会議と議題
主人公さんはこの回でません
城の一室にて五人の男女が大きな丸テーブルを囲い座っていた。
使用されている部屋は会議室。
軍事、政治、国内国外関係、国のあらゆる情勢に関する談話室とも言うべきだろう。
逆に王会談ができる広間は、その名の通り王との直接的な面会であり謁見、外交場所。
国外の者、貴族達、ギルド長などの重要人物との対談する場所としていた。
会議室にはベランジェとフェスも座っている。
国王であるベランジェは忙しく、他に問題が山積みでもあり、この様な会議に参加する事自体が稀。
本来ならフェスに任せるべき案件であったが、最近の情勢からして参加する必要性があると見受けられたのだ。今この会議室にはある議題に昇っていた。
「それで、貴族側の動きはどうだ? フィティア」
ベランジェはテーブルに囲っている一人の女性に視線を向ける。
後髪を三つ編みをしている金色の髪、透き通るような肌、凛々しい目、華奢な体ではあるが胸は強調し耳は長耳であるので種族がエルフだと一目で見てとれる。
そんな彼女は隠蔽に長け、暗部を統率しまとめ上げ、情報収集として一役買っていた。
「貴族側は怪しげな動きは一切見せておりません。ただフェルティ卿は内密に他貴族と会っています」
「ふむ、暫くはまだ身を潜め大人しくしていると思っていたんだが、そうではないのか?」
「はい、近々何か起こそうと言う噂もあるとか」
「……やはり先に一度、反王国派の人間を本格的に見せしめをするべきか」
「何を馬鹿な事を言っているんだ! それは現段階の影響も考えると、貴族達、もしくは王国民全ての反感を買いかねんぞ!」
テーブルを強く叩き、声を荒げる人物が一人。
「まあまあ、落ち着ついて下さいよフェスさん」
そう困ったような顔をして、宥めようとする男は、短髪で、顔は細身、キツネ目でこれと言った特徴はないが、白いローブを羽織っていた。
魔法開発、改良、改案し防壁魔法など、他の国よりも有利にする為に担当を受け持っている。
「ホルズ、これが落ち着いていられるか! 陛下はこの国の秩序を乱そうとお考えなのだぞ! それは由々しき問題とは思わないか!」
「それでも陛下は陛下のお考えでいるのでは?」
「いや、陛下は何も考えておらん! このままではこの国の未来は!」
「フェスよ、一度落ち着きなされ。何も陛下はこの国を潰そうとは言っていない。確かに、現状を考えるにワシもそんな事をすればまずいとは思うが」
そう声をかけるのは、白髪のオールバック、口元全体に髭を伸ばし、顔全体皺だらけで目元は眉毛で隠れて見えにくく、歳の所為か背も低い、年寄りなのだが前国王から助言で助けていた知識はある為、会議に参加している。
「シュワルもそう思うか。あれが安易且つ愚策なのが! それに比べて、ベランジェ陛下のお父上で在らせられたドルラン陛下はさぞ御立派でした」
「確かに前国王であった父上は立派だった。だが亡くなってから今は俺が現国王でもある。ならフェス、代案はあるのか?」
「このまま下手に動くよりも現状維持で、今暫し様子を伺うのが得策だと思うのだ」
「だが、貴族側をのさばらしておくと、このままいずれこの国が貴族達の食い物にされてしまうぞ」
「いえ、フェスの言う事も一利ありますぞ? 貴族達はまだ陛下が何をしておられるのかわらかない以上、こちらから不用意に動く必要性はないかと」
「ふむ、シュワルの言う事ももっともか。だが、逆に向こうから仕掛けられてきたらどうするのだ? 打つ手無しじゃ話にもならん」
「ええ、そこで今度行われる顕彰会で貴族達が集まるので、その後に会談をされてはどうでしょう。そうすれば陛下と相手貴族との交渉にもなりえます」
「……しかし、それでは貴族側の要求を受け入れるのも……」
考え込むベランジェ。
その様子は一国を担う王とは有るまじき論弁であり、弱腰であり、優柔不断とも取れる。
ベランジェの態度に苛立ち、再びテーブルを叩くフェル。
「陛下、弱気でどうしますか! この機会を打開させる為にも打って付けではないか!」
「だが……」
「王として判断にかける。このままでは話にならん! 俺は退席させてもらうぞ!」
そう言い立ち上がと、そのまま部屋を出て行った。
「くそ! フェスめ!」
ベランジェは肘を付け、手を額に当て悩む。
「まあまあ陛下、落ち着いて下され。フェスは私めが話をつけてきますので」
「ああ、すまない……頼んだぞ」
シュワルも部屋を出て行き、残されたベランジェ、フィティア、ホルズ。
気まずい雰囲気が会議室内を立ち込めていた。
「あ、あの陛下。確かにフェスさんも言い方がきつかったかもしれませんが、陛下の為を思って……陛下?」
「そろそろお顔を上げて下さいませんか? 陛下」
ベランジェは肩を震わせ、口元はニヤリと笑っていた。
「くくく、あいつめ、俺にあそこまで言うとはな」
ベランジェは手を顔から除けると、先程の弱腰だった表情はなく強気であり、どこか威厳のある面立ちをしていた。
「フィティアにはバレていたか」
「はい、あの程度ならもっと素早い決断をしていたと思うのですが」
「ああ、そうだな。だがそれには理由がある。その説明を今からするが、ホルズ」
「は、はい」
「防壁、防聴魔法をこの会議室全体にかけてくれ」
ホルズは立ち上がると魔法を唱え、部屋全体を光の膜で覆った。
その光景を確認するとベランジェは語る。
「そもそも何故フィティアに貴族の密偵を頼んだのかわかるか?」
「貴族の不穏な動きを察知し把握するためですか?」
「ああ、そうだ。しかし父上もお前みたいな密偵者に頼んだにも関わらず、証拠を掴めずに終わった」
「証拠とは?」
「王国側の裏切り者、つまり貴族側に情報を流している者さ」
フィティアとホルズは誰だか理解する。
「まさか……」
「そう、そのまさかだ。俺とフェスは内通者と思われるシュワルに目を付けた」
「そんな、けどあの人は昔から王国を思って」
「なら何故、前国王であるドルランは、有力候補である貴族を捕まえられなかったのか? つまりは昔から深い関わりのあるシュワルが内部事情を知っているからこそ、貴族側に情報を伝え、尻尾を掴ませる事はできなかった」
「けどフェスさんは貴族側、シュワルさんの誘いが来ない可能性もあるんじゃないですか?」
「いや、あいつは王国側の重要な存在でもあるわけだ。将来は内戦やクーデターでも起こそうとしているんだろう。それに今回ので俺に失望した演技を見せていたわけだ」
その発言を聞いたフィティアとホルズは息を呑んだ。
「今頃、勧誘に誘っているはずだ。それを釣るのさ」
そう、つまりは潜入調査とも言えるのだ。
「フィティア、すまないが引き続き貴族側とシュワルの監視。それからフェスとの伝令係を頼む」
「畏まりました」
フィティアは何かを唱えその場から消え去る。
「ホルズもその力を貸してくれな」
「畏まりました」
ベランジェは願う。
この先、上手く事が運ぶことを。
ちょっと考えるのがめんどくさかったです。
展開を運ぶのにどうすればいいのか悩みました。