新たな護衛依頼
ちょい一段落です
巧はヘルデウスの言葉に腕を組み考える。
そしてその答えを言葉として話す。
「申し訳ないけど、今はお断わりするかな」
「……予想はしていたけど、何故か聞いてもいい?」
「ああ、俺等は雇われて、一時的ならいいけどずっとその場所に留まるといった事はしないかな。だけど冒険者として依頼を申し込むなら受けるから」
「なるほど、形式の問題なんだね」
「そうなるかな」
「改めて君達に依頼を申し込みたいと思います。依頼内容は三日後、僕達はこの街を出発。ベルチェスティア王国へと向かい、その際の護衛を三人に頼みたいと考えていますがどうでしょうか」
巧はシロとリウスに視線を向けると、二人は拒否する事はなかった。
「俺達三人はその護衛依頼を引き受ける事にするよ」
「言ってくれると信じてたよ、ありがとう。ルイス、話したあれを渡してあげて」
「はいこちらに」
ルイスは巧達に袋を渡す、中身は金貨十枚入っていた。
「あれ? まだ依頼達成していないような」
「ええ、期間はまだありますが、もう大丈夫でしょうし。この依頼はここで達成したことにします」
「そうか、けど良いのか? 今こんな状態だし」
「元々父様が出した依頼ですし、ルイスもこの金額の予算を出してくれたから大丈夫だよ」
「わかった、受け取るよ」
巧は金を折半しインベントリに入れる。
「さて、それじゃ俺等はギルドに報告してくるよ」
「わかった、ルイスも連れて行ってくれないかな? ギルドに依頼申請してもらうので」
頷くと巧達はルイスと共に館を出るとギルドへ向かう。
「タクミ様、リウス様、シロ様、ヘルデウス様と仲良くなって下さりありがとうございます」
歩いているとルイスはそう言ってくる。
「あの子はあの歳で、色々重荷を抱え込み今まで以上に頑張ろうと必死になるでしょう。なので、歳の近い皆様方が友達になり心の内を開く事ができます。ですので……、私のほうからもよろしくお願いします」
「わかりました」
ギルド内に入ると受付に居たシファが立ち上がり、巧達の所へと近寄る。
「リウスちゃん大丈夫!?」
「う、うん……大丈夫です」
シファはリウスに抱きつくと尻尾を振っていた。
「シファさんリウスが苦しがってるし、そろそろ離してやってほしいんだけど」
「え? ああ、ごめんなさいね」
リウスは放されホッとする。
「申し訳ありません、一応は把握しておりますが、あちらでお話を改めて伺ってもよろしいでしょうか?」
「ああ、構わないよ」
ギルド内の一つの部屋に巧達は座り経緯を話す。
「そうですか伯爵様はお亡くなりになったのですか……」
「ええ、今はご子息でありヘルデウス様が継承し伯爵となりました。そう言えばシファさんは知らされたと言ってましたが、もしかしてルベスサに聞いたんですか?」
「確かに経緯をお聞きしました。あの夜中の空に赤く光る物など、そしたらタクミさんが丁度依頼を受けているので焦りました。それにあの光は何気にギルド内でも噂になっていましたよ? けど、解決したようなので安心しました」
「ルベスサはなんと言ってたの?」
「あの赤い光は暗殺者が持っていた対魔の水晶が暴発したと、その後暗殺者は”全員死亡”したと聞いております」
ルベスサは二人の暗殺者を眠らせ連れて行ったのは巧が一番知っている。
その後は巧が一緒について行かず任せた事に対して後悔していた。
「タクミ、大丈夫?」
リウスとシロは心配そうにタクミの顔を見ていた。
「ああ、大丈夫……大丈夫だよ」
その一言に安心するリウスとシロ。
ルイスは黙っていた。
「えと、シファさんが言ってる事であってます」
「そうですか、一応これで事実確認は終わりです。それで伯爵様の……ヘルデウス様は今後どうするのですか?」
シファはルイスに問う。
