表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神隠しによる放浪記  作者: レブラン
第三章
51/144

暗殺者とリウス

 ――――巧が黒装束の男と対峙する数時間前。

 巧とシロと別行動してからリウスはヘルデウスの部屋に待機していた。

 部屋の中にはヘルデウス、リウス、ルイスの三名。


「申し訳ありません、折角このような場所でこんな可愛らしい女性に護衛をしてもらうっているのに何も出せず」

「だ、大丈夫です……これも依頼なので……」


(うぅ……緊張しちゃう、魔物の退治なら頑張れるのに……護衛は初めて……)


「僕は今まで街の外に出た事ないので、もしよければお話をお聞かせ願えますか?」

「え、あ、わかり……ました」


 リウスは巧との出会いやシロとの出会いそれにロウナ達の話した。

 勿論、シロは元連続殺人鬼なのでそこの部分は誤魔化したが、それでもシロと出会ってから街での事を楽しく話す。


「へえ、それはさぞ大変でしたでしょ。けど出会ってからも楽しそうですね」

「うん、けど私、タクミに迷惑かけちゃってるから……、でも強くなろうと思っているの」


 リウスは巧に対する信頼は厚く、巧の事を話すと活き活きとしている。

 ヘルデウスはリウスの話に耳を傾け、相槌をして話を聞いていた。

 リウスはふと窓から外を見るといつの間にか夜になっていた。


「あ、ごめんなさい……私ばかりの話をしちゃって……」

「いえいえ、とても楽しくお話をしているので僕も思わず聞き入っちゃいましたよ。そのタクミさんはリウスさんが想いを寄せていて羨ましいなと思いましたよ」


 リウスは落ち込んだがヘルデウスが慌ててフォローする。


「わ、私は、タクミの傍に入れるだけで幸せなので……シロさんの積極的なのがとても羨ましいなって……」

「けどリウスさん自身、タクミさんの事はどう思っているんですか?」


 突如ヘルデウスの言葉にリウスは困惑した。

 だが、リウスは考える。

 自分は巧の事をどう思っているのかを。

 そしてその想いをヘルデウスに話す。


「…………そう……ですね……。私何ていらない人だと思っていたけど、それでもタクミは私を必要としてくれたの。そんな私はタクミに応えたい、役立てたい、頑張りたいんです」


 リウスはそう語ると顔は微笑んでいた。

 ヘルデウスの口が開こうとしたその時、扉が勢いよく開くと兵士長含め兵士達数名が入ってくる。


「ヘルデウス様、突然押し入って申し訳ありません! 三人の盗賊が現れ、一人は冒険者が止めているのですが、もう二人館内にて浸入されました」

「他の衛兵達はどうなっている」

「はい、賊と戦っていますが相手は強く、そのうちここまで押し入られてしまいます」

「まずいな……。そうだ、父様は、父様の所はどうした!」

「ウルラヌスさんはタクミがいるので心配しなくても大丈夫ですよ」


 ヘルデウスはリウスの言葉を信用し安心する。


「そうか、君の仲間だしな。ルイス、悪いが館内のメイド達を安全な場所に……、地下へと誘導してほしい」

「畏まりました」


 ルイスは部屋を出た。


「さあ、ウルラヌス様は冒険者が守って下さってるので、ヘルデウス様も安全な場所に移りましょう」

「しかし……」


 扉が突如として破壊される。

 破壊された先にいたのは一人の黒装束の男が立っていた、周りの床には兵士達の死体が置かれているのがわかる。


「ッ!」


 リウスとヘルデウスはその光景に息を呑む。


「ケケケ、弱いねー本当弱いねー」


 男は顔も隠れているが、へらへらしている様子なのはわかる。

 男は中に入って来ると、兵士達とリウスはヘルデウスを守るように前に出る。


「くそ! ここまで来たか!」

「さあどうするよー、その子供を大人しく差し出せばお前らの命は助けてやるよー、ケケケ」

「そんな事はさせないぞ! お前等ヘルデウス様を守るぞ!」


 兵士長と共に兵士達は叫び、一斉に男へと攻撃する……が、男は届く前に懐に隠していたナイフを取り出し兵士を一人一人喉首と斬りさく。

 技術の高さを見せびらかすように殺していく。


「くっ!」


 兵士長は男の攻撃を避けるがギリギリであった。


「やるねー、俺の攻撃を避けるとは。けどここまでだよー」

「伊達に兵士長を務めているわけではない!」

「その意気込みあんまり好きじゃ……あちい!」


 リウスは男が兵士長に気をとられているうちに炎魔法で攻撃する。

 先ほど攻撃すればよかったのだが兵士達が男の前にいたので躊躇ちゅうちょしていたのだ。


「あちちちち! よ、よくもやってくれたな! 小娘えええ!」


 男はリウスを睨む。男の服は火の耐性をもっていたからか燃えてはいなかった。

 リウスは杖魔祖を男のほうへと構え次の魔法を放つ。


「先にころ……ぎゃあああ!」


 飛び出そうとしたがリウスの炎が先に到着し、男の体を燃やすが、すぐ炎は消える。本来は男避けれただろうがリウスは魔法を無宣言で発動したので避けれなかったのだ。

 いくら服が耐性あるからと言って、むき出しになっている皮膚の部分や服の内面までの熱さからは逃げられない。その為か男の皮膚の部分には火傷が残った。

 男はこのまま部屋にいれば命の危険と判断する。


「魔法を無宣言で発動だと? くそ! このままじゃまずい!」


 男は顔を手で押さえ逃げるように部屋を出た。

 部屋にはリウス、ヘルデウス、兵士長が生き残った。


「リウスさんすごい! あの男を撃退しましたよ」


 リウスは男を撃退し安堵していた。


「ヘルデウス様、リウスさんここは危険です。またいつ襲ってくるかわかりません早急に離れましょう」

「ああ、そうだな……。だがそれよりも父様、父様の所へ行こう」

「しかし、もしもの事がありましたら」

「わかっている、確かに心配させてしまっているのは申し訳ないと思うが、やはり父様が心配だ」

「……わかりました、ですが危険なら無理にでも移動します。よろしいですね」


 ヘルデウスはコクリと頷くと兵士長とリウスはヘルデウスを守るように部屋を出。リウスは兵士の死体を見て巧の事を心配する。


「タクミ……」


 この依頼でまさかこのような惨劇が起こるとはわかっていなかったからだ。

 二階に上がり、ウルラヌスの部屋の前に到着すると扉は開かれいた。

 リウス達は中を覗くと数名の兵士とウルラヌスが倒れ伏せていた。


「父様!」


 ヘルデウスはウルラヌスの所へ近づく。

 ウルラヌスは刺されたのか体から出血し、顔が青く絶命していた。


「何で……」


 リウスは口元を抑え、むせ返すような思いだったが、窓が割られ外で怒鳴り声が聞こえる。

 窓の外を覗くと巧とシロが黒装束の二人とにらみ合いをしていた。

 リウスは思わず叫ぶ。


「タクミ! シロさん!」


 反応する事がない、それほど黒装束達に鬼気迫っていたのだろう。

 巧の表情は険しく気分が悪そうな顔。

 応戦しようにも護衛対象者をこの場に残すわけにもいかない。

 ヘルデウスは親であるウルラヌスが亡くなった事に対して落ち込んでいる様子であった。


「ヘルデウス様……」


 兵士長もヘルデウスの事を心配する。


「…………ああ、僕がここで落ち込んでちゃだめだな。とりあえずここから離れよう」


 強い人だとリウスはヘルデウスの事を見直した。


「それはさせねえよ、お前達はここで死ぬんだからな!」


 そんな言葉を発してきたのは、リウスが撃退した際に顔に火傷を負わせた黒装束の男。


「さっきはよくもやってくれたな、小娘!」


 手は顔を抑えていたが回復薬を飲んだのだろう、火傷あとも多少は軽くなっていた。

 リウスは杖魔祖を男に向けるが、男は敏感に察知し、懐からナイフを数本取りだす。


「【苦痛を与え貪り激痛を与えんが如く――――毒縁どくりょくほむら】」


 ナイフの刀身は紫色に光、尖端から緑の水滴が垂れている。

 床に垂れた液体は強力だからか、硫酸にかけられたように溶ける。


「お前らもこいつで」

「炎硬弾!」


 リウスは男が喋ってる最中に炎硬弾を放つ。

 男は反射的に炎硬弾に向かってナイフを放つが全て溶かされ消滅する。


「くそが!」


 炎硬弾が当たる前に男は回避。

 リウスはすかさず、もう一発撃とうと炎硬弾を放とうとする。

 だが、男は咄嗟に近くにいた、兵士の死体の首元を掴み、前にだすとリウスは杖を下ろす。


「へへへ、流石に人質に取られるとお前も手が出せないだろ。さあ大人しく……」


 男が人質にとっている死体は喉を斬られ絶命していたが、上手く手で隠して生きている風に見せかけていた。

 だがそんな言葉に耳を傾けず、杖魔祖を男に向け先端に光が集まる。

 その光景を見て男は焦り叫び、人質の首にナイフを首に突きつけようとしている。

 そんなリウスはある光景を思い出していた。





 ――――場所はルビアリタの街から数時間離れた草原。

 依頼で討伐に向かっていた。


「え、強くなりたい?」

「うん……、どうやったら強くなれるのかな?」


 リウスはシロに強くなる方法を聞いてみる。

 リウスは悩んでいた。どうやれば強くなるのか巧を守れるようになるのか、シロと戦ってから実感したのだ。自分は弱く、このままでは巧を守れないと。


「そうね、私はタクミを想っていたら強くなったかしら」

「それじゃわかんないだろ。具体的に教えてやれよ」

「あら本当の事よ? それでタクミはどうなの? 好き? 嫌い?」

「いや……まあ嫌いじゃないが……って違う違う」

「なら好きなのね、お姉さん嬉しいわよ」


 リウスはそんな様子を羨ましそうに見ていた。


「ちょ、今はそんな事よりもリウスに教えるんだろ」

「もうタクミったら、恥ずかしがり屋さん」


 巧は一度シロの頭を撫でてから離す。


「……それでリウス」

「?」

「強くなるって言ってたな、リウスはどっちかってと俺よりだと思うんだ」

「シロさんよりもタクミより?」

「そ、シロみたく剣を使って前線に出るタイプと違って、俺みたいに魔法をメインで戦うタイプって言うのかな? 前に教えただろ、想像力をつけて魔法を放つ。どう想像し創造するのか具体的にどんな感じなのかとか」

「想像し創造?」

「まあ簡単にイメージ力だな。改めて試してみるが、向こうに敵がいるとする。そしたら、その敵に向かって俺は水レーザーを放つ」


 巧は水のレーザーを放った。


「これが頭の中で想像し実際どんな風に魔法を創るかの創造。つまりイメージする力。多分リウスも同じような事ができると思う。あとはどんな風にするかだけ」

「うん、やってみる」


 リウスは杖魔祖を両手で持ち、目を瞑り集中する。

 どんな形のでどんな風に出すのか、先程巧が出したような水レーザーみたいな攻撃を思い出す。

 気怠さを感じ目を開けると杖の先から光が集まるのがわかる。


(もっと集中……)


 すると更に光は集まると……リウスは少し気怠さを感じ脱力したのか力を緩めてしまい、光はレーザーのようになり空へと飛んでいく。

 威力は高くリウスは思わず尻餅をつく。

 

「すごいじゃんシロ!」

「そうね、最初は光が集まったと思ったら、急にその光が飛び出すからびっくりしちゃったわよ」

「私もびっくりした……」

「うまくいけば威力もありそうだし、竜炎以上の威力になりそうだな」


 巧の言葉にリウスは嬉しそうになり、巧が手を差し出したのでその手を持つとリウスを引っ張り起こす。


「まあ他にも色々できそうだし、もっと練習してみるか?」

「うん!」


……………

………




「――――い! 聞こえているのか! 人質が見えないのか!」


 黒装束の男は人質にナイフを突きつけようとしているが、焦りからかその手は少し震えていた。


「照射設定小…………完了」

「くそが!」

「リウスさん!」


 男は人質を捨ててリウスを襲おうと飛び出した。


「ヘルデウスさん兵士長さん身を守って――――【火炎ビーム砲】発射!」


 その瞬間、リウスは杖魔祖の先端から直径十センチぐらいの光のビーム粒子が発射される。

 そのビームは巧の水ビームに似ているようだが熱量が含まれてるからかビームの周りに円状の衝撃波が複数出る。

 威力からか、リウスは足をしっかり踏ん張るが周りの椅子やテーブルは吹き飛び、ガラスは割れビームは黒装束の男には当たらず壁を突き破り少し上に真っ直ぐ飛んでいった。


「ぐああああああ……」


 男は直撃はしなかったものの、近づいたせいで火炎ビーム砲の余波を受けて気絶した。

 リウスはヘルデウスと兵士長を見ると兵士長がヘルデウスを守るように体全体を使って覆っていた。

 リウスはそんな二人に近づく。


「ごめんなさい」


 第一声が謝る事だった。

 高威力を放ち護衛対象のヘルデウスや兵士長を巻き込んでしまった罪悪感もあったからだろう。


「大丈夫ですよリウスさん、しかしすごかったですよ」

「あの威力にはびっくりしたが倒せたようだし、本当助かったよ」


 二人共、黒装束の男を見ていた。

 危機を脱出したのだ、素直に喜んでいいのだがリウスは巧達を心配していた。


「タクミ、シロさん気を付けて……」

卑怯な攻撃は正義なり命のかかった戦闘なら尚更

よく変身中や喋ってる間に攻撃されないといつから思っていたのだろうか

それをするのは嫌いじゃなかったりする作者です


今後の展開に色々ありそうなので、ヘルデウスがリウスに告白する会話は削除しました。


暗殺者とリウス1と2を併合しました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