ルイスの心情とその思い
何気に長文が多めです。
短くしようと思ったんですが思い浮かばず
部屋は散乱し所々焼け焦げ、ヘルデウスとルイスと兵士長がリウスとシロを止めているような光景になっていた。
「ルイスさんとヘルデウス様これはどういうことでしょうか?」
「あ、タクミさんも二人を止めて下さい」
「タクミ聞いてよ、この子がね」
「シロさんがヘルデウスさんの気持ちを考えてないから悪いんです!」
巧は手を何度か叩き注目させた。
それぞれを落ち着かせ、ヘルデウスとルイスを椅子に座らせ、話し合いをさせる雰囲気を作り出す。
巧も椅子に座り、左右にはリウスとシロを立たせ、兵士長は近くで待機する。
「さて、まずは話し合いからですが。ルイスさんが何故ウルラヌス様を暗殺するまでにいたったかの経緯を聞きます。いいですか?」
ルイスは頷くと語り始める。
「私はハウリック家に仕える前は現役の兵士、執行官をしていました。歳の所為か退役する事になり、その後は功績により隠居はせずどこかの貴族の執事兼傭兵として雇われる予定でした。私は遂に城の兵士とし退役する日がきてしまい、次に仕える貴族の待つ館に行くと一人の女性と出会うことになります。それがマーベラス様でございます」
「母様……」
「マーベラス様はとても美しく魅力的であり、しかし体が弱かったらしく誰かに支え、付き添われていないと外出さえも厳しいと言われていました。その為ベッドに寝たきり何て事も多々ありましたが、彼女は健気にも頑張っていました。そんな彼女を見て私は年甲斐もなく惚れてしまったのです」
(世話をしていくうちにこの娘を守らなくちゃって感じになったのか)
「マーベラス様と私はしがない執事とその雇い主の伯爵家のご令嬢、身分も立場もそして年齢も違い私は見守しかなかったのです。そんなある日、マーベラス様に見合いの話が持ち上がりました。その相手がウルラヌス、つまりはマーベラス様の婚約者です」
ルイスは少し口を閉じ視線を下に向けた。
当時の事を思い返したのか、小さく息を吐くと再び語り始める。
「当時のハウリック家の伯爵夫人で在られたメビル様は、マーベラス様と同じく体力も無かった為、マーベラス様をお生まれになられたと同時に亡くなられたと聞いております。元々ハウリック家はマーベラス様の家系なのですが、入籍してからウルラヌスもハウリック家の一員になったのです」
「婿養子ってやつですか、なら、伯爵って普通婿養子じゃ当主が亡くなっても継承される事はないのでは? それとも血が繋がっていてるとか?」
通常で考えれば爵位を継承するのは血族か親戚でしか不可能なはずであった。
ウルラヌスみたいに、血の繋がっていない者は爵位を持つ事はできないはずなのだ。血族であれば一応は血の繋がりである為、特に問題はないだろう。
「父様は完全に血は繋がっていません」
そう断言するヘルデウス。
そしてベルチェスティア王国の特殊な事情を知る事となる。
「爵位は父様と同じように他所から婿として入ってこられても、当主が死ぬと受け継ぐのは第一夫人の血族のみ。このベルチェスティア王国では、優秀であれば男女問わず爵位を与えられ名乗る事ができます」
ルイスが続いて語る。
「ハウリック家のように、何かしらの事情あり周りから認知されれば、婚約されればウルラヌスみたいなのにも“仮”の爵位の継承を認められます」
(なるほど、うまくハウリック家に潜り込めたウルラヌスはそのまま伯爵と言う地位を手に入れたわけか)
だが巧は疑問に思う。まだこれだけでは暗殺すると言う理由にはならないと。
「けどそれだけじゃ殺す理由にもならないよね」
「はい、実はウルラヌスがハウリック家に入るまでに、有利になるよう仕組まれていました」
その言葉にヘルデウスや兵士長、リウスは驚く。
「仕組まれていたなら何で止めなかったんですか?」
「それを知ったのは今から二年前……、ウルラヌスが酒に酔い部屋で客人と話をしてるのを、私はたまたま立ち聞きしてしまったのです。あの男はこのハウリック家の事情を知り狙って当主に気に入られるよう細工し、入り込めたら当主を毒殺。あとを追うようにマーベラス様の容体が悪化し亡くなられハウリック家はウルラヌスの手中に抑えれたと…………。今思えば当時のウルラヌスの挙動は怪しかったので、早く行動すれば証拠を掴めれたかもしれません」
ルイスは気づけなかった悔しさからか両手を握り締め、歯をギリっと強く噛む。
「話を聞いたその当時に殺そうとしても、ウルラヌスは他貴族との根深い関係になっており、私のみだけならまだよかったものの、ヘルデウス様がおられたので下手に暗殺する事が不可能になってしまったのです」
(もし安易に殺してしまうと他貴族にハウリック家が取り込まれる可能性が強かったからかな? まあそれに誰が暗殺をしたかの動きをつかまされるのもまずいんだろうし)
「そこでウルラヌスからヘルデウス様遠ざける為、ベルチェスティア王国から離れさせる提案をした所、ウルラヌスは断る理由もなくすんなり承諾しこの街へと来れました」
「なるほど、それでウルラヌスの代わりにルイスさんがついて来たんですね」
「その通りでございます。それに私は正統な血筋であるマーベラス様やヘルデウス様に仕えるならまだしも、ウルラヌスに仕える気は毛頭ございません」
まだ疑問に思う事があるので聞く。
「それにしても、貴族関係なら別に幼くても社交界に出れるんじゃないのですか?」
「はい、可能ではあり過去にもそう言った事例はございます。成人として認められるのは一般に十五歳からですが、一応社交界での顔見世においては十二歳からと決められており、ヘルデウス様はまだその年齢に達してはいなかったのです」
「なら今回ウルラヌス様がこの街に来た理由は?」
ヘルデウスは巧の言葉に対して口を開く。
「僕が十二歳になったので、父様がハウリック家の時期当主としての顔見世兼城で行われるパーティーに出席させ、貴族達に知らせる目的だったのでしょう。少なからず僕を必要な道具だと考えられます」
先ほどのルイスの言葉を理解して、自分が父親であるウルラヌスの駒であり道具だと理解したヘルデウス。貴族としては自分が優位に立てるよう使える物は多いに越したことはない正常な物だと理解している巧だが、ヘルデウスを見ると内心何とも言えない気分になる。
ルイスも巧と同じ気持ちなのだろうか目を瞑り悲しそうな表情をする。
「ルイス、あなたの気持ちはわかりました。母様に対する想いも、父様に対する思いも、僕にハウリック家に対するおもいも」
ルイスは目を瞑り、ヘルデウスの言葉に耳を傾けている。
「父様亡くなった以上、何を思っていたのかはわかりません。話をすることもでないが、ルイスの言葉通りなら悪い事もしたのでしょう。だけどルイスはハウリック家を想い、そのような行動をとったのでしょう」
ヘルデウスは椅子から立ち上がるとルイスを見つめ、威厳を込めて言い放つ。
「僕は、いえ……ハウリック家当主としてルイス、あなたを許します」
その顔は十二歳の少年ではなく一人の大人として当主としてあった。
ルイスは目を開き立ち上がり、巧はそんなルイスの言葉に驚愕した。
(本当に十二歳かよこの子……)
「ほ、本当に……本当に私は許されるのでしょうか? 私は許されない罪を犯しました。裏切るような行為をしました、ヘルデウス様に恨まれ殺されても仕方がないほどに。今すぐ目の前から消えろと仰られれば、私はこの場からいなくなる事も厭いません」
ヘルデウスは首を振り、それでも許す感じであった。ルイスにとってヘルデウスは教育者であり、育ててくれた親代わりのようなもの、罰する事ができないのだ。
巧は手をあげルイスとヘルデウスに問う。
「ヘルデウス様、このままではルイスさんは自身罪悪感に押し潰されるでしょう。そこで私から提案があります。今後も引き続きルイスさんは執事兼教育者兼護衛者としてヘルデウス様を教育し兵士達を育てあげるのはどうでしょう? 格段に強いので護衛としても優秀だと思います。このままいなくなってしまっては正直、勿体ないと思うのですよ」
巧の言葉にヘルデウスは頷く。
「そうですね、巧さんの意見に僕も賛成です。僕もルイスには居てほしいと思っています。あなたは僕の人生の先輩であり、先生であり、親であり、そして大切な家族なんですから。これからもいて下さい」
「は……はい、畏まり、ました……」
その言葉を聞いたルイスは許されたことに対して涙を流し号泣した。
巧はリウスに視線を向けてみると、口元を抑え涙を流し、シロに視線を向けると、興味なさげにしていたが手は巧の肩を置いていた。序でに兵士長を見てみると兵士長も涙を流していたのか目元を指で拭っていた。
「タクミさん、シロさん、リウスさんありがとうございました」
巧は立ち上がると、拒否するように手を振る。
「いえ、これはヘルデウス様が考え決めた事です。私はただの提案をしたにすぐぎません」
「そんな事はありません、タクミさん達がいなければ僕は今頃どうなっていたかわかりませんし、ルイスがいてくれる決断をしてくれたのもタクミさんの後押しのおかげです」
「私からもお礼を言います。タクミ様、リウス様、シロ様ありがとうございました。ルイス様は私達にとっても親代わりなので居なくなったら私達は悲しみました」
巧からしたら、あれだけの人材をいなくなるのは勿体ないと思ったからである。今後の練習相手をするにも悪くなく、それにヘルデウスの為と思って提案しただけなのだ。
リウスとシロを見ていると共に微笑んでいた。
巧は小恥ずかしくなったのか話題を振る。
「解決もした事ですし、あの暗殺者達に殺された人達はどうするんですか?」
「死体は庭に集めてスライムで食べさす事にします。館内の血もスライムによって吸われるので綺麗にはなると思われます」
(吸引力のあるスライム、本当便利だな)
「ヘルデウス様はタクミ様と一緒にここに残って入て下さい。私と兵士達とメイド達で館内と庭の死体を片づけますので。頼みましたよ」
兵士長は頷くと館内の兵士を集める為に部屋から出て行った。
ルイスも続いて部屋から出ようとしたとき、振り返ると
「ありがとうございました」
そう言い残し部屋を出て行った。
ルイスは外に出ると、ある事を思い出していた。
――――マーベラスの部屋でヘルデウスは五歳の誕生日パーティーが開かれる。
体調を崩し顔色が悪くベッドで休むマーベラス、お祝いする為にルイスはプレゼントを渡すとヘルデウスは嬉しそうに飛び跳ね喜んだ。
その光景に微笑むマーベラスにルイスにメイド数人に兵士長含める数人の兵士達。だが、その場にはウルラヌスはいない。
その日の夜、マーベラスのベッドにヘルデウスは眠っていた。
ヘルデウスは何かを察していたのか一緒に寝ると駄々をこね、マーベラスのベッドで眠る。
部屋にはマーベラスとヘルデウス、そしてルイスがいる、邪魔しないよう部屋から出ようとしたルイスを止め、マーベラスはある事を言う。
「ルイス、お願いをしても良いかしら?」
ルイスは振り返りマーベラスの近くまで来ると手を胸にあて返事をする。
「何でしょうか」
「私はもう、死期が近いの」
そう、マーベラスは自分の死期が近い事を悟っていた。
「そのような事は言わないで下さいマーベラス様。生きて、元気になって一緒にヘルデウス様を見守りましょう」
「ふふ……ありがとうルイス、けどいいの……。私が今どんな状態になっているのか、あなたの顔を見ればすぐにわかるのよ? けどそうね……心残りとしたらこの子の成長を見守る事ができない事かしらね……」
マーベラスは隣で寝ているヘルデウスの頭を髪の毛を触り撫でている。
「だからこの子をルイス貴方にお願いしたいの、この子の成長を見守ってほしい。あの人は、この子に興味がないかもしれないけど、ルイスそれでも恨まないでほしいかな」
少し微笑むマーベラス。
ルイスは手を胸に当て少しお辞儀する。
「畏まりました」
「ふふ、ありがとうルイス」
「今日はお疲れでしょう、そろそろお眠り下さいませマーベラス様」
「そうするわね」
マーベラスはヘルデウスの頭を触ると安心する。
そして、”ルイス、この子の事をお願いね……”と言い残すと、ゆっくり目を閉じ息を引き取った…………。
「畏まりました。マーベラス……様、お疲れ様でした。そしてゆっくりお休みして下さい……」
一滴の涙がルイスの顔から零れ落ちる。
――――ルイスは空を見上げ。
「マーベラス様、ヘルデウス様は御立派に成長なされております。今度こそ私は役目を果たしますので、どうぞ見守っていて下さい」
――――頼みますね――――
ルイスはそんな言葉が聞こえたような気がして、辺りを見回したが周りには誰もいない。
だが実際聞こえたのだ、ルイスは微笑んだのちに歩き出す。
ウルラヌスと貴族、そしてマーベラスとルイスにヘルデウス
どうするかを考えこうなりました。
おかしくなければいいんだけどねえ・・・
ちなみにマーベラスがルイスの気持ちに気づいてたかは読者様のご想像にお任せします。