表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神隠しによる放浪記  作者: レブラン
第四章
71/144

ウエルスと岩人形

 音と共に一斉に岩人形は別れ、それぞれに襲いに来る。

 巧達に五体、もう半分は三人の冒険者達へ。


「丁度半分か、あの距離からならって!」


 岩人形は足を止め、岩人形の手から岩を作り出し投げつける。


「くそ! 風壁!」


 投げられた岩に風の塊をぶつけ弾く。

 その行為からして、他の岩人形と違い知能はある様子を見受けられた。


「タクミ!」

「ああ、心配するなハリトラス。あれぐらいなら何とか問題ない」


 次々と投げつけてくる岩に対して風壁で弾く。

 水ビームで岩を砕く事も可能だが、速さ故に破片にした所で破片は勢いに乗り、巧達の誰かに当たり怪我をするだろう。このままではいずれ巧のMPは底を尽き、巧達は岩の下敷きになり、お陀仏となる事が予測できる。


「へえ、やるわねぇ~。けど向こうの子達はどうかしらぁ?」


 冒険者三人組は苦戦しているようだった。

 一体だけなら連携を取れれば、時間をかけたが倒す事はできていた。

 しかし、今は一体ではなく五体なのだ。

 盾職が複数人いれば守りきれなくもないだろうが、残念ながら一人しかいない。

 岩人形は体力は無制限と考えると、このままではいずれ岩人形に殺されるのは目に見えていた。


「さあ、あなた達もどうせやられちゃうんだしぃ、私の実験材料になって頂戴ねぇ」


 その言葉に巧は危機感を覚える。

 巧の後ろにいるリウスとシロの二人に視線を向ける。


「タクミ……」

「タクミ、私達を置いて逃げて。邪魔になるぐらいならここで」

「シロ、それは無理な提案だ!」


 シロの提案に苛立ち怒鳴る。


「でも、でも……」


 未だ腰を抜かして動けない二人、悔しそうな表情をする。

 どうやら二人は動けない事、巧の邪魔になっている事に対して悔しいのだ。

 二人を見ていたら、ある物が巧の目に映る。


「ハリトラス! 数秒だけでいいから、あの岩を俺達に当たらないようにしてくれ!」

「ああ、任せろ! 【筋力膨脹きんりょくぼうちょう】! 【鉄触硬化てっしょくこうか】!」


 ハリトラスの全身が一回り大きくなり、持っていた剣は灰色に光輝く。

 剣を振り被ると、岩をバッドに当てた野球ボールの様に進路をずらし後ろへと弾く。


「うおおおおおおおおおおおおおおお!」


 次々と投げつけられる岩にハリトラスはそれを弾く弾く弾く弾く弾く。


「ま、まだかタクミ! そろそろ限界だ!」

「すまん待たせたな。休んでいいぞ」


 その言葉と同時にハリトラスは息を切らせ、地面に座り込んだ。

 効果が切れたのか、身体は風船が抜けた様にしぼみ、前と同じ身体の大きさに戻る。

 岩人形から投げつけられた岩が巧達に向かい飛んできた。


「まずい!」


 ハリトラスは立ち上がろうとするが、力が入らず立てない。

 巧は前に出て杖魔祖を構え、叫び撃つ。


「水ビィーーーーーム!」


 すると、杖魔祖の先端から巨大な水の塊が現れたと同時に、岩に向かい水が放たれた。岩は水ビームによって砕かれ岩人形をも巻き込む。


「何あれぇ!」


 水ビームは岩人形達をも巻き込み吹き飛ばすが、ウエルスには当たらない。

 何度か飛んでくる岩を同じように壊すと、急に岩人形達は投げるのを止めて大人しくなった。


「もう、びっくりしちゃったわよぉ? あんな巨大な攻撃するなんてぇ。向こうの子達は弱っちくってぇ、実験体にもなりそうにないしぃ、貴方気に入ったわぁ……私の実験体にならない?」


 巧は冒険者三人組に視線を向けると倒れ、体を動かしていない。

 岩人形に潰され殺されたのだろう。

 顔を顰めたが、再びウエルスのほうへと視線を戻す。


「は? 実験体とかパスパス。それよりもお前降参しろよ。この距離からでも、お前を吹き飛ばすぐらい造作もないんだぞ?」

「あら、それは困ったわねぇ。けど、降参するのは」

「水ビーム!」


 会話するのも億劫になった巧は、さっさと終わらそうとするかのように、水ビームを放つ。

 だが、ウエルスの前に壁が出現し、水ビームを塞ぐ。

 だが、貫通し当たりそうになるがウエルスは避けた。

 倒せなかった巧は、顔をしかめ舌打ちをする。


「もう! 私ビックリしたわよ! 話を遮る何て卑怯なの!」

「ヘイヘイ、御免なさい御免なさーい」


 態度が気に入らなかったのかウエルスは蟀谷こめかみをヒクつかせる。


「さて、そろそろ良いだろ」

「ええ、もう大丈夫みたい。そうでしょリウス」

「うん」

「すごいな、あの水で本当に疲れが取れる何て」


 リウス達は何事もなかったかのように立ち上がった。

 巧の魔法水を飲んだおかげで、ハリトラス達は戦闘復帰する事ができたのだ。

 巧もMPポーションを飲み干し全快になる。


「さて、どうする? こっちは全快になった四人であんたおっさん一人だけだぞ?」


 ウエルスはおっさんと言われ、ぶち切れた。

 鬼の様な形相になり手を掲げると叫ぶ。


「な、舐めた真似してんじゃねえぞ! この糞餓鬼がああああ!」


 その手には黒い球体を持っていた。

 球体は光をも吸収しているのか中も光が吸い込まれてそうなほど真っ黒。


「これがぁ! なんだかぁ! わかるかぁ? わからないだろぉ!」


 黒い球体を放り投げると、地面に転がり止まる。

 すると地面が揺れ再び地震が起きた。


「な、何だ!?」


 球体の周りの地面は徐々にではあるが、先程の丸い球体と同じ様に吸い込まれ集まる。

 その球体から風をも吸い込まれているのか、周りの風が強くなる。


「まずいな……」

「ああ……」


 揺れが終え、吸い込みも終えた黒い球体は岩人形と化す。

 ただし通常の岩人形ではなく、巨大な、優に十数メートルはあるであろうほどの大きさ。


「はぁはぁはぁはぁ……、くそ……流石に疲れるわねぇ……」


 黒い球体を使用する事により魔力を消耗していたのか、疲れている顔をしていた。


「正直、貴方達には勿体ない代物だったけどぉ。流石にあの道具を使ったんですしぃ、楽しませて頂戴ねぇ」


 ウエルスはニタリと顔が笑う。


「さあ、これで第二回戦開始かしらぁ? 行きなさい!」


 その言葉と共に二回戦目の合図が鳴る。

巨大な岩人形の長身を十メートルから十数メートルへと変更しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