「ヘルデウス様はこの街をお出になり次第、ベルチェスティア王国へとお戻りになります」
「畏まりました」
「それで、ベルチェスティア王国までの護衛を依頼申請をタクミ様に申し込むため一緒にギルドに来た次第でございます」
シファは驚きタクミ達に、いやリウスのほうを向く。
「護衛終わったらまたすぐ戻ってきますよね?」
「いや……それはわからないな。向こうでも依頼を受けるかもしれないし」
再び会えなくなるのが寂しいのか悲しそうな顔をする。
「リウスちゃんは……」
「そんな顔をしてもリウスは置いていきませんよ?」
「そんなぁ……」
シファの耳は垂れ下がり悲しそうにしていた。
しかし目は諦めていないかのように巧を見ていた。
(う……)
根負けしたのか巧は溜息をつく。
「リウス、明日にでもシファさんと一緒に居てやれ」
「え?」
「これまで世話になった事もあったし、一日ぐらいならシファさんと付き合ってやってくれないか?」
シファは耳を立て尻尾を振るがリウスのほうを悲しそうに見ていた。
(顔は悲しそうにしてるけど内心喜んでるだろ絶対)
「う、うん。シファさんには世話になったしね。わかっ……た」
その言葉を聞いた瞬間シファは歓喜の表情をすると、シファが立ち上がる。
「大体話したと思うんだけど、他になければそろそろいいかな?」
「そ、そうですね。今回の依頼書のほうの返却をお願いしますね。依頼書の作成しますので受付へと戻ろましょう」
受付に戻るとルイスはシファに依頼内容を伝えると、シファは巧のドッグタグを受け取り、リウスを連れて奥の部屋へと行く。
助けを求めていたリウスだが巧達は助けず見守っていた。
「気に入られてるわね」
「ああ、リウスがここに来た時からシファはあんな感じだったわ。余程気に入られてるんだなって」
二人は戻ってくるとリウスは頭がボサボサになり、リウスは怒っていた。
「タクミー……」
「ごめんごめん、シファさんが余程嬉しそうにしてたから止められなかったわ」
シファは依頼書の羊皮紙とドッグタグを巧へと渡す。
「タクミさん、こちらが依頼書です」
ヘルデウス・ブリアン・ルポール・ハウリック伯爵の護衛
護衛募集 ★★★★★★
場所 ベルチェスティア王国
証明 なし
期限 到着次第
達成報酬 金貨十五枚
巧は依頼書を確認したのち受け取る。
「本来なら伯爵様の護衛はランクがもう少し上になるのですが、審議した結果皆様方のランクに合わせてこのようになりました。それからシロさん」
「どうしたの?」
「そろそろギルド登録の件、考えてみてはどうでしょうか? 実力も申し分ないので私達としても一人多くの冒険者様がいれば」
シロをギルドに連れて来た日からシファは何かを感じとり、ギルド登録させようと何度か勧めていたがそれでもシロは頑なに拒んだ。
「私はいいかな。登録しなくても、タクミの傍に居れれば十分。お金よりもタクミの手助けができれば嬉しいし。それにちょっとギルド登録できない理由もあるからね」
シファは溜息をつく。
「わかりました、無理強いはできませんし諦める事にします」
「悪いな、それじゃ依頼をもらうけど、これ返す時はこっちまで戻ってから渡せばいいの?」
「いえ、ベルチェスティアの城下町でもギルド本部がありますので、そちらの受付のほうに渡せば受理されます」
(何か魔法での通信手段があって伝わるのかな?)
そんな事を考えているとルイスが巧に近寄る。
「タクミ様、リウス様、シロ様、それではよろしくお願いします」
「ああ、わかった。ヘルデウスに当日はよろしくと伝えといてくれ」
「畏まりました」
ルイスはお辞儀をするとギルドを出て行き館へ戻る。
「さて、当日までに必要物買いに行こうか」
「そうね」
「うん!」
ギルドを出て準備をしに行く巧達であった。