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神隠しによる放浪記  作者: レブラン
第三章
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仮面の人物と決着

前回と違い今回は長めです

「やばいな……まだあんなのが残ってるなんて……」


 巧が後ろを確認した時には全員が向くことに巧は焦る。

 感知能力の低い人間ならまだしも、巧はスキルにより何とか気配は察知できた。しかし、この中で一番感知能力が高いシロまでもが気づかせれなかったとなると、相当な使い手だと言う事になるのだ。

 ヘルデウスと兵士長、それにリウスを下がらせると巧とシロは前に出て迎撃準備をする。


「シロ、あいつは相当やばいそうだから気を付けろ」

「そうね、私にあの距離で気づかせないなんて」


 仮面の人物と巧達との距離にして三十メートルほど。

 巧は手を仮面の人物へ向け、シロは剣を抜きいつでも迎撃準備をする。

 だが敵だとまだ確信できない巧は叫ぶ。


「念のために聞いてみるが、この暗殺者の仲間じゃないなら今すぐこの場から引いてくれ!」


 仮面の人物は返事はしない代わりに、両手を握り構えると殺気を放ち戦闘態勢に移るこれが返事だった。


「シロ勝てるか?」

「勝てるんじゃなく、勝つんでしょ。そうしないと私達まずいかもね」

「ああ、悪い。そうだよな…………少し弱気になってたわ」

「それじゃ、いくね。光斬!」


 仮面の人物は光斬が目の前に迫ってきても動かない。光斬を見て諦めたわけでもなくただ構えているだけ、巧は疑問に思えたその時。仮面の人物は魔法を唱えたのか、両手は肌色から灰色へと変わり鋼鉄のような硬い雰囲気をただよわせ、光斬の光を反射し光り、そして迫ってくる光斬に向かって……殴った。

 すると光斬は鋼鉄の拳とぶつかると、金属音が鳴り響き仮面の人物の周りに少し風が吹くが、光斬は消え去った。


「うそぉ……」


 巧は呆気あっけにとられた。

 斬れるわけでもなく仮面の人物の手を開いたり閉じたりして無事なのを確認すると再び構えると……飛び出す。


「……行くわね」


 シロは地面を蹴り上げると仮面の人物に向かって剣を振るう。


 拳と剣が混じりあい、金属同士のぶつかりあいによる甲高い音が幾度か鳴る度、仮面の人物とシロとの間で金属特有のぶつかりによる火花が散る。


(撃てねえ……)


 剣士として巧よりシロのほうが上なのだが、それでも相手は上手く弾き、更には巧とリウスに警戒もしているのかシロと被って撃てない。いや、撃つとシロが誘導されてしまうので撃たせないと言ったほうが的確なのだろう。それほど相手は相当な実力者でありシロは一本しか剣を持っていないが、それでも強いはずなのだが苦戦してしまう状況なのだ。

 巧はチラっとリウスに視線を移すと、リウスは杖魔祖を仮面の人物に向けているが、巧と同じように撃てなく困っていた。

 シロに視線を再び戻すと、仮面の人物は剣を掴み何かを放とうとしていた。


「シロ、後ろに高く飛べ!」


 巧の叫びと同時にシロは剣を離すと、タクミとリウスはすかさず魔法を放つ。


「水ビーム!」

「炎硬弾!」


 水ビームと炎硬弾が仮面の人物へと撃ち込むが距離もあってか容易に躱され外れる。

 シロとの戦闘もあったのだが顔は仮面に隠れているが疲れている様子もない。

 シロは巧の近くに着地すると巧達に話しかけた。


「全く強いわね、しかも本気じゃないようだし」


 その言葉に巧とリウスは頷く。相手は現状のシロよりも各上なのだ、つまりは巧やリウスよりも上と言う意味にもとれる事になる。それほどまでの力量差があるのだが巧は疑問に思う。


(何故、これだけ強いのに俺達を殺さない……さっきの交戦でシロを殺せたかもしれないのに?)


