう一度見せてくれ」


 巧は右手を上げ水を作りだし、その水が変化していきハンマーの形になった。


「触ってもいいか?」

「うん」


 確認ができてからハンマーを触る。

 ハンマーは硬く、そこら辺の武器以上に十分使える物だった。


「これを魔法宣言無しでしたのか……ははは、すげえわ」

「そうですね、私もびっくりしましたよ。まさかこうなるなんて……」

「いやそこの武器を見て思いついただけだよ。できたのは運が良かっただけだから」

「そんなわけないだろ、普通こんなのできないぞ。まあけど十分冒険者として資格はあることが証明されたな」

「そうですね、これなら問題ありませんね」

「ありがとう」


 巧は二人に頭を下げた。




 ――――場所はギルド内の受付前に戻る。


「あとは登録のみですね」

「何か長かった気がする」

「あと少しですから、頑張って下さいね。ここにドッグタグがありますのでその上に血を一滴垂らし登録できます」


 ドッグタグをシファが出していた。

 巧は受け取り指先をナイフで少し刺し、ドッグタグの上に垂らす。

 ドッグタグに掘っている文字とドッグタグ自体が光り、暫くすると光は完全に収まると変化はない。


「毎回ではありませんが、ランクが上がると色の変化が起こります。初級は白、中級は青、上級は銀」


 現在、巧が持っているドッグタグは白だ。

 つまり初級冒険者である。


「これにて終了です。ドッグタグは無くさないよう。あとはドッグタグを掴んで、念じれば目の前に画面が現れます。その画面は自分の能力値などが見えます」

「わかった」


 「他にも数点ギルドでの補足説明がありますそれは――――」


 ①冒険者同士の争い事にはギルドは”基本的”には関与しない。

 ②依頼を受ける際には一人でも複数でも可能。

 ③依頼失敗時、トラブルなどで失敗したり死亡したりしても自己責任。但し期限過ぎ戻ってきた時は違約金を支払う。依頼を失敗し過ぎるとランク降格またはギルド除名。

 ④報酬は冒険者の物だが必要に応じてギルドが回収する事になる。その際にドッグタグと依頼書の提出をすれば、依頼完了となる。

 ⑤依頼外での魔物の部位はギルドで買取可。


「――以上です。これにて説明は終わりです」

「わかった、今日は色々ありがとうね」


 シファの尻尾が少し動く。


(やっぱ可愛いな、モフりてえし頭撫でて耳触って尻尾触って……)


 そんな事を考えながらギルドを出て、ゴブリン亭へと戻る。

とりあえずはギルド入ったら流石にランク必要だろうと思い作ってみました。


一応編集はしましたがまだ長い気がする・・・

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