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神隠しによる放浪記  作者: レブラン
第三章
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兵士と暗殺者

「全く! 貴様が何故私の所で護衛するんだ!」

「私が一番適任だと思ったからです、それに二人はあなたを嫌ってます。手をだそうとしたら容赦なく殺されますよ? それでもいいなら一応連れてきますが、身の保証は致しかねます。それが嫌なら俺達の依頼はなかったことにし、依頼者が自ら俺等を護衛任務から外したって事でギルドに報告します」

「ぐ……わかった……貴様の護衛を許可しよう」


 ウルラヌスはあの時の事を思い出し、巧が言う事を真に受ける。

 今居る部屋は二階奥。他の部屋よりも広く窓は天井から床までガラスで貼られ景色が良い部屋。数時間経ったのち、外は暗くなり、外が騒がしくなる。

 盗賊が来たのだろうと巧は目を瞑る。気配探知で相手がどこにいるのかを調べるが、警備が多すぎてわかりにくくなっていた。


「失礼します! ウルラヌス様、常闇の盗賊達と思われる者が現れました。只今館内に浸入され交戦中です。もうすぐこちらに来ます!」


 扉が開かれると同時に兵士達はウルラヌスを護衛するよう入ってくる。


「やはり現れたか、タクミと言ったか、お前は館内にいる盗賊の相手をしてこい!」

「けどここを離れると何かあっても知りませんよ?」

「見ろ、この兵士達を、盗賊が来てもこいつらが守ってくれるのがわからんのか! お前はさっさと行け!」

「……わかりました。では行きます」


 巧は部屋を出ようと動こうとしたとき、部屋の外で兵士が吹き飛ばされているのが見えた。


「ここの館の兵士弱すぎじゃないかしら?」


 部屋に入って来た盗賊は、顔は目の部分以外を黒い布で目元以外を隠れし、黒装束の恰好をしていたが、体つきや胸の出や声からして女とわかり、手には短剣を所持している。


「あなたがウルラヌスね、対魔の水晶と命をもらいにきたわよ」

「貴様が常闇の盗賊か、女だったとは知らなかったぞ。どうだ、私の物にならんか? 金ならいくらでもやるぞ」

「お金は魅力あるけどあなたの物になるのは嫌ね」

「そうか、残念だ。お前らそいつの手足を斬って動かなくさせてしまえ!」


 ウルラヌスが合図すると周りの兵士達は女に近づく。

 相手は一人、その点こちらの兵士は数にして五人、不利ではあるのだが女はそれでも余裕の笑みを浮かべている。


(何故だろ、圧倒的不利なのにあの余裕、何かあると考えていたほうがいいだろう)


 巧はウルラヌスの前に出て水の球を浮かべる。


「全くこれだから下賤な奴に使えている人は、邪魔ね【我、影にて複幻ふくげんの如く――――幻態分身げんたいぶんしん】」


 女は見た目も服装も持っている武器も全く同じ、瓜二つに分身をした。


「何かと思えば一種の幻影魔法だろう。そんなのが増えた所でお前の不利なのには変わないのだ、お前達気にせずかかれ!」


 二人に分身した女に兵士たちは一斉に襲い掛かるが、女はまだ余裕の笑みを浮かべていた。


「だめだ! そいつから離れろ!」


 巧の叫びは無視され。そして兵士達が斬りかかろうとした時、女は避け兵士の一人一人に斬り殺す。

 その光景を見て巧は動揺しそうになったが、兵士全員殺した女は巧を斬りかかろうとする。


「み、水ビーム」


 巧は動揺しながらも浮かべた水から、水のビームを撃ち放ち女にぶつけると、女は霧のように消え去りもう一人の女が残る。


「水を浮かべてたけど、やっぱりあなた魔法使いね。けどただの魔法使いに私もあの技を破られるとは思わなかったわよ。君みたいな子が一番強い雰囲気だしてたから少し本気でいったんだけどきついわね」

「……何で人を殺した?」


 巧は日本ではこれまで人の死を目撃した事もないし、当たり前だが人を殺生もしたことない人間。FPSやMMOでの対人戦などはしていたが、それはただのゲーム、現実と仮想世界の区別はついている。

 この異世界に来てからは巧は生きるために魔物などを殺したことあるが、どこか人間とは違う一線があった。

 だが今、目の前に起こっているのは紛れもない人が殺される現実、死が簡単に失われる現実を目撃している。


「何でって、そりゃ襲いにくるんですもの。殺すのは当然じゃない」

「それでもお前ほどの実力がありそうなら殺さなくても気絶させれただろ」

「そうね、けど暗殺の対象者を守るんですもの、邪魔だったんで殺させてもらったわ。あなたは冒険者ぽいけど、冒険者は外に出れば魔物が襲いにくる、襲われないために魔物を殺すでしょ? それが人間に代わっただけ」


 滅茶苦茶に聞こえたがどこか納得した。


「貴様、常闇の盗賊じゃないのか!」

「常闇? ああ、私達がここに来るときに私達と似たような恰好をした人達ね。依頼の邪魔になりそうだったから殺したわよ」


 女は平然とそんな事を言う。

 ウルラヌスはそんな言葉に愕然し青ざめる。

 それもそのはず、ただの盗賊が、いや義賊だけならまだ命まで狙われなかっただろうが、それが自分の命を狙ってくる暗殺者に代わったのだ。 


「悪いんだけど急いでるし、そろそろ殺して宝石も奪っちゃうね」

「そんな事はさせない。水ビーム」


 女が飛び出びだそうとすると、巧がウルラヌスの襟首を引っ張り後ろに下がらせ水ビームを放つ。


「キャア!」


 女は水ビームをくらい壁に激突する。

 巧は風魔法で女に近づき、胸倉を掴むと窓に向かって放り投げた。


「な!」

「このままウルラヌスが近くにいると危険だから離れさせてもらうぞ」


 女はガラスを突き破り外へと放り投げだされる。

 そのまま一階の庭へと落ちると、巧も続いて飛び降りた。


 巧は着地するとウルラヌスと離れ少しホッとすると、女のほうに視線を向ける。女は飛ばされた体勢は悪かったが落ちるのに慣れてるのか、平気そうな顔をしていた。


「まさか投げ飛ばされるとは思わなかったわよ」

「今暗殺をやめて逃げれば見逃すかもね」

「戻ると私は殺されちゃう。だからあなたを倒させてもらうわよ」

「あら、それはだめよ?」


 声がする方向を見ると、シロが黒装束の男の首元を掴み引きずりながら歩いてこちらに近づいて来ていた。


「タクミは私のなんだから、そもそもあなたが手を出した時点で殺したいほどだったんだけど、タクミが相手をしていたから我慢してたけどね。でも……タクミを傷付けたら私はあなたを殺すわよ?」


 シロが掴んでいる男の顔は苦痛の表情で、口元には布で猿轡さるぐつわみたく縛られ喋れなくされ、手足は腱の部分だけを斬られているからか動かないようだ。

 流石に巧は引いたが、シロが殺していないようなので巧は安心した。


「流石にそれは可哀想……。まあシロは無事そうだしいいか」

「そこの女とこの男が私を発見したとたん、急に攻撃したのよ? 女は中に入られたから追いかけようとしたんだけど、この男が邪魔しちゃうし。だから返り討ちにしちゃったわね」


 シロは男を女の前に放り投げると、笑顔になりタクミに抱きつく。

 男はうめき声を上げながら女の元へと転がる。


(うわ……痛そう、それに相手も悪かったな)


「うぅ……ふぁふぉうんふぁ(あの女)ヴぁふぇふぉんヴぁ(化物だ)ふぃふぉつけふぉ(気を付けろ)


 男の言葉を聞き女はシロと巧をきつく睨む。


「あー、どうする? ニ対一でお前の不利だが幻態分身でも……まあした所で俺とシロで返り討ちにするだけだし。大人しく降伏するならその男は回復させてやるが」

「その必要はない」


 どこかから声が聞こえたと思ったら地面に倒れていた男にナイフが突き刺さり、毒が塗っていたのだろうか男は口から血を吐き出しは絶命した。

 突如その光景を見て巧は一瞬なにが起きたかわからなかったが、男が絶命したのを再認識すると動揺する。


「タクミ顔色が何だか悪いけど大丈夫?」


 シロが心配しそうに巧の顔を覗き込んでいた。

 巧は胸を抑え深呼吸すると、落ち着きを取り戻しシロを撫でる。


「シロありがとう」


 シロはよくわかってなかったが撫でられると嬉しそうにした。


「全くそんな女の獣人や子供にやられるとは情けない」


 ナイフが刺さった男の近くにはいつの間にか男が立っている。

 顔は口元だけを隠しており、片目は斬られているからか隠していた。それ以外は他と同じで黒装束の恰好をしているが、その威圧感からか巧はこの男は暗殺者達のリーダーであると確信する。


「ちょ、ちょっと待ってください! 私は必ずこいつを殺しますので!」

「黙ってろ」


 近くにいた仲間の女は登場怯えている様子だったが男の一言で言い返す事もできなかった。


「お前、そいつ等の仲間だろ、何でそいつを殺した!」

「何で? それはこいつが弱かっただけだからさ。我々には弱い者は必要ない。それに我々の事で口を割らせるわけにもいかなかったのでな」


 巧は反吐がでるような思いがした。


「これはお前達がいなくなったおかげでこれを手に入った。奪うついでにウルラヌスは殺させてもらった。今頃その息子のヘルデウスも俺の仲間が殺してるはずだ」


 リーダー格の男の手には血がついており、その手にはウルラヌスの持ち物である封魔力の涙を持っていた。


 そんな男の言葉に衝撃を受けた。

 自分が護衛対象から離れた所為で護衛対象が殺されたのだ。

 巧は自分の安易な行動と甘さに責任を感じた、あの時残っていればウルラヌスは殺される必要性はなかったと。

  そしてこの男を今、この場で倒さなければいけないと……


「タクミ! シロさん!」


 その言葉は聞こえたが振り向けずにいた。

 この男から目を離すのはまずい、そんな巧の思いが男から目を離せれなかった。

どう考えても巧の自業自得なのに敵に恨みをもってしまいました。


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