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神隠しによる放浪記  作者: レブラン
第三章
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食事と会話

 ウルラヌスの死体は兵士の死体と共にスライムに食べられ消滅する。

 部屋戻るとヘルデウス、巧、リウス、シロがそれぞれ椅子に座っていた。


「まずは改めて感謝致します」

「結局悲惨な状況であるので感謝されるほどではないと思いますが」

「確かに今回は悲惨ではありますが、今後は僕がこのハウリック家を引っ張っていきたいと思います」


 父親の死を乗り越えていたヘルデウス。

 その顔は覚悟を決めている大人の顔である。


「タクミさん、今回の依頼を確認してもいいですか?」


 巧は依頼書をヘルデウスに渡す。


「なるほど、盗賊討伐とその護衛依頼でしたか」

「そうですね、今回はウルラヌス様とヘルデウス様が護衛対象でした」

「父様は亡くなりましたが、伯爵として僕が残っています。もう盗賊やなどはいないと思いますが、期間内までは引き続き護衛のほうをお願いしてもいいですか?」

「畏まりました」

「あ、タクミさん」


 巧は立ち上がろうとするがヘルデウスに止められる。


「どうしましたか?」

「その、僕の事を敬称ではなく対等に話してほしいのですよ。ヘンリーを除けば年齢が離れている人ばかりなので……、もしよければ友達になってくれませんか?」

「……ただし、こちらからも一つ条件があります」


 ヘルデウスは条件と聞き神妙な顔になる。


「何でしょう?」

「ヘルデウス様も私達の事を敬語を使うのやめて、ため口で話してもらえないでしょうか?」

「ため口と言うと対等にって事ですか?」


 巧はその言葉に頷くとヘルデウスは明るくなる。

 巧は立ち上がりヘルデウスに向かい手を差し伸べた。


「よろしくなヘルデウス」

「こちらこそよろしく、タクミ、リウス、シロ!」


 ヘルデウスも立ち上がると嬉しそうに巧の手を握り握手をした。


 ――――時間も過ぎ深夜0時を過ぎた時、巧は館の中を見回っている。リウスとシロは部屋で休息をとるために寝ていた。

 辺りを見回しても綺麗にはなっているが、暗殺者との剣戟けんげき後や窓が割れていた。

 その有様は戦闘の傷跡を残すには十分な痕跡であった。


(ひどいな、あのドアも壊されてるし……ん? 確かこの部屋は)


 巧は部屋の中に入ると部屋には椅子や机が全て壁にくっ付いて、他の部屋よりも大き目の窓は割れ、風が流れ込む。

 そう、今巧がいる部屋は、ウルラヌスが死んだ応接室。部屋は片づけられ、スライムによって血の跡も血なまぐさい匂いも死体もなくなっていた。

 巧は部屋の中を見回していると、剣を抜く音がして若い男の声が響く。


「そこのお前、ここで何している!」


 巧は振り返ると顔は十代後半で青年の兵士、ヘンリーが立っていた。


「ああ、ヘンリーだっけか、助かってたんだな」

「お前か、また暗殺者がいると勘違いしていたよ。俺はあの盗賊相手に立ち向かってみたが運よく生き残って、仲間は皆……、そういやお前達のおかげでヘルデウス様は助かったそうな。俺からも感謝してるよ」


 ヘンリーは剣を収めると巧に握手をする。


「どうだろうな、俺達がいなくてもルイスさんが助けてくれてたとおもうし。しかし、ヘルデウスは慕われてるな」

「そりゃそうさ、あの人がいなければ今頃俺は野たれ死んでいたかもしれないんだから、この恩は返していきたいと思ってる。それに俺以外にもこの館にいた人達はヘルデウス様にルイスさんや兵士長が拾ってくれた人達ばかりだし」


(上の者がしっかりしてると下もついて行くって感じか)


「それに心が広いって言うのかな。俺より年下なのに頑張っているし」

「そうだな、確かに当主としての器はあるかもね」

「わかってるな、俺はそろそろ見回りしなおすよ」


 そう告げるとヘンリーは部屋を出て行き館を見回りし、残された巧も部屋へ戻り休む事にした。


 朝、巧は部屋のドアに近づく気配で起きる。

 ドアは少し開かれると誰かが浸入してくるのがわかると、寝惚けていた巧は頭を覚醒させ警戒する。


(暗殺者か? いや、この気配は違うな。まさか……)


 浸入してきた人物に巧は布団を掴み放り投げぶつけるが、侵入者は予想していたのか避ける。


「チッ!」


 巧はベッドから飛び降り魔法を放とうと手を前に出そうとしたとき、侵入者の手が伸び巧の腕を掴むと侵入者の体に引き寄せられる。


「タクミぃ~おはよ~、今日も朝から激しのが好きね」


 そんな猫なで声を出す侵入者の正体はシロであった。

 普段装備している身軽そうな革製の鎧を外していたのか、その鎧の内側に着ている衣服で巧を抱きしめていた。


(ちょ! 胸! 顔に胸が! 嬉しいけど苦しい!)


 巧の身長よりも高いシロは巧を抱きつく際に、胸の位置に顔を埋めさせていた。

 巧は息ができない苦しさからか必死に離そうとしても、シロの力が強く離す事ができない。


(や、やばい……このままじゃ窒息しちまう……)


 手をシロの体に何度か叩くが、シロはその意味を知らず余計に力を入れて巧を殺しにかかろうとする。

 そんな時、シロと巧から無理やり離した人物が現れた。


「もうシロさん、部屋にいないと思っていたら、ここでって……シロさん! タクミが苦しがってるよ!」


 そう、リウスである。


「あらそうなのかしら? 私はてっきり嬉しがって離れないと思っていたわよ。だからさっき巧を抱きしめていたのよね」


 リウスはその言葉を聞くと巧に視線を向けた。


「いや……その……」


 巧は慌てて否定しようとするが、シロの言っていた事が事実でもあった為か何も言いだせなかった。

 リウスは何を思ったのか巧の顔を持つと、リウスの胸に押し当てる。


「タクミ……どう?」

「……嬉しい……です……」


 巧は小恥ずかしいのか離れる事ができず、リウスの顔も見れない。

 リウスもハッとして自分のした行為に急に恥ずかしくなったのか、巧を慌てて離すと、後ろを振り向き両手で隠すように胸を抱きしめていた。


「リウ」

「ここにいらっしゃったんですね。皆さま、おはようございます。朝食の用意ができていますので食堂へとお越しくださいませ」


 ルイスが部屋へと入り朝食の準備が告げられると、慌てて飛び出すと続いてルイスも後を追うように部屋から出て行った。リウスの顔は嬉しそうにしていたが巧は気が付いていなかった。


「俺等も行こうか……シロ?」


 シロは少し怒っていた。


「タクミ……私のはどうだった?」


 シロに対する嫉妬でもあり対抗意識なのか。

 手を胸に当て巧に感想を求める。


「あー……正直……すごく良かったよ。けど苦しかったけど」


 笑いながら頬をかく巧を見て、シロは嬉しそうな顔をする。


「タクミ行こ!」


 シロは巧の手を取り食堂へと向かった。


「おはようタクミ、シロ、リウス。どうぞ座って食事をしましょう」

「おはようヘルデウス」

「あら、おはよう」

「おはよう……ございます」


 リウスはため口ではまだ慣れていないのか敬語で話す。

 巧達は席に着くと長テーブルの上にはそれぞれ、水、パン入れの皿に丸パンが複数個。各テーブルの上に置かれている皿にはそれぞれ卵焼き、ハムのような肉、ジャガイモが乗せられ、そして野菜スープなど。皿の隣にはフォークとナイフが並び、日本でも馴染み深い食事が並んでいた。


「どうしたの? 気にせず食べてよ、タクミ」

「ああ、何か宗教的な物があってそれをするのかと思ってたわ。それじゃいただきます」


 巧が手を合わせ挨拶をすると食べ始めた。


「タクミは珍しい挨拶をするんだね」

「ああ、これは俺の故郷での特有の挨拶だよ。いただきますは”食材に対して感謝の気持ちを込め頂く”ってのは聞いた事あるからね。二人は俺とは違うけど俺の真似をしてるって感じかな」


 巧はふと周りを見渡すと、ルイスやメイド数名が立っていた。


「どうしたの?」

「いや、他の人達は一緒に食べないのかなって」

「タクミ様、ヘルデウス様はこの館の当主でありますので私達と一緒に食事をとるなど以ての外なのです。私達はヘルデウス様が食事終わり次第頂くつもりです」

「へえ、そうなんだ。なら今まで一人で食べてたの?」

「そうだね、僕が食べ終わってから皆が食べ始めるといった感じかな」

「なんだかそれ寂しくね? 折角一緒に住んでるんだし一緒に食べて喋ったりすりゃいいのになって」


 ヘルデウスは少し考え込む。


(あ、しまったな。何も考えなしで喋ったが貴族だからこういった事にも厳しいのか? 口出しするべきではなかったか)


 巧は口を開こうとしたとき、リウスが話す。


「ヘルデウスさ……ん、私はタクミが来てくれる前は一人で食事をしていたの。けどタクミが来てから食事をするときもお喋りできて、すっごく楽しくなったの! だからヘルデウスも一緒にルイスさんや兵士さんやメイドさん達と一緒に食べて楽しくお喋りすれば楽しくなると思うの……です」

「タクミ様、リウス様、大変ありがたいお言葉でした。確かに私達もヘルデウス様が一人でお食事をなされている時は、とても寂しそうだと感じていました。しかし、私達の主であるヘルデウス様が……」


 ヘルデウスは手を上げルイスを止める。


「ルイス大丈夫。確かにタクミとリウスの言ってたように、少し寂しかったかもしれません。父様がこちらに来てからも私と一緒にとる事はありませんでした。ここで働いているルイス、それにメイド達に兵士達、君達は僕らの家族だ。全員とは言えないけど一緒に食事をとらないかい?」


 ルイスとメイドは嬉しそうな顔をし、頭を下げた。

 その後はヘルデウスを中心とし、ルイス、メイドや兵士、巧、リウス、シロとテーブルを囲んで食事を行った。


 食事も終わりヘルデウスは部屋に戻ると巧達を部屋に呼び、そしてある事を巧達に問いかけた。


「タクミ、リウス、シロ、君達三人の活躍を見て今後正式にハウリック家として雇いたいのだけど、どうかな?」


 巧は答える。

積極的なシロに対して消極的だが頑張ろうとするシロを書いてみました。

結局両方積極的になったけどね


あと正直執筆してて巧が館の中歩き回るシーンいたのかなと疑問に思いましたが載せときました。

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