初めてのお買い物
(やっぱ異世界ってすげえな)
店を出た巧は第一に目にしたのが冒険者達である。
数多くの冒険者達が行き来し、その光景に目移りをする。
だが、その中では漫画やゲームの様な露出度が高い鎧を着こんだ人は見当たる事はなかった。
簡易的な鎧を着こんでいるなら、日本ではコスプレぐらいだろう。
しかしここではそれが当たり前、逆に巧の服装が浮いている感じなのだ。
(確かこのまま真っ直ぐ行けば防具屋あるんだっけか)
道沿いを歩いていると鎧の看板が見えてくる。
「ここかな?」
店の前で見上げる様に立っていると、男の怒鳴り声をあげた。
「おい小僧、突っ立ってんじゃねえ邪魔だ!」
後ろを振り向けば、一人の男が立っていた。
店の前で立っていたのが邪魔だっただろうが、人が一人や二人は楽に入れる広さは十分にあった。
邪魔なら仕方がない……、そう思いながら横に避け、男は店内に入ると巧も後に続くよう店の中に入った。
店の中は鎧や籠手、兜など壁にも鎧や靴が棚に置いており、巧は店の中を見回すと店の台には一人の男が座っていた。背は巧と同じぐらいだろう。だが、見た目は太く、髭を生やしていて見るからに筋肉が盛り上がっていた。
それがドワーフと言う種族だとすぐわかり、巧は声をかけた。
「ヴィッツって店はここでいいのか?」
「ん? ここの店であってるがお前は誰だ?」
「防具を買うために、ゴブリン亭の亭主からここの店を紹介されたよ」
「ああ、あいつからの紹介か。わかった鎧を売ってやるがお前の名前を聞きたい」
商売だからか、商売人として名前を憶えておきたいのだろう。
「山内巧だ。まあ巧とでも呼んでくれ」
「珍しい名前だな、俺はヴィッツだ。それで何を買いたいんだ?」
「鎧かな。外にいる冒険者みたいな鎧が欲しい」
「身なりを見る限り、そんな華奢そうな身体だと鎧は流石に重いんじゃないのか? 耐久力はいいが重いと動くときにも制限かかるし、下手したら命に関わるぞ」
「そうなの? 鎧はかっけえって思って一度は着てみたかったんだがなー」
「まあ中にはそういう奴もいるが、まずは命を優先にしないといけないからな。魔法の付いた付与鎧なら重さを感じず、お前ぐらいの細身でも動かす事はできるのはあるが高いぞ。ちなみに金はいくら持ってんだ?」
「金貨四枚に銀貨数十枚なはず」
「それぐらいじゃこんな鎧しか売れないな」
胸当ての鎧、レザーアーマー数点。
他にもあるだろうが、巧じゃ鎧が大きすぎて着こなすのも難しいと判断されたのだ。
「ちなみに武器使えるのか?」
「武器? 武器は持っていないけど魔法使えるからしばらくは無しでもいいかなって」
「ほう、杖もなしに魔法が使えるのか。ならここで買うより服屋行ったほうがいいぞ? あっちなら魔法使い用のが売ってるから、お前向きだ」
そう言われ、巧は少しばかり鎧を惜しんだが、ヴィッツの言う事を聞き渋々諦めた。
店を出て少しばかり歩くと、後ろから誰かついて来てる気配を察知する。
後ろを一瞥すると店の前で絡んできた男がいた。
撒こうと裏路地へと入るが、行き止まりであったため戻ろうとするが男が立って待っていた。
「残念だったな、行き止まりだ」
路地裏は大通りから離れていたため、叫んで人を呼ぼうとしても人は来ないと判断して、巧は諦める。
「カツアゲならお断りするよ」
「カツアゲ? なんだそりゃ? まあいい、怪我したくなければ有り金とその服を渡しな」
男はニタニタと笑い、手にはナイフを持ち構えていた。
言い訳をしようにも、先程巧は店で金をもっているとバレているので言葉で逃げる事は不可能。
「渡さないと言ったら?」
「無理やり奪うまでよ!」
そういった瞬間、男は飛び出そうとするが、巧はは迎撃する為に水のビームを放つ。
ビームはレーザーの一点集中とは違い広範囲にぶつける事が可能。
その為、勢いがレーザーよりも弱い。だが迎撃には十分向いていた。
水ビームは男の片足にぶつけた瞬間男の足は音を立てて折れた。
勢いをつければ人間の足ぐらい簡単に吹き飛ばす事は可能だが、巧の過去の経験により水の強弱や範囲の広さをつけることができるようになっていた。
「ぎゃあああああああ! 足! 足がああああああ!」
男は叫び足を両手で押さえていたが人が来る気配はない。
男を一瞥すると横を通り過ぎ大通りへと戻った。
服屋の店の前に到着した巧は中に入り店長に名前を言うと、提示できる金額で買える戦闘でも動きやすい魔法使いの服装とローブがないかと聞く。
「その金額でしたら服装とローブはこちらになりますね」
目の前にある服は茶色をモチーフとした服装。
今の服装よりもラフで外に出ても周りとの違和感ないのだが、触り心地は悪く気候が悪い所だと辛そうであった。
ローブのほうは、雨を凌しのげれるのみでならギリギリ合格点といった所だろうか。
巧は悩んでいると店長は巧にある取引を申し出る。
「お客様のその洋服と四角い物を売っていただけるのでしたら、ご希望以上の品を渡せるかもしれません」
どのようなのがあるのかを店長に尋ねると灰色の服と茶色のローブを持ってくる。
その服装は素材も厚く触り心地が良い。
「こちらの服は暑さや寒さ耐性小の付与付きで、破れにくい素材。更には汚れにくく、仮に汚れがついたとしても水で軽く洗い流せば落ちます。魔法によって生地も伸縮し装着者の身体に合わせてくれる一級品!」
巧はその店長の言葉を聞くと驚いた。
日本ではあり得ない性能なのだ。
「価値としても金貨十数……、いえ二十枚以上はあるかと。ローブも汚れ防止があり、熱と寒さ防水防音耐性小が付与してます。両方とも付与魔法のかけなおしもしなくてもいいのでご安心下さい」
それを聞いた巧はその服を試着する。
着心地がよかったのか、ジャンパーとズボンと財布を売る事を即決し店を出た。その顔はホクホク顔であり満足気であった。
だが、それは店長も同じであった。
ボタンなどはこの世界にも一般的に流通しているのだが、巧が着ていたジャンパーの材質も上質であり、特にスナップボタンとファスナー自体が珍しいので希少価値として高い為か、お互い利害が一致したのだ。
その後、靴屋に寄るが革靴は現代の靴とそこまで大差なかった。
ただ全体的に紐を使った靴が少ない印象を持つ。巧はオーダーメイドにしたが受け取りは後日でに足を運ぶことになる。
宿に戻ろうとした途中、巧はギルドの目印看板が見えると冒険者登録するためギルドへと立ち寄る。
扉を開け中に入ると、ギルド内の奥のほうから大声で口論していた男二人がいた。
ストーリーは思いつくんですが、今回使った魔法や装備に関して横文字が思い浮かばず。
服装に関しては無理やり感が否めないですね。
もうちょい自然に手に入れれるようにできればなあ・・・