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神隠しによる放浪記  作者: レブラン
第三章
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ルイスと回想その2


 ――――実行開始四日前の午前。

 ルイスはウルラヌスと共に護衛数人とルビアリタの街へと到着してから数日間滞在している。

 現在ルイスはルビアリタの街にて食材の買い物が終わり、大通りを歩いているとある噂話を耳にする。


 盗人が多く、また義賊が出た、常闇と名乗っていた。


(ふむ、最近は義賊が目立つようになったのでしょうかね)


 そんな事を考えている途中に騒いでる数人の冒険者に目に止まる。


「この騒ぎはなんでしょうか」


 そこには、銀髪で革製の鎧を着た一人の綺麗な女性の獣人に男達が囲ってナンパしているのがわかる。女性は興味ないように無視していたが、近くにいた仲間の少年に悪口を言われた瞬間、殺気を放って怒っているようだった。ルイスはその獣人から実力は相当なものだと判断する。

 殺気に当てられたのか、男達は怖気づき、周りの野次馬は全員固まる。

 灰色の服を着た青色のドッグタグの付けた冒険者と思われる少年が、女性をなだめると女性は殺気を収め、少年を抱きしめたのち少年をこの場から離れ連れて行こうとしたが、少年は後にいた赤髪の黒い戦闘ドレスを着た少女の手を持つと、三人はいつの間にかできていた人混みをかぎわけどこかへ行く。


「見世物じゃねえぞ! ゴルァ!」


 男達は追いかけるわけでもなく、ただ恥を晒してしまったのか顔が赤くなって涙目になっていた。

 ルイスはどこか行こうとした時、男達に絡まれる。


「おい、そこの爺さん! さっきはよくもガン飛ばしてくれたな!」


 男達はルイスが弱そうな爺さんだと思い、絡んでいるが周りは成り行きを見守るだけで、誰も助けようとしない。ルイスは絡んできた男達に少し睨むと男達は怯える。


「ここが戦場なら、すでに殺されていますよ。あなた達」


 その一言でルイスから遠ざかり男達は慌てて逃げた。


「全く何なんでしょうね」


 周りの視線が注目されていたが気にせず、無視してハウリック邸へと戻ると、ハウリック邸内はメイドの一人がルイスに気が付き近寄ってくる。


「お帰りなさいませルイス様。只今ウルラヌス様にお客様がお見えになっているので、戻って来られた際はすぐ応接間に来るようにと伝言を遣わされました」

「わかりました、すぐ向かいましょう。それからこれは食材の分です。料理長に渡しといてください」


 ルイスはノックをして応接室に入ると、ウルラヌスと首輪の付けた一人の商人がテーブルを挟んで座っていた。ルイスの手には水晶を持っており、上機嫌な表情をしている。


「只今戻りましたが、ヘルデウス様どうしましたか?」

「おお、ルイスか、これを見てみろすごいだろ。あの対魔の水晶だ」


 ウルラヌスはその水晶が対魔の水晶であり、この商人はあの暗殺者が送り込んだ商人だと言う事には、入った瞬間に気づいていた。だが、ルイスはウルラヌスに気づかれないよう演技は続ける。


「なんと、あの対魔の水晶ですか。それをどうなされましたか?」

「ああ、この商人が特別に売ってくたんだ、これは中々良い物だ」

「それはそれは素晴らしい。流石ウルラヌス様に商談を持ちかける商人だけの事はありますね」

「それでは私はこの辺にて失礼します。またご贔屓ひいきにお願いしますね」

「ルイス、この方を玄関までお連れしてあげなさい」

「畏まりました」


 ルイスは途中、商人から小さめの羊皮紙を受け取り確認すると”四日後に実行開始する”と書かれていた。

 玄関を開け、商人を外に出すとある事を命令する。


「路地裏に入った後で自殺しなさい」

「わかりました」


 用済みである商人はどこかへ行くのを確認したら館の中へと戻る。

 ルイスは顎を触り地面に視線を向け考える。


「さて、決行当日まで準備しなければなりませんね。まずはウルラヌス様からでしょうか」


 地面に向けていた視線を上に向けろとヘルデウスが立っているのに気がつく。

 順調に事が進んでいたのに安心していたのか周りが気が付いていなかったのだ。警戒意識を低くして甘さもあってか、ヘルデウスは額から汗が一滴垂れる。ルイスの今さっき商人に伝えた発言を聞かれていたら計画自体が潰れる可能性があるのだ。


「どうしましたか? ヘルデウス様」

「今出て行った商人さんを確認したくて、父様が取引する人ですから将来、僕にも関わりがあると思いましてね」


 ルイスはその言葉を聞いて内心安心する。


「そうですか。けどあの商人は忙しいでしょうし、次、来られた際にウルラヌス様に頼んでみて取引がどんなの風にしているのかをウルラヌス様にお伝えしましょうか?」

「……いえ、これは僕から言わないといけない事だと思うんです。父様が僕に認めてもらえる為にも」

「……畏まりました。では私もついて行かさせてもらいます」


 ヘルデウスとルイスは応接室へと行くと、ウルラヌスは手に持っていた対魔の水晶を眺めていたがヘルデウスとルイスに気づく。


「なんだ」

「あの……父様、ハウリック家の嫡男として僕にも父様の仕事でのお手伝いをしたいと考えているのですが」

「手伝いだと? お前は何か? 私が商談が下手だと言うのか!」

「いえ、そう言うわけではありません。ただ、私は父様の」

「私の何だ!」


 見兼ねたルイスはウルラヌスとヘルデウスの話の最中に割り込む。


「お話し中、大変申し訳ありません。ヘルデウス様はウルラヌス様の商談などを知りたがっていますし、学びたいとも考えおいでです。ですので、ヘルデウス様を商談の際にそばにだけでもいてあげてはいかがでしょうか?」

「そんなのは私が何故、教えないといけなんだ! 今すぐ出て行け!」


 あまりにも理不尽な対応だと誰の目から見ても明らかだったが、ヘルデウスは諦めるように顔を項垂うなだれ部屋から出て行くと後を追うようにルイスも部屋から出て行った。


「ヘルデウス様、どうか落ち込まないで下さい。ウルラヌス様も機嫌が悪かっただけでしょうし、また次に」

「ありがとうございます、ルイス。途中に私を庇っていただいて……」


 ルイスはヘルデウスと言う少年を見て不憫ふびんだと感じていた。

 ウルラヌスからしたらヘルデウスは自分の息子が疎ましく思われているのは知っていた。この滞在期間中もウルラヌスはヘルデウスに対して嫌がらせをしていたが、それでもヘルデウスはくじけず耐え忍んでいた。

 ヘルデウスは将来ハウリック家にとって上に立つ存在で才能や信頼などがある。未熟な部分は勿論あるが、その邪魔をし疎外をするのが父親である以上、ウルラヌスを排除しないといけないのだ。

 それがハウリック家の為になるのならとルイスは考える。


(もう少しですので待ってください、ヘルデウス様)


 その午後にウルラヌスと取引していた商人が、首をナイフで突き刺し絶命していたのをルイスの耳に入ると、さり気無くウルラヌスに情報を伝える。


「なんだと? それは本当か!?」

「はい、あのあとメイドに外へ買い物に行かせたら騒ぎがあり、何かとたずねたら”商人が死んでいた”との事だそうです。大変申し上げにくいのですが、もしかしたらウルラヌス様が手に持っている”対魔の水晶”所為かもしれません」


 ウルラヌスは動揺し目が泳ぐと手に持っていた水晶を見たあと、再びルイスへと視線を向ける。


「な、なにを馬鹿なことを言ってるんだ! どうしてこれを狙われるんだ!」

「その水晶は非常に貴重だと聞いた事があります。他からすれば殺してでも奪いたいとか、だからその商人手放したかったのでは?それに最近”常闇”と名乗っている義賊、盗賊が騒がれていますしもしかしたらそいつらが」

「う、嘘だ! あの商人はそんな事一言も言わなかったぞ!」

「それはあの商人も自分自身の命の危機なので、ウルラヌス様にお話しされると買い取る事さえ拒否する可能性があるかと思われます」

「そん……な……」


 手に持っていた水晶をテーブルの上に落とし、頭を抱え悩む。


「ウルラヌス様、お話が」

「黙れ! お前はこの部屋から出て行け!」

「畏まりました」


 ルイスは手を胸に当て、頭を下げてから部屋を出て行った。


 ――――実行開始三日前。


 ルイスはウルラヌスに呼び出されていた。


「どうなされましたか?」

「どうしたもこうしたもない、あと数日でこの街を離れる! その間冒険者を雇うぞ! あいつらにも私の護衛をさせる!」

「冒険者を雇わなくても、この屋敷には十二分に兵士がおりますが」

「だめだ! 私の安全を最優先にするために増やすぞ! ルイス、この街は確か冒険者ギルドがあったな、資金はいくらでもいい、あそこで雇ってこい!」

「畏まりました」


 ルイスはギルドに到着すると中に入り受付をする。

 受付嬢は頭に獣人の特徴である獣耳に尻尾をつけて顔は美人だとわかる女性、シファが対応する。


「ルイス様ではございませんか、この度はどのようなご用件でしょうか?」


 ルイスはヘルデウスの提案により幾度かギルドへ足を運び、寄付をしていたので顔は知られていた。


「今回はブリアン伯爵のご命令によって、ハウリック家の護衛と盗賊の撃退依頼を頼みたいのですが」

「伯爵様となるとそれなりの実力者が必要でしょう。生憎あいにく見合うほどの実力を持ってるランクの高い実力者は只今他の依頼によってこの街にはおりません。必要であれば他の街からの要請を致しますが」

「ふむ、困りましたね……そう言えばこの街に冒険者である女性の獣人はおりませんか?」

「ギルドに登録はされていますが、しかし女性の獣人と言えど多く登録していますので一丸にも獣人の女性だと言われても探しようがないので、特徴などを仰っていただければわかるとは思いますが」


 ルイスは今朝大通りにいた冒険者であろう獣人の女性を思い出す。実力としてならルイスから見ても十二分に強いため申し分なかった。

 特徴を伝えると、受付嬢は誰だかわかったかのように頷く。


「それでしたらシロと言う冒険者です。ですがその方はギルドに登録していない為、ギルドからは依頼発行をする事は不可能でありますが、パーティーであるタクミ様とリウス様なら受ける事が可能でしょう。」

「それでしたらそのお二方に申し込む事に致します」

「承りました。ただし、ギルドからの依頼であり、確実にその方達が確実に依頼を受けるとは限りませんのでご了承下さいませ」


 ルイスは顎を触ると頷く。その後依頼場所、金額、依頼期間を伝えるとルイスはハウリック邸へと戻る。

 ウルラヌスはルイスが戻ってくると心配するように聞き、ルイスは依頼を申し込んだ事を知るとウルラヌスはホッとした表情になる。


 ――――実行開始二日前。


「おい、どういうことだ! あれから全く来ないぞ!」

「と申されましても、あちらも確実にこの依頼を受けるかどうかはわからないと仰られていましたので」

「そんな事は知らん! 私がわざわざ呼ぶんだ、兵を出しても構わん。そいつらをとっ捕まえて連れて来い!」


 あれからウルラヌスは何をするにしても精神的な苛立ちからか、ことごとくメイドなどに当たり散らすようになっていた。

 ルイスは館にいた兵士達にシロの特徴を伝えると探しに行かせたがその数時間後、兵士達はボロボロになりながら館に戻ってくる。そんな様子を見たウルラヌスは大激怒し、帰って来た兵士達を解雇した。

 再びルイスにギルドへ行かせたものの対応は昨日と同じで対応をされる。


 ――――実行開始一日前。


 ルイスは三度みたびギルドまで歩いてある事を考えていた。


(再び同じ対応をされるでしょう。このままだと決行当日にヘルデウス様に危険が及んでしまう可能性がありますね。流石にそれは避けなければなりません)


 ギルド内に入ると受付前に行くとシファはルイスに気づくと立ち上がる。


「ルイス様、申し訳ありません。私達もタクミ様にお伝えしているのですが彼等も冒険者ですので、ご了承下さい」

「ええ、わかっていますよ。しかしウルラヌス様はご立腹なされており、このままでは”資金援助”も打ち切る方針と考えておられです」


 実際にはルイスの言葉は出任せであり独断であった。事実、資金提供の案はウルラヌスには全く知らされていないのだ。ギルドからしても今まで資金提供を受けてきた恩もあり、ルイスの言葉により無下に断るわけにはいかなくなった。


「畏まりました。タクミ様が来られた際にはお伝えしておきます」


 ルイスはそのまま館へと戻る。


 ――――実行当日。


(今日来なければ、私がヘルデウス様を優先に守るしかありませんね)


 そんな時、玄関扉が叩かれる音が聞こえる。

 ルイスは扉を開けると、三人の男女が立っていた。


無駄に長くなりましたね

正直書いている途中入れる必要性あったのか疑問に思いながら書き上げてしまいました。

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