 巧は一つの仮説を思い浮かぶ。


(もしかしたら、殺さないんじゃなく殺せない? シロを殺せないとなると他に、この暗殺者と同じでヘルデウス狙いか? けどそれならシロを殺してもおかしくないが、あの女は帰ったら殺されるとも言ってたし、仲間の救出とも思えない……危険な賭けだが試してみるか)


 巧はシロに小声で話しかける。


「(シロ、これから俺がする事は危険だろう、最悪死ぬかもしれない。そしてお前はヘルデウスとリウスを抱えて可能性があるギルドまで逃げろ、そしてシファさんに伝えてギルド冒険者集めてくれ)」


 その言葉にシロは驚いた顔をし、何かを言いたげだったが巧の横顔を見て察すると口を閉じ噛み絞め黙って頷く。勿論、巧の実力からして勝てないのは明らかだ。

 しかし、このままでは全滅する可能性があると考えたからか、少しでも生き残る可能性があるほうを求め巧はシロに言った。

 巧は手をロープで縛り上げている暗殺者達向け、先程交戦をしていた仮面の人物に対して言い放つ。


「さて、そこの仮面の人。俺のさっきのビームをうまく避けたな、けど威力と速さわかったよね。あんたは避けれたけどこっちの仲間はどうかな? 俺が撃てばこいつらは死ぬぞ?」


 巧は相手より優位に立つようにを見下すような言い方をし、尚且つ相手の動向を伺った。

 仮面の人物は巧の事を気にする様子もなく歩いて向かってくる。


「水レーザー」


 暗殺者の近くの地面に水レーザーを放つがそれでも歩くのを止めなかった事に対して舌打ちをする。

 

「やっぱ無駄か……シロ!」


 巧は風魔法を使い動き出すと同時に、シロはヘルデウスとリウスを両脇に抱え場から離れる…………はずだったのだがシロは踏みとどまると巧の腕を掴み止めた。


「シロ! 俺を止めずに二人を連れて行け!」

「やっぱり嫌よ。だってタクミ私達を置いて死ぬ気だし、タクミが死んだらこの世界にいる意味が無くなっちゃう、そしたら私も死ぬわよ?」

「タクミ……今の話本当?」


 巧は振り向かないがリウスが巧の事を心配し、訴えかけるのが巧にはわかる、そして嘘は付けない。


「ああ、本当だ。今逃げてくれないと全員こいつにやられるだろうから。だから」

「嫌!」

「いいからヘルデウスを連れて逃げろリウス!」

「それでも嫌! 私もタクミがいないと……それに私との約束守ってくれないの? タクミは嘘付くの?」


 巧はリウスとした約束を思い出していた。

 一緒に旅に出て色んな世界を見回すと言う約束を。


「嘘……なんかじゃない。だけどこのままじゃ」

「なら一緒に戦って勝とう……ね。そしたら約束も守れるでしょ?」


 巧は顔を横に向けると、リウスが近づいていたのか顔が近く、巧に訴えかける。そして、巧は二人に折れたのかこれ以上言うのを諦めた。


「わかったわかった、それじゃ全員生き残ろう」

「うん!」

「俺が攻めるからリウスは後衛で補佐、シロはこれを持ってヘルデウスを守ってくれ」


 シロは剣が奪われたままだったので、巧は腰に付けていた短剣をシロに渡す。


「しかし、それにしても待ってくれるとは」


 巧は仮面の人物に向きなおすと、何故か肩を震わせお面に手を当てていた。


(何だこいつ……。撃ってもいいのか? いいよな?)


 巧は仮面の人物に向かって水ビームを放つが避けられ。着地した所にリウスの炎硬弾が放たれるが再び避けられる。


「流石に遠距離じゃ無理か。水剣!」


 巧は風魔法を使い近づくと水魔法で剣を創り振り被る。


 仮面の人物はシロから奪った剣を振り弾く。

 上からの唐竹を弾かれ、左肩から狙いの袈裟切りを弾かれ、右方からの逆袈裟を弾かれ、右腰からの右薙ぎも弾かれ、左脇腹からの左切り上げも弾かれ、股下からの逆風も弾かれる。


 このままじゃ拉致が開かないと感じた巧は一度離れようとするが、仮面の人物も巧に近づく。


「くそ、反応はえぇ……。このままじゃ! 【風壁ふうへき】!」


 巧は対決する際、近距離戦での想定をしていたのでこの魔法をあらかじめ考えていた。強烈な風の風圧によって、仮面の人物ぶつけ吹き飛ばす。その光景を見ていたシロは巧との戦いで、自身にぶつけられた風の正体を知った。


「あの時の風はこれだったのね」


 そう呟くがその言葉は誰にも聞こえていない。

 仮面の人物は吹き飛ばされるものの空中で体勢を立て直し綺麗に着地すると顔を頷き、その光景は少し嬉しそうに見え、そして持っていた剣を手放した。


「まさか……」


 巧にはその行為が何を意味しているのか予想がつく。武器を手放すと言う事は素手で対峙すると同義なのだ。普通なら武器を捨てると弱くなるはずだろうが、先ほどシロとの対決で素手が鋼鉄に代わり苦戦を強いられていたのを思い出す。


「させるか! 水ビーム!」


 仮面の人物は足を勢いよく一踏みすると手を前に差し出しオーラのような光を体全体から発せられると、二十センチほどの大きさになっている水ビームを受け止める。


「なっ!」


 巧達は驚く。巧だけではなくシロもリウスも水ビームの威力を知っていた。

 通常の水ビームよりも範囲が広くなっていた。それでも真正面から受け止めると言う事は骨が折れるだけじゃ済まされない威力があり、下手したら死に至る可能性もある。受け止める事自体、自殺願望で正気の沙汰じゃないのだ。

 だが仮面の人物は受け止め、自身の身体を確認すると何事もなかったかのように動かせている。


「まさか、あれをくらって平気とか」


 巧がその光景を見て気圧されてしまったのか一歩後ろに下がる。

 それを、見逃さなかったのか飛び出そうとしたとき……


「地底束縛!」


 仮面の人物以外にも巧達全員の足を鎖で拘束をされる。

 巧はこの束縛魔法を知っていた。


「これは、ルベスサか!?」

「正解だよタクミ」


 声のする方向を向くと、ルベスサは盗賊の近くにいた。


「色々調べていたら、まさかこんな事になっていたとはね」

「どうしてここにいるんだルベスサ」

「ああ、僕が言うよりもまずそこの仮面の()が話すべきじゃないのかな?」


 男と正体がばれて仮面の男は焦ったのか、拘束の鎖を引きちぎろうとしたが破壊できなかった。


「その鎖はちょっとやそっとじゃ破壊はできないよ。あなたが鎖を壊す間に鎖で繋がれている全員は無理でも、ヘルデウス様と盗賊二人ぐらいなら殺せるが、嫌ならそろそろ正体を明かしてほしい」


 その言葉を聞くと鎖を破壊するのを諦め、仮面の男はフードを脱ぎ、仮面を外すとそこにはルイスの顔があった。


「ルイ……ス?」


 その場にいた全員が衝撃の事実を知る。

 巧達からするとこの館に来て兵士を抜けば、初めて会った紳士なおじいさんであり、ヘルデウスを想う優しい人。

 ヘルデウスからしたら小さい頃から育てられ生みの親代わりのような人でもあり、心から信頼出来る人。


「ルイス……まさか、あの時俺等に殴り込みにきた冷徹のルイスか!?」


 男の盗賊が叫ぶ。


「おい、どういうことだよ! お前が俺達に依頼した時はこんな化物だらけが居る何て聞いてなかったぞ!」


 ルイスは目を瞑り否定はしない。依頼を申し込んだのは事実と認めたような物だ。

 そんなヘルデウスは男の言葉にショックを受ける。


「なん……で……」


 ヘルデウスは顔を項垂れ、両手と膝を地面に付けて呆然とする。


「申し訳ありませんヘルデウス様、こうするしかなかったのです」

「お前が! ……ッ……」


 ヘルデウスは大声を出すがそれ以上の言葉は出なかった。

 ルイスはそんなヘルデウスを見て申し訳なさそうな、とても悲しげな表情をしていた。


「ルベスサ悪いんだがこの鎖、盗賊以外の全員解いてくれないか? ルイスもこの状態じゃもう何もしてこないだろうし」


 ルベスサは確認すると、盗賊以外の足の拘束を解除し自由になる。巧はヘルデウスに近づくとしゃがみ背中に手を置くと語りかけた。


「ヘルデウス様、ルイスさんはこの盗賊達を雇いウルラヌス様を暗殺依頼をしたかもしれません。しかし、これはヘルデウス様の為とも言っておられます。一度落ち着いてルイスと部屋の中で、しっかり話し合いをしてみては如何でしょうか?」


 ヘルデウスは反応はないが立ち上がらせると、リウスに渡し部屋へと向かわせる。


「悪いんだがシロ、お前はルイスさんと一緒に部屋までつれて行ってやってほしい」

「タクミは?」

「俺はルベスサに話があるし、それにこの盗賊をどうするのかをルベスサに聞いてみるよ。その為”にも”来たんだろ?」

「ああ、よくわかったね」


 シロと兵士長はルイスを連れて館の中に入るのを見送ったあと、巧はルベスサに向き問いただす。


「それで真実はなんだ?」

「真実って?」

「嘘つくな、お前がここに来たのもこいつらのためじゃないんだろ?」

「……やっぱりバレてたか、僕は巧達を監視していたんだよ。前みたいな事になるんじゃないかって」

「それは命令?」

「命令もあり僕自身の為もあるかな」


 巧は考える、前の時と状況は違えど今回はルベスサに助けられた。あのあと止められていなければどうなっていたかは、火を見るよりも明らかであっただろう。

 巧はふと盗賊のほうを見ると傷だらけだったのでHPポーションを飲ませ回復させた。


「こいつらは盗賊なのに相変わらずお人よしだねタクミは」

「うっせ、このままだと気分が悪いだけだよ。それでこいつらどうすんだ?」

「ああ、とりあえずは【時短昏睡じたんこんすい】」


  二人の盗賊は睡眠状態に陥った。


「便利な魔法だな、欲しいわ」

「そんなに睡眠不足なのかい?」

「いや快適すぎるほど眠れてるけど、あれば便利だなって」


 ルベスサは顔を傾かせ疑問に思う表情をしたが気にしないことにした。


「この盗賊達は僕に任せてほしいんだけどいいかな?」

「どうするんの?」

「こいつらは衛兵に連れて行くよ」

「わかった。けど起きたらルイスの事を話すんじゃ?」

「そうだね、こればかりはしょうがないよ」


 ヘルデウスの事を思うと可哀想だが、巧は仕方がないと思い何も言わない。


「あ、それから、この館から火の光が飛び出したけど、あれってもしかして」

「そ、リウスがしたぞ。魔法は”火炎ビーム砲”って名付けたんだけど、その魔法を使ったかな」

「その火炎ビーム砲はちょっと騒ぎになるかもしれないね、どうする?」

「そうだな、色々あるし…………俺の魔法の所為、いや、こいつら対魔の水晶持ってたし、それが暴発してなったとかにしていてほしい」

「へえ、対魔の水晶とは貴重な物があったんだね」

「ああ、ここの死んだ伯爵が持っていたものだけど、それを奪われてね。だけど俺の水ビームによって許容外になったのか破壊されちまったわ。割れた水晶はこの庭のどこかに落ちてるわ」

「伯爵死んだんだ……わかった。それもこいつらと報告する時に言っとくよ。それじゃもうなさそうだし」

「報告する時はできればルイスの事を伏せといてくれ、ヘルデウスはルイスも居なくなるとまずくなりそうだから」

「わかった、そこは何とか言いくるめてみるよ。巧もあの子の事頼むよ」


 巧は頷くと、ルベスサは盗賊二人を連れて行った。

 巧は見送ったのちヘルデウスの待つ部屋へと向かい、部屋に入ると巧は愕然とした。


「なんだこれ……」


あと数話ぐらいかなと思います


兵士長の存在すっかり忘れていたので追加しときました。


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