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神隠しによる放浪記  作者: レブラン
第三章
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貴族と少年

 部屋を出た巧はリウスとシロの手を離し廊下を歩いていた。

 そんな中、巧は悩む。


(ああ、またやっちまった……。さっき勢いでリウスとシロの事を馬鹿にするような糞の事を言ってたし。ついカッとしてやっちまった。まあ反省はしてないが)


 巧はふと後ろについて来ている二人を一瞥すると、二人の顔は歓喜に満ち溢れていた。


「私達の為にあんな事をしてくれるなんて! 嬉しい! 私は巧の物だから心配しないでね」

「わ、私も嬉しかった、タクミが馬鹿にされて我慢してくれてたのに……。それに頑張ってくれたから……、私も巧の……何でもない!」


 シロは元からだが、リウスもシロの影響を受けてか前よりも主張してくるようになっていた。


「そか……。あんなので脅し効果あれば良いんだけどね」

「そうね、けどタクミ? 私には殺しちゃだめって言っておきながらタクミもあー言うの言っちゃだめだからね?」


 シロに痛い所を突かれ巧は顔をしかめる。


「俺は良いんだよ。けど流石にあれはあまりにもひどすぎて、俺も腹が煮えくり返ってたからついね。とりあえず盗賊達が入りそうな場所徹底してさが」

「そこのお前ら止まれ!」


 その言葉に巧達は止まり、リウスとシロを離し振り返る。

 振り返った先にいたのはこの館の警備であろう青年の兵士、顔は十代後半で手には剣持って立っていた。


「どうしたの?」

「ウルラヌス様の部屋から向かってみたら、兵士長が倒れていたんだ。あれはお前達のせいだな!」


 あの時の剣士を思い出していた。


(ああ、あれこの館にいる兵士の中の隊長だったんだ……)


 巧はシロの殺気によって怖気づいた兵士、捨て駒兵士にしか見えてなかったので鑑定する事自体忘れていた。


「いや、向こうから襲って来たんだよ? だから返り討ちにしただけ」

「貴様! やはり兵士長を!」

「いいのか? 俺はこの館を見回っていいって、お前の主人から許可得てるんだけど」


 青年兵士が剣を上げようとした時、ルイスが近づいてくる。


「待ちなさい、この方達と戦闘をする事は禁じます。申し訳ございませんタクミ様、この子は決して悪気があってやったわけではございません」

「でも!」

「ここで戦闘をすれば、あなたの所為で兵士長の立場が危うくなるだけだと思いませんか?」

「ぐ……」

「いいから落ち着きなさい、それにタクミ様は、あなたよりも格段に強い」

「けど兵士長は!」


 青年兵士は敵意の視線を巧に向けたが、ルイスに言われ落ち着く。


「…………わかりました」

「この子の言動に対して、私めのほうからタクミ様への非礼を謝罪いたします。なにせこの子は兵士長に憧れているので。兵士長は兵士皆から信頼が厚く頼りにされております故、この子も兵士長からご厚意を受けていたのです」

「わかったルイスさんに免じて許します」

「ありがとうございます」

「さあヘンリー、剣を収め館の警備をしてきなさい」


 ヘンリーは言われた通り剣を鞘に収め、来た道を引き返す。


「タクミ様よろしければ、私がこの館を案内してもよろしいでしょうか」

「ああ、案内頼みますルイスさん」

「畏まりました。先に館を案内する前に、ウルラヌス様のご子息であられる、ヘルデウス様の所にご挨拶をお願いしたいのですが」

「へえ息子がいるんですか。護衛対象者は増えるが、わかった会いましょう」


 その後ルイスに館内を案内され、ヘルデウスがいる部屋の扉に到着する。


「こちらがヘルデウス様のお部屋でございます」


 巧は頷くとルイスは扉をノックし、中から返事がすると扉を開け入室。

 部屋の中には一人の少年いた。髪の毛は茶色だが短く綺麗に整えられ、気品溢れそうな顔をし、十代前半であろうがどこか落ち着いた雰囲気を醸し出していた。


「ルイスさん、そちらの人達は?」

「こちらはウルラヌス様が依頼をされ、盗賊の撃退と主の護衛をする者でございます。今回、館を私が案内する際に先にヘルデウス様にご挨拶へと勧めたしたいでございます」

「初めまして、私は山内巧と申します。私の事は巧とお呼び下さい。こちらはリウスとシロです。以後お見知りおきを」


 巧は少年に日本式の軽めのお辞儀をする。


「タクミさんは珍しい挨拶をするんですね。確かにそう言った挨拶もあるとは聞いた事はありますが。失礼、僕の挨拶をするのを忘れていましたね。改めて初めまして、僕はこのハウリック家の嫡男ちゃくなんである、ヘルデウス・ルポール・ハウリックです。この度はハウリック家当主の依頼を受けて下さりありがとうございます」


 ヘルデウスは腰を軽く曲げ、右足を引き、右手を体に添え、左手を横方向へ水平にし挨拶をする。


(こんな感じで挨拶するのか参考になるな。けど何であの下品デブにこんな上品で育ちが良さそうな子供が産まれたんだよ。もしかして養子とかか?)


「父様はわがままですが、これでも館の当主でもあるので守っていただいてほしいです」

「そうしたいのは山々なんですけど、対話している時に色々やらかしてしまいまして……。けどウルラヌス様やヘルデウス様も護衛はいたします。それに盗賊も捕らえます」

「期待しています。皆様大変でしょうがよろしくお願いします。ルイスさん引き続きタクミさん達を館の案内よろしくお願いします」

「畏まりました」


 巧達はルイスと共に部屋を出て館の探索を再開。

 館を一通り探索し終えたあとに一室に行くと、巧はヘルデウスの事が気になりルイスに質問をぶつける。


「ルイスさん案内ありがとうございました。それと質問よろしいでしょうか?」

「何でございましょうかタクミ様」

「ヘルデウス様は何故一人なのでしょう? 館を探索していても奥様方はお見かけしていない気がするんですが」

「……これは教えたほうが良いでしょうね」


 ルイスは昔を思い出すかのように天井を見上げた。


「ヘルデウス様は嫡男ではありますが、その生みの親のマーベラス様は元々お体が弱かったのです。ヘルデウス様が五歳の誕生日を過ぎた際に持病が悪化して亡くなられました。ウルラヌス様は私やメイド達にルデウス様の教育するよう申し遣わされているわけです。その為かヘルデウス様はウルラヌス様のご期待に添えるようこれまで頑張ってこられました」


 巧はルイスの話を聞いてヘルデウスの事を関心する。


「へえ、道理で動きや言葉に気品溢れていたわけですか。私達にも気遣をされていましたし」


 ルイスはその言葉に嬉しそうに微笑む。


「そうですね、ヘルデウス様自身が努力し頑張っておられ、兵士達にもメイドにも対等に接し優しく信頼は厚いのです」


(まああのウルラヌスからみたら、ヘルデウスは聖人にも見えるか)


「私どもも、ヘルデウス様が次期当主として継ぐなら大変喜ばしい事と思っています。ただ、ウルラヌス様はヘルデウス様の事をよく思われていないようです」


 巧はルイスの話している様子を見ていると、優秀な上に人望が厚い。

 逆に父親のウルラヌスは息子に対して嫉妬している、そう予想できた。


「そうですか、大変ではありますが頑張って下さい。それから案内ありがとうございました、館の中はおおよそ把握できました」

「左様でございますか。では私はウルラヌス様の所へと戻らせていただきます。それでは失礼致します」


 ルイスは扉を開け部屋から出て行くと、巧達は部屋に残された。


「さて二人に聞きたいんだけど、ヘルデウスの事どう思う?」

「私はあの人と似ているかなって……。だから私達で何も起きないように頑張らないとって思ったよ」

「私は最初あの男の息子だから疑っていたけど、会ってみると意外と物腰柔らかくて順序そう。そして簡単につまづきそうって思ったわよ?」


 リウスは両親だが、ヘルデウスは片親を幼い頃に亡くしている。

 環境は違えど頑張っている所に共感できたのだ。


「リウスには確かに境遇は似ている部分はあるかもね、俺等で盗賊を捕獲しないとな。それでシロは何で簡単に躓きそうと思ったんだ?」

「まあ何となくってのもあるんだけど、タクミ達に会う前に一度だけあんな感じの子を知ってるの。その子は信じていた相手に裏切られ、恨み、そして憎しみ、復讐を果たしたのち、そのままどこか消えちゃったかな……。その後はわかんないけどね」


 ふとシロはどこか遠くを見て何かを考えているかのようだった。

 それがシロ自身の事か、それともシロとは違う別の人なのかはわからないが、巧とリウスは何も言わなかった。



「さて、これから俺達はそれぞれの役割分担を振ろうと思う」

「役割分担ってどうするのかしら?」

「リウスはヘルデウスの護衛、シロは庭や館の中の巡回、俺はあのウルラヌスの護衛かな」

「タクミがウルラヌスの護衛をするなんて妬ましい、あの男殺してもいいかしら?」

「いや待てッて、一応護衛対象の依頼だからな? 俺らが殺したら矛盾するから。俺も嫌だが俺が一番適正。リウスとシロだと何されるかわからんからさ」


 そう、実際リウスとシロはウルラヌスの事を嫌っているので、何するかわかった物ではない。


「それにシロは探知能力高いし、盗賊が来た時にすぐわかると思う。負担は重いが頼むぞ? リウスも強くなってるし、期待しているんだよ」


 二人は渋々と言った顔で了承する。


「持ち場に着いたら各自判断で場合によっては容赦すんなよ? それじゃ行こうか」


 巧達はそれぞれの持ち場に着く。

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