通貨単位説明
この話も会話がメインです。
閉められた窓の隙間から差し込む陽射しに巧は目を擦る。
部屋には蛍光灯や蝋燭みたいな灯りらしき物は存在せず、窓を閉めていたら月明かりや街の灯り以外なら暗かっただろうと判断する。
現代社会の日本なら電気を使い、蛍光灯の灯あかりで完全に暗くなるといった事はないはずなのだ。しかし、ここは日本ではなく異世界である。
直接顔に光が当たってはいないが、部屋全体が少し明るくなっている。
呆けていた頭は次第に目が冴えて周囲を見回す。
「ああ、そうか。俺異世界に来たんだ」
寝る前までの出来事を思い返しベッドから起き上がる。
「今何時だろ?」
時計の針は九時と表示。
巧は気のせいだと思い二度見をしたがそれでも時間は変わらず。
「マジかー、結構寝てたのか」
巧は最後に時間を確認したのが昨日の朝七時頃。
あれから少なく見積もっても数時間経ち、朝じゃなくても昼ぐらいだったと予想する。ここに来たときは外は明るかったのでまず間違いないだろう。
それほど巧は疲れ果ててたのかベッドに飛び込むと同時に寝たのである。
「途中一回起きた気がするが、まあ朝飯食べにいくかな」
起き上がると、硬貨が重なり音が鳴る。
「あ、昨日服を売ったお金が入ってたんだっけか、一応どのぐらいか確認しとくかな」
お金を袋から出すと、色からして金貨四枚、銀貨二十六枚、銅貨五枚が出てくる。
この世界での通貨単位を教えてもらわないとな……。そう考えてからお金を袋に戻し一階へと降りた。
「よう、昨日は死んだようにぐっすり眠ってたな流石に心配したぞ!」
宿の亭主であるおっさんが声をかけ背中を叩いてきた。
「すいません昨日はとても疲れていたようなので……」
「そうだろうな。部屋に引きこもりっきりで降りてこなかったから、あいつに様子を見にいかせたからな。そうしたら寝ていると言ってやがった」
「あいつ?」
「ああ、俺の女房さ」
おっさんの後ろのほうを見ると、ふくよかな女性が巧を見て微笑んでいた。
「昨日は部屋に入ってごめんなさいね。亭主があまりにも心配していたから見に行ったのよ。ノックしても返事はないし、悪いとは思ったけど部屋に入らせてもらったのわよ? 息はしていたから一安心したけど」
昨日の夜中に、誰かが部屋に入ってきて確認する気配は巧は気づいていた。
「ごめんなさい」
「まあ気にすんなって、朝食食べるだろ? 先に顔洗うならそこの裏口から出ればすぐ近くに井戸があって、そこを利用すればいいぞ。その間に朝食用意してやるよ」
言われた通り巧は井戸へ行く。
井戸には一人の女性が顔を洗っていた。
髪は長髪で茶色のウィッグ、顔は整っており年齢としたら二十歳かそこいらの綺麗な若い女性。軽装の服に皮の胸当てを装備し地面には片手剣と盾があるので剣士だと一目でわかる。
巧は女性を直視していると、女性は巧に気が付き桶を貸す。
「ありがとうございます」
「君、初めて見るけど、最近ここに来たの? 見たことない服装をしてるから商人の子だったりするの?」
やはり巧が着ていた服はこの世界では珍しかったのである。
井戸から水の入った桶を引っ張り上げる。
「商人ではありませんよ? 昨日この街に来ました。お姉さんはこのゴブリン亭に泊まっているんですか?」
「ええ、仲間と一緒にね。君もここに泊まったの?」
「はい、ここが一番良いと勧められて」
「確かに安いし、料理美味しいし、あの人は顔怖いけど夫婦は仲良いからね。あとその喋り方、丁寧だけど崩した感じで喋ってもいいのよ? 私そこまで偉くないし……。と、邪魔しちゃってたわね。そろそろ仲間が待ってるから行かなきゃならないの、ごめんね」
「うん、わかった話できて楽しかった」
女性は手を振りゴブリン亭へと入って行き姿を消した。
(朝から綺麗な女性と話せてラッキーかも……。あ、名前聴くの忘れてたがまた聴けるだろ)
桶に入った水を両手ですくいあげようと桶に手を入れたとき、左手に血糊が付いている事を思い出し洗い流す。
顔も洗いその際、水魔法で物体を包み込む練習もした。
ゴブリン亭へと戻るとおっさんが朝飯の用意をされていた。
「遅かったな、顔を洗うのにどれだけ時間がかかったんだよ」
「すいません、ちょっと女性と話し込んだあと顔洗う序でに水魔法の練習をしてまして」
「ほお、魔法が使えるのか小せえのに中々やるな! だが飯が冷めちまう、手前はただでさえヒョロッこいのに倒れでもしたら大変だろさっさと食いな!」
代金を払い飯を食べる事に、昨日と同じで野菜と肉炒めにスープであった。
昨日から食べてなかった心配からか、量は少し多いが軽く平らげる。
「今日も良い食べっぷりだな、そういやこの後どうするんだ?」
「まずは冒険者ギルドで登録しようと思いたいんですが、先に防具と服と靴を買いに行きたいなと思っています」
一度も着替えていなく、服とズボンと靴がぶかぶかなのだ。
「そうか、結構金かかるが大丈夫か?」
「はい、ここに来る前にお金は手に入ったので大丈夫がだと思いますが、実は田舎から来たせいかお金の単位がよくわからないんですよ。教えてもらってもいいですか?」
「何だ坊主は珍しい物着てるし商人じゃないのか、仕方がない教えてやるよ」
ルぺ=日本の”円”単位。
硬貨=銅貨、銀貨、白銀貨、金貨、大金貨、白金貨、大陸によっては黒金貨や王金貨の九つ。
硬貨価値は十倍ずつに増え、白銀貨から白金貨まで百倍ずつ必要になる。
つまりは……。
銅貨が十枚=銀貨一枚。
銀貨が十枚=白銀貨一枚。
白銀貨が百枚=金貨一枚。
金貨百枚=大金貨一枚。
大金貨百枚=白金貨一枚。
こう計算されるのだ。
「なるほど色々あるんですね、ありがとうございます」
「良いってことよ、あとその喋り方やめねえか? 商人や上位冒険者なら貴族相手に上流階級の言葉を喋らないといけないらしいが、俺らはそんな硬い言葉で喋らなくてもいいんだぜ? それに何だか聞いてると何だか背中が痒くってよ」
「わかり……わかった」
その後、おっさんから鎧屋、服屋、靴屋の場所を教えられる。
「防具ならヴィッツって店が開いてるかもしれねえから寄ってみな」
巧は礼をして店を出た。
おっさんマジ親切