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神隠しによる放浪記  作者: レブラン
第四章
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説明と隠し事

 ギルド会館のギルド長室に巧達は面向かって座っていた。

 ギルド長の顔はどこか真剣で、巧達の話を聞いている。


「君達はヘンゲル荒野でテルヌス帝国の兵士と戦ったときいたのだが」

「はい、私達が岩人形の核採集の際に現れ、ウエルスと名乗っていました」

「ふむ、それでそのウエルスは何故君達の前に現れたのだ?」

「多分、”実験”ではないのでしょうか?」

「実験?」

「ええ、これを見て下さい」


 巧はインベントリから岩人形を召喚した球体をいくつかテーブルの上に置く。

 球体はどれも同じ大きさで色なども同じ白色であった。


「これは?」

「この球体が地面に砂や岩を取り込み岩人形を作りだしました」

「ほう……、なら今もこれは岩人形を作る事が可能なのかね?」

「いえ、それは試してみないとわかりません。ちなみに放られた数は総数十、知能があり、岩人形達は自ら掌に岩を召喚させ、放り投げる事もしました」

「何と! 本来の岩人形はそこまで知能はないはずなのだが……。魔物を改良して自分の意のままに操るか……」

「ええ、ですので私達で試したかったのでしょう。多ければ人目に付き、何人かは逃げられ報告をされる。だけど、人数も少なかったですしチャンスだと思ったのでしょう。それにこれはまだ実験の一段階だったのだと思います」

「実験の一段階?」


 巧は一つの球体を持ち眺める。


「実験の一段階。つまりは作られた岩人形の耐久力のテストかと」

「なるほど、作った岩人形でも脆ければ使い物にならんからな」

「それから本命は黒い球体であったのです」

「黒い球体? これとは違うのかね?」

「その球体から出て来た岩人形は他とは比べ物にならないくらい巨大で、再生能力持ちでした」


 そう聞いたギルド長は顔色が変わる。


「その巨体岩人形の腕や首を切り離しても無駄で、地面の砂を吸い上げ、再び再生し攻撃してきました」

「帝国はその様な魔物も作っていたのか……。それでその黒い球体はどこにある?」

「残念ながら、黒い球体は粉々に破壊しました。直接狙わなけばいけなかったので、核を攻撃した瞬間には……」

「そうか……」


 ギルド長は溜息を付く。


「それで、本当に相手はテルヌス帝国と名乗ったのかね?」

「私達が巨体岩人形を何とか倒し、相手は怖気づいたのかテルヌス帝国と名乗っていました」

「そいつはどこに?」

「さあわかりません。いつの間にか仲間がいたので、そいつと共に去りましたから。その際に、もう一度会いにくるかもれないと言ってました」


 ギルド長は考え込むよう、テーブルの上の球体に視線を向ける。

 そして巧達に視線を戻すと。


「悪いが、城へと一緒に来てもらう必要がありそうだ。良いかね?」

「全員ですか? 状況説明だけなら、俺一人だけでもできるのですが」

「すまないが全員来させないといけないんだ。ベランチェ陛下にも説明をしないといけないのでな」


 巧は諦めるように溜息を付く。


「わかりました」


 部屋を出て歩いているとハリトラスが巧に小声で話しかけた。


「(なあタクミ、結局話さなくて良かったのか? リウスが呪い子だってことを)」

「(ああ、下手に今言って問題になるのは面倒だからな)」


 巧達はギルドに報告する前にある事をハリトラスと約束させた。



 ――――場所はヘンゲル荒野。

「本当にリウスはあの呪い子なのか?」

「ああ、ハリトラスも聞いてただろ。あいつが言ってた事は間違いではないんだよ」

「通常の魔法使いよりも威力は高いとは思ってたがまさかな」

「だから話すのは止してくれないか?」


 巧はリウスの頭を撫でる。

 リウスは不安そうな表情をする。


「まあ、確かに驚いたが。あの威力を見る限り納得したよ」


 崖の上からでも未だに黒く煙が立ち込めているのを遠くからでも、確認することができる。

 その煙と巨大岩人形の砂をハリトラスは見下ろす。


「だけど、どうすんだあれ」

「とりあえずはあれをボカシながら説明するつもりだよ。俺達がここに来る時点でギルドは知ってるから、そのうちバレるだろうし」

「わかった。まあ俺には流石にどうすこともできんし、タクミに任せるわ」

「そうか、とりあえずギルドへ戻ろうか」


 ハリトラス達は頷く。

 巧は一抹の不安を持ちつつも、その場を離れベルチェスティア城下町まで戻るのであった――――




 巧達はギルドの外に出ると王宮用馬車が入口近くに待機していた。

 その光景に巧はシロに小声で話す。


「(シロ、部屋で話している最中何か変わった事あったか?)」

「(何にもないよタクミ、外にも人いなかったし)」


(あ、こりゃ相当レベル高そうだな。外にでたら馬車とか俺等が乗るの前提だし用意周到すぎだろ、盗聴されてたのか?)


 部屋の中は巧、リウス、シロ、ハリトラス、ギルド長の四人のみ。

 気配察知が長けていたシロでさえ、察知されずにすんでいたのだ。


「さあ、乗ってくれ」


 巧は疑問に感じながらも馬車に乗ると動き出す。

 景色は流れ、外の人々は道を歩く。

 遠くの景色を眺めていた巧は城と思しき物が見えてくる。


「あれが、この王国中心、ベルチェスティア城だ」


(流石城だけあって大きいな。大丈夫かな俺等……)


 その先に待ち構えている者が誰かも巧達は知らない。

 そんな不安が巧の脳裏を過るのであった。 

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