襲撃者達と動向
「ハリトラスそいつは?」
「ああ、こいつは多分そこに伸びてる奴等の仲間だ」
ハリトラスは手に持っている黒装束の人物を放り投げた。
地面を何度か転がり、まだ気絶していない様子ではあるが、仲間が二人やられたのを見て戦意喪失に陥る。
「そうか、安心したよ。流石ランク五つ冒険者」
「照れる事言うぜ。それにしても驚いたぞ? 変身魔法ってやつか?」
「ええそうね、その認識であっているわよ」
ハリトラスは頷くと、辺りを見回す。
「しっかし、俺達が狙われるって事は、もしかしたらリウスも狙われてんじゃねえか?」
その言葉に巧はハッとする。
「そうだ、リウス。リウスの所に行かないと!」
「まて、タクミ! こいつら先に縛り上げとかないと。このまま放置しておくと逃げられる」
「だけどそれじゃリウスは!」
「落ち着いてタクミ。あの子だって弱いわけじゃないの。自分の身は自分で守れるぐらいの力は持ってるはずよ?」
焦る気持ちはあるのだろうが巧は自身を落ち着かせるよう、一度深呼吸をする。
「……わかった。それじゃハリトラス頼んでいいか?」
「ああ、任せろ」
「いえ、その心配はありませんよ」
そう声をかけてきたのはルイスであった。
「ルイス、無事だったんだ。それにその手に掴んでいる人は?」
その手に掴んでいるのは、襲撃者の仲間と思わしき黒装束の人物。
だが顔は布で覆っていたのだろうが、脱がされ素顔を晒されていた。
「な!」
そんな奇怪な声を上げたのルイスに捕まれている人物だった。
仲間がやられて驚いていたのだろう。
「タクミ、シロさ……ん?」
ルイスの後ろにヘルデウスとリウスが館から出てきて、巧達の元へと駆け寄る。
ヘルデウスとリウスはシロを確認すると不思議そうな顔をして、問いかける。
「シロさんなのですか?」
ヘルデウスも疑問に思っていたのだろう。
何せ顔、服装、銀髪は変わらずにいたが、それ以外が変わっていたのだから。
「シロ、また獣人に戻れたりしないのか? このままじゃシロってわからないだろうし」
「そうね」
シロは目を瞑ると少し柔らかな光に包まれ、頭の角は無くなり獣耳に変わり、背中の翼も消滅、獣人の特徴である柔らかな尻尾が生えた。
「この方達をどうしましょう」
ルイスは男を掴み上げる。
「とりあえず情報聞き出そうか、襲撃の首謀者である依頼人が誰かを吐かせたいし。ルイスさん、とりあえずそいつらを縛ってほしいです。俺は向こうの襲撃者を引っ張ってきます」
「畏まりましたっと暴れないで下さいませんか?」
ルイスに捕まっていた男は何かを覚悟する顔になり叫ぶ。
「作戦四に移る!」
襲撃者の一人が何かをかみ砕き、飲み込む。
すると、もがき苦しみだしたのち暫くして動かなくなる。
何が起きたか理解できず巧は困惑し硬直。
ルイスは咄嗟に男の口に手を突っ込むが、苦虫を噛み潰したような表情をして口の中から手を抜くと、首を横に振った。
「タクミ様、この者は奥歯に仕込んでいた毒物を飲みこんだ模様です」
巧は一瞬何を言ってるか理解できなかったのか、聞き直す。
「よく聞こえてなかったです。もう一度頼みます」
「この者は情報を漏洩しないために毒を飲み込み死亡しました」
男に鑑定をするが、死亡していたのか[エカリ・デーテット]、死んだ生き物は物扱いなのかステータス画面が表示されずにいた。
巧は咄嗟に仮面の男に駆け寄ると、仮面を外してから鑑定をする。
だが男も毒物を飲んだのであろうか死亡していた。
「こいつもダメだ。ハリトラス! シロ!」
「こっちも同じく死んでる」
「私の方は同じく気絶してるから生きてるわよ」
「毒物を取り出すんだ!」
「シロ様お待ち下さい。私がやらさせて頂きたいのですが」
「ええ、わかったわ。それじゃお願いするわね」
ルイスに任せる事にした。
ルイスはエルフ女の口の中に手を突っ込むと、両方とも毒物を取り出す事に成功する。
「生存一名ですか。幸い気絶させたのが運が良かったですね」
「そう……ですね、けど何もここまでしなくても」
「タクミ様、この仕事を生業としている者達。失敗し、情報を漏らす訳にはいかない。だから死を選んだのですよ。彼等もいつ逆襲され殺されるかもわかりません、その覚悟はしていたのでしょう」
それでも何かを言おうとするが巧は思い浮かばず、顔を項垂れる。
「それでもやっぱりおかしいよ」
巧は死亡した襲撃者に視線を向けると、そう呟いた。
執筆し終えて改めて見ると襲撃者に関して長いですね
もう少しで終わらせればいいんですが